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【告知あり】クズだらけのプロット  作者: 蒼風
Ⅵ.加賀加奈子は最初から
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41.ずっと燻っていたもの。

 それからというものの、加奈子(かなこ)は時々、俺の家に来るようになった。


 聞けば、加奈子の家から学校までは、どう頑張っても一時間はかかるような位置にあるらしく、それは、学校から徒歩圏内にある俺の家も同様だった。


 従って、暗くなる前に帰ろうとすると、それなりに早い時間に俺の家を出なければならず、結果として「一回の時間は短くして、毎日のように来る」という事態になったのだった。


 別に俺からすれば問題は無かったけれど、そのせいで優愛(ゆあ)どころか、うちの家族全員が加奈子のことを「俺の彼女」だとして認識するようになってしまったのにはちょっと困った。


 しかも、加奈子が表立ってそれを否定してくれないもんだから、事態は深刻になるばかりだ。どこかで一度はっきりさせておくべきかもしれない。


 あれから、加奈子は家に泊まるとは言いだしていない。別に迷惑でもなんでもないし、優愛に至っては喜びそうなものなんだけど、本人が言い出さないので、そのままになっている。


 俺としても進捗はやっぱり気になるし、乗り掛かった船だ。最後まで、締め切りにきちんと間に合うまで手伝いたいとは思うんだけど、その辺は本人でないと分からないことの方が多い。


 そのあたりを加奈子に聞いても「大丈夫だよ~」としか返ってこないので、暖簾に腕押しだ。俺が心配することでもないのかもしれないが、やっぱり気になるというものだ。


 あれ以降部室には余り顔を出していない。昼休みには割と顔を出すのだが、放課後は加奈子が「作業する時間を増やしたい」というので、部室に寄ることなく、直帰するようにしていた。


 そのことに関しては最初こそ、(あくた)月乃(つきの)に勘繰られたし、なんなら優愛と同様に「付き合ってる疑惑」を吹っかけてきたりもしたけれど、何度か否定していたら、聞いてこなくなった。関心があるのか無いのか不思議な連中だと思う。


 まあ、それくらいの距離感をお互いが「ちょうどいい」と思ってるからこその今の関係な訳なんだけど。ドライと言われればドライだと思うけど、人間、これくらいがちょうどいいと思う。踏み込み過ぎたっていいことは何もない。


 それ以外では春菜(はるな)と話す機会が減った。当たり前といえば当たり前だ。


 元はといえば、俺と春菜に接点らしい接点なんてなかったわけで、あいつが「だけ僕」の続きを考えつかない限りは、俺に出来ることなんて何もないし、会う理由だって内に等しいんだ。


 騒がしいのが一人減ったことで、俺の身の回りはちょっぴり……いや、かなり静かになったような気がするけど、それもまあ、今まで通りに戻っただけだ。


 それに、春菜が構想を考えつけば、また作戦会議をすることになるだろう。まあ、なんならそれも要らない気がするんだけどな……正直春菜と加奈子で考えれば、そう酷いことにはならない気もしている。


 まだ顔も知らない編集さえ黙らせておけば、脱線した車輪は元通り、最初の軌道へと返っていくに違いない。これで一件落着。


 そう思っていたのだが、


「相談したいことがある?」


「そう。悪い?」


 悪くない。相談を聞くこと自体はやぶさかではない。問題は「そう、悪い?」という受け答えと、その言葉を言う時の尊大な態度の方だろう。なんで相談する方が腕を組んで偉そうなんだよ。普通逆じゃない?


 多分、外面なんだろうな。今だって、裏庭に呼び出された末の会話だから、他の生徒に聞かれる可能性は少ないとは言ってもゼロじゃない。


 春菜が俺に尊大な態度を取るのは今に始まったことじゃないし、なにも不思議なことじゃないけど、俺に相談なんてしていると知れればイメージなんてがた落ちだろうしな。


 まあ、もしかしたら落ちるのは俺のイメージかもしれないけど。世界は大体元々強い立場の都合よく回るように出来ている。スクールカ―ストなんてそんなもんだ。小賢しい世界じゃない。


 俺はそんな春菜の狙いも察しつつ、小声で、


「悪くはないが……ここじゃなくて、部室の方がいいんじゃないか?その方が色々とその、気を使うこともないだろ」


 と、さりげなく「部室で改めて聞く」という姿勢を見せてみる。けれど春菜は、

「必要ない。だって相談って言うのは、」


 語り始めた春菜の言葉を遮るようにして、


「あ、陽山くん。いたいた」


 実に軽やかな声が聞こえてくる。


 加奈子だった。


「加奈子……なんでここに?」


「ん?たまたまだよ。私、ちょっと陽山(ひやま)くんに用事があったんだよね。んで、昼休みに声をかけようかなって思ってたら、ふらっとどっか行っちゃうから。それで、追いかけてきたの」


 さらりと告げる。そこにはなんの悪意も混じっていない。だから、俺と春菜の会話を邪魔したのだって偶然だ。それが当然の理屈だ。


 けど。


「ねえ、加奈子。加奈子、最近コスモと仲良いわよね。なんで?」


 なんで、と来たか。


 確かに、俺と加奈子は最近学校内外で会話をする機会が増えている。クラスメートからは「どうやって加賀(かが)さんとお近づきになったんだ」という質問をぶつけられたことすらある。


 でも、その理由は言えない。


 それを言えば、加賀加奈子=春乃(はるの)日向(ひなた)という事実を説明しなければならないから。


 もしそれを抜きにするならば如月(きさらぎ)春菜=コハルという等号を認めることになる。それだけはどうしても出来ない。だから、今まで俺はずっと言葉を濁してきた。そのことについては触れないようにしていた。


 でも、春菜は違う。彼女はその二つの事実をどちらも知っている。俺と加奈子が仲良くなる可能性にだって気づいているはずだ。


 それでも彼女は問う。


 どうして仲良くなったのか、と。


 それに対する加奈子の答えは、


「だって、陽山くんって良い人だから」


「…………は?」


 合点が行かないという反応をする春菜。その声は「キモイ」「アホ」と言って罵倒するときのものじゃない。動揺が混じった揺れ動くものだ。

次回更新は明日(2/8)の0時です。

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