新たなボッチ
「じゃあ聞くけど、お客サン、お代の方は払えるのかニャ?」
ぎくっ。
出発前に服屋さんに行きたいってお願いしたんだけど、今の一言で思い知らされた…。そうでした、貧乏なので服屋に行ってもなにも買えないんでした。おろろ〜ん…
というわけで着の身着のままでノルトフを出て、西の方に向かって歩いてるよ。あのだっさいバッグは装備を外してしまいこんだよ。
それにしてもさすが北国、この辺りは雪が多い。あーあ、やっぱ服屋さんに行きたかったなぁ、バッグの件もだけど、あったかそうな装備がほしい…まあゲームなんで実際寒さは感じないけど、雰囲気ってあるじゃん。
「ところで、さっきからどこに向かってるんですか?いい加減教えてくださいよ、まさかいきなり四天王退治なんですか?」
「はぁ〜?四天王を退治する?そんなこと一言もいってないニャ。そんなのムリに決まってるニャ」
また変なこと言い出したよこの人は。そのためにノルトフに来たんじゃないの?
「ブフフッ、いい表情だニャw
ま、今のままでは、ニャ。四天王を倒すには準備が必要だニャ。いまから向かうところは、その準備の一環ニャ」
「そういうことですか、それを聞いて安心しました。でもナマエさんってけっこう慎重ですよね。もっと短絡的で豪快な人かと思ってました、準備とかしないでとりあえずぶん殴るてきな」
「ま〜たナメたこと言ってるニャ。そんな脳筋キャラじゃないニャ。ひとりでちゃちゃっとエンディングを迎えられたら最初っからやってるニャ。オイラがどんだけ念入りな準備をしてきたかオマエサンは知らないニャ、いいから黙ってついて来るニャ」
ひとりじゃエンディングは迎えられない、か…そういえば各都市の盟主さん達と交渉したり、いろいろやってきたんだよね。はーい、なめててすいません、ナマエさんはがんばってたんですよね、これからはボクもいろいろお手伝いしますよ。
…と、心の中で言ってみたりして。
道を外れて森の中に入っていく。大丈夫かな、迷子になってない?ナマエさん。
靱負さんはあいかわらず影のようについてくる。たまに存在を忘れちゃうよね。笑顔で手を振ってみる。はい無反応。
「着いたニャ」
あれが目的地?こんな人を寄せ付けない暗くて深〜い森の中に、ぽつんと一軒家がある。明かりが漏れてるから中に誰かいるのかな。
バーン!
「おこんにちはだニャァー!!」
やると思ったわ。
「ノック!ナマエさんノックしましょう!」
家の中にいたちっちゃい女の子が大きな口を開けて固まってる。あ、ごはん中でしたか。ちょうどなにかを口に運ぼうとしてるときだったみたい、タイミング悪ぅー。ああほら、顔が耳まで真っ赤になって、涙目になってるよ。これはまずい…
「ん?アンタ誰ニャ!」
「いやそりゃあちらさんのセリフだよぉぉぉ!!は?知らない人なんですか!?えっ!?家間違えた!?やばいやばいこれはやばい、帰りましょう!大変失礼しました!引き続き、お食事をお楽しみください!どうぞごゆっくり!!」
「オイラは"毒リンゴ酒"をもらいに来たニャ」
はぁ〜毒リンゴ酒?何言ってんすか…はっ!まさか四天王を倒すカギになるアイテムとか!?
あれ、幼女の表情と目の色が変わったような…
あ、幼女が恐る恐る近づいて来る…。扉の前まで来た。
ガチャン…
…締め出されましたね。
ガチャ
「おじゃましますニャー」
開けるんかい!躊躇ないなっ!
「オヤ、誰が開けていいと言ったんだい?まったく、とんでもないコトだヨ…」
うおぅ、どぎつい老婆がいる。一瞬魔物かと思っちゃったよ。
あれ?さっきの女の子は?どこ行ったんだろ…
「おおーーこれこれ〜!やっぱり間違いなかったニャ」
ナマエさんがめっちゃ目をキラキラさせてる…え、まさかこの人に会うのが目的だったの…?
いやーしかし見れば見るほど醜悪な感じだなー…あ、すいません、あんまりひとのこと醜悪って言っちゃいけないのは分かるけど、だってその言葉がぴったりなんだもん。目玉がギョロっと飛び出してて歯はガタガタの乱杭歯、髪は全然手入れしてないバサバサのロングヘア。顔色悪すぎてゾンビみたい。どこまでが首でどこからが肩かよく分からないボディラインが怪物みを増してる。なにその服どうなってんの…。声もまた変わってる、しわがれてて抑揚のない声だ。無機質っていうよりも、まるで古い木がきしんでるみたいな声。
要するに、物語に出てくる悪〜い魔女要素全部のせってかんじ。お姫様に呪いをかけがちなやつ。あ、それで毒リンゴなのかな。ナマエさんの知り合いには変わった人が多いけど、この人もまたユニークだなぁ。
あ、そういえばこの人、見たことがある。この前の親善試合で、北エリアチームのトリプルス代表の一員だった人だ。戦闘は見れなかったけどこの顔はよく覚えてる。こんなインパクトある人、他にいないよね。
「オマエサン、"シードル"だニャ?オイラの名前はNAMaEだニャ、オマエサンをスカウトしに来たニャ」
つづく




