とおせんぼ
途中小さな村で休憩したりしながら、ウェルスタンに向かってるよ。道を歩いてて声をかけられることが増えたけど、にらまれたりヒソヒソ話されたりってことも増えたよ。今のところ怯者の大軍に囲まれたりはないけど、こんな状況がずっと続くのは落ち着かないなぁ…
「なんでワタシまでウェルスタンに行かなきゃならないのサ!ワタシの城に戻ってるから次の四天王を倒すときに呼んでおくれ」
「またそんなこと言う〜。パーティーなんですから一緒にいましょうよシードルさぁーん」
「もしかしたら怯者勢と戦闘になるニャ。ニンゲンを痛めつけるのが好きなんでしょ?そうなったら存分に暴れたらいいニャ」
「フン!あまり気乗りしないけど、仕方がないネ…」
「シードルさんってずっとそれかぶってるんですか?しんどくない?脱げばいいのに」
「脱ぐだって?素っぴんで外を歩けってのかい?敵に見られたらどうするのサ!とんでもないコトだヨ!」
「え、すっぴん…?いや、いまはボクらがいますからそんな急に襲われたりしないですよ大丈夫ですって」
「そーだオマエサン、武器持ったらいいニャ。そんな鬼ババの皮かぶってなくても強い武器があれば安心だし良質な武器は美容にもいいニャ。そこのゆっきーにいいやつ作ってもらったらいいニャ」
「武器を?こいつがぁ〜?」
めっちゃけわしい顔してる…美容の件はスルーで正解です。
そっか、シードルさんは靱負さんのこと知らないんだ。
「靱負さんはすっごい武器職人なんですよ!シードルさんも見たでしょ?靱負さんが使ってた武器は全部靱負さんの作品なんです。それだけじゃなくて、ボクが使ってるこの剣も作ってくれたんですよ。こういうのがいいって要望を伝えたら、靱負さんがいいかんじに形にしてくれますから」
「あ、もう考えてあるニャ。モチーフは"ヘビのおもちゃ"だニャ!関節が水平方向にしか曲がらなくて、しっぽを持ってふるふるするとくねくね動くヤツニャ。横向きにしたら鞭みたいになるし、縦にしたらそっち方向には曲がらないから棒みたいになって叩いたり敵の攻撃を防いだりできるニャ。どーニャー我ながらナイスなアイデアニャ!」
「なんでお前が勝手に考えるんだい!だいたい武器がいるなんて一言も言ってないヨッ!」
「ヘビのおもちゃって、ほんと好きですねーそういうレトロなやつ…」
「蛇」
三人が一斉にしゃべり出した。誰もゆずらないなーボクもだけど…
ん?靱負さんも反応してたな。
あ、靱負さんがシードルさんに図案を手渡した。シードルさんそれを見て…くしゃくしゃってしてポイって捨てた。ああ、ショックを受ける靱負さん…せっかく考えたのに…
「ワタシは魔女だよ?こんなものを振り回す気はないネ…けどまあ、アイデアはいただいておこうかしらネ、これは自分で創ることにするヨ」
おおーさすがシードルさん、ヘビのおもちゃも人形みたいなもんか。ナマエさんも靱負さんも納得したみたい、かな…たぶん。どんなのができるか楽しみだね。
最初はどうなるかと思ったけど、けっこう打ち解けてきたなーふふふ。
はい、無事みんなでウェルスタンに着きましたー。なんかなつかしいなー…って言ってもウェルスタンを出てからまだそんなに日が経ってないんだけどね。それくらい濃い時間を過ごしてきたってことかな。
あれ、都市の正門前にいっぱい兵隊さんがいる。いつもはこんなに人いないのに。もしかして…
「キサマら!ナマエ一派だな!?ここから先へは通さん!早々に立ち去れぇっ!」
でたー"とおせんぼ"!
準迷惑行為・とおせんぼは、他のプレイヤーの通行をジャマしたりオブジェクトのアクションを阻止する行為だよ。悪質な迷惑行為じゃないからとおせんぼされただけじゃ運営に通報することはできないんだ。これを受けたプレイヤーは『黙って立ち去る』か、『実力で排除する』を選べて、実力で排除する場合は戦闘になるよ。もちろん負けても相手を通報することはできない。決闘の合図によく使われるよ。
「けっきょくサウルスじゃなくても待ち伏せされてるじゃないですか」
「まーまーこれくらいは想定内ニャ。サウルスはたぶんもっと多いニャ。んじゃ、押し通るニャー」
ばーーん!!!
兵隊さん達を一蹴する三人。あー出遅れた…三人ともちゅうちょなさすぎでしょ。
「いまの人たちってプライムギルドですかね?」
「さーニャー、顔見ただけじゃわからんニャ。とりあえず大将んとこに行ってみるニャ」
街に入ったら襲われなくなった。みんながみんな過激な怯者勢ってわけじゃないみたい。けどやっぱりみんなこっち見てるなぁ…
で、『アイボリーフォレスト』のギルド会館に着いたよ。
「おっすージャマするニャー」
「お待ちしておりました、ナマエ殿。お連れの方々もようこそお越しくださいました」
あ、Elixirさんだ。やっぱ凛々しいなー。エリクシルさんに連れられて奥に進むよ。初めて入ったけどほんと王族の宮殿ってかんじだなーすご〜。
「こちらで主がお待ちです。中へどうぞ」
つづく




