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【告知あり】クズだらけのプロット  作者: 蒼風
Ⅱ.どうしても許せないもの
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7.作品が迷走するきっかけなんて些細なものだ。

  (あくた)が補足を入れるようにして、


「そうだね。主義なんだって」


「主義?」


 今度は月乃(つきの)が。


「そう。主義。作品が大好きでも、作家のことが好きになれるかは分からない。だからチェックしない。かわいそうに。作品を崇拝する余り、作家も完璧でなければいけないと思ってしまっているらしい。だから、ストーカーなんてことは万に一つありえんよ。今日ここに如月(きさらぎ)を読んだのも概ね「新巻の進捗がどれくらいなのか」を聞きたいとか、そのくらいのことだろう。だから安心するといい」


 うるさい。ちょっとそこ黙れ。


 時々思うんだけど、月乃は俺のことを一体なんだと思ってるんだろうか。一応俺は幼馴染であり、友達だと思ってるんだけど、時々俺のことを「愉快な芸をする動物」くらいにしか見ていなさそうな言動をするときがあるから困る。あの、月乃さん?俺たち友達ですよね?幼馴染ですよね?


 ただ、そんな説得まがいの言葉を聞いた春菜は漸く落ち着き、


「そっか……そうなんだ。へぇ~?あんた崇拝してたんだ?」


 と、実に嫌みたっぷりな笑みを浮かべてきた。多分、教室では一度たりとも使われない表情だ。使いどころのないBB素材を消化するみたいに使うんじゃない。


 確かに、俺はコハル先生を崇拝してきた。その作品を愛しているといっても過言ではない。だけど、それは、


「そうだな。まあ、正確には崇拝していた、だがな」


「してた……って、今はしてないってこと!?」


「そうだ」


 俺の言葉に月乃と芥が「ツンデレだな」「ツンデレだねぇ」と評価を加える。うるさいぞオーディエンス。ツンデレだとかそういうテンプレワードで俺を表現するな。


 春菜はまたしても眉間にしわを寄せ、


「なんでよ」


 不満げだ。その気持ちは分からなくもない。だけど、やっぱり事実に嘘をつくことは出来ない。


「そんなの簡単だ。二巻にして早くも一般受けに逃げたからな」


 それを聞いた春菜は不機嫌オーラを再び拡大し、


「はぁーーーーー!!!!????何言ってんの、アンタ。頭大丈夫?」


「それはこっちの台詞だ。なんだあの内容は。どこからどう見ても一般受けを狙った逃げだろう。俺は失望したよ。一巻で見せたあのキレのある毒はどこに行ったんだとね」


 そこで月乃が、


「ちょっと聞きたいんだが。その、なんだ、如月が書いているという作品」


 俺は即答で、


「『だけど僕らの青春は間違い続ける』。略称は『だけ僕』。ちなみにこの略称は一巻発売のタイミングでユーザーから募集したものだ」


 月乃はそんな回答に若干引きつつも、


「コスモのキモい知識は良いとして……その『だけ僕』というのはそもそもどういう話なんだ?私は読んだことがないからさっぱりだ」


 芥が、


「俺も」


 俺は二人を見比べ、


「え、俺貸さなかったっけ?二人に」


 そんな問いに月乃が、


「借りてないぞ。ちなみに、そんなにいいなら貸してくれといったことがあるが、「作者の儲けにつながらないから自分で買いたまえ」なんてことを言って貸してくれなかったぞ」


「…………マジ?」


「ああ、超マジだ」


 覚えがない。人間というのは恐ろしいものだ。一つのことに集中していると他のことなんてあっさり見落としてしまうのだ。


でも、思い返してみると確かにそんなことを言ったような気もする。だけどあれは、買ってもらうためというよりはむしろ、俺の持っている単行本を誰かの手に渡すのが嫌だったという側面が大きい気もする。


 月乃が仕切り直すように、


「で、だ。私たちはその『だけ僕』の内容を知らない。だから、一巻と二巻の内容がいかにして変わったのかもわからん」


「……つまり?」


「話が分からんから帰っていいか?」


「ぶっちゃけたな、おい」


 それに対して春菜が言った「別にそれでもいいけど」という言葉は右から左に聞き流し、


「まあいい。それなら説明しようじゃないか」


 そう前置いて、俺は『だけ僕』の内容をかいつまんで説明する。


 主人公は高校三年生の少年・池上(いけがみ)一樹(かずき)。彼は悩んでいた。このまま高校生活を終えていいのかと。


 小さいころから仲の良い幼馴染二人と過ごす日々に文句があるわけではない。無いけれども、やっぱり華やかな“青春”にも憧れがある。


 高校三年生の始業式の日。彼は一大決心し、皆で青春を追い求めることを提案する。


 最初は渋々だった幼馴染二人だったが、そこに学園一の美少女である雪谷(ゆきがや)(ゆい)が加わることで物語は徐々に動き出す。平凡な学園生活には変わりがない。けれど、段々と彩り豊かなものになっていくことに主人公は喜びを覚えていた。


 だけど、ある日、幼馴染の女の子・青葉(あおば)綾乃(あやの)は言うのだ。青春と言えば恋愛だろう、と。そして、青葉は、主人公を連れて、一緒にデートに出かけるのだ。


 主人公は戸惑った。今までそんな素振りも見せなかった青葉の「恋人」としての素顔に。そして、何よりも、雪谷の、


「コスモ、ストップ。別に私は何も作品の全てを知りたいわけじゃないんだ。そういうのはファン同士でやってくれ」


 月乃から待ったがかけられる。なんだよ、良いところだったのに。


「それよりだ、コスモ。私が聞きたいのは、その物語が一巻と二巻でどう違うか、ということについてだ。コスモはそこが気になっているんだろう?」


 それを聞いた俺は待ってましたとばかりに、


「そう。問題はそこなんだよ!」


 月乃から「鼻息が荒すぎてキモイ」という言葉が投げかけられるが華麗に無視する。知ったことか。

次回更新は明日(1/5)の0時です。

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