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【告知あり】クズだらけのプロット  作者: 蒼風
Ⅳ.恋人体験β
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23.??「え、○○くんの待ち受けってアニメなんだ」

 来るたびに思うが、新宿という駅は古来から存在するダンジョンの生まれ変わりか何かなんじゃないかと思う。俺ももう何度も利用しているはずなのに、駅から改札に出る段階で、自分の思い描いたところにたどり着いた試しがない。


 そこからの移動は地下だろうが、地上だろうが、かなり困難で、西口と東口の行き来は最近になって大分楽にはなったけれど、ちょっと前までは、それすらも満足にままならない駅だった。


 でも、関西にはUMEDAというダンジョンがあるらしい。新宿よりも凄いのだろうか。きっと迷う。間違いない。初めて新宿に来た時に一時間以上駅の周りをうろうろした俺だからね。


 と、そんな益体も無いことを考えていると、春菜(はるな)が、


「こっちね」


 と、実によどみのない足取りで俺を先導する。彼女に案内してもらう彼氏というのもどうかとは思うんだけど、しょうがない。迷い散らかすよりましだろう。俺はおとなしくその後を付いていった。



               ◇



「あれぇ……?」


「あれぇ……?じゃない」


 訂正。


 やっぱり俺が先導するべきだった。


 だって、思わないじゃないか。スマートフォンとにらめっこしながら、なんの迷いもなくずんずんと歩いていく春菜が、道を全く分かっていないだなんて。


 いや、分かっていないわけじゃないんだ。ただちょっと出るべき入り口を間違えてしまっただけなんだ。普通は周りの地形が地図と違うとか、そのあたりの違和感で気が付くものだと思うんだけど、春菜曰く、


「そういうものなのかなーって。大体この辺みたいな」


 女は地図を読めない、というのは偏見だと俺は思ってる。


 だけど、これだけは言わせてほしい。如月(きさらぎ)春菜は地図を読めない。


 俺はため息をつき、


「あのな……そもそも最初の時点でおかしいと思え。バスターミナルなんてなかっただろ。なんでそこスルーしちゃうんだよ」


「そ、それは「なくなったのかな」って」


「天下のグーグルマップさんがそんな初歩的なミスをするわけないだろ……」


 まあ、グーグルマップでも、限界はあるし、時々人の顔でもないところにモザイクがかかってしまっていたりもするわけだけど、バスターミナルの有無を間違えるのは流石にありえないだろう。


 俺は春菜の持っているスマートフォンの画面をのぞき込み、


「で?今どこなんだ?」


「あ、ちょっと!!」


 春菜が俺に待ったをかけようとしたが遅かった。俺の視界に映ったのは、壁紙だった。恐らく一旦ブラウザアプリなどを閉じていたのだろう。春菜のスマートフォンにはトップ画面が表示されていた。 


 そこには一枚の写真が使われていた。恐らく実写だろう。墨汁か、筆ペン辺りで文字が書かれいた。その内容は、


「……陽山(ひやま)宇宙(こすも)を見返す……?」


「うう…………最悪……」


 うつむいて呻く春菜。


 これは、あれか。あの日の喧嘩が悔しくて、俺に一杯食わせたくて、その思いを文字にして起こし、壁紙にまでしていたのか。


 春菜はうつむき加減で、


「いいわよ。馬鹿にしたらいいじゃない。こんなアホみたいな壁紙にして、それで出てきたのがあれなんだから。馬鹿にすればいいのよ。どうしようもないクソ女だって馬鹿にしたら?ほら、早く」


 催促する。当の俺は、


「見返すっていう意味で言えば、達成してるんじゃないのか?」


「…………え?」


「いや、だってそうだろ?お前は自分で書いて、大賞を取って、曲がりなりにも俺を納得させた。それは見返したと言っていいんじゃないのか?」


「で、でも、二巻はぼろくそだったじゃない」


「二巻は、な。でもそれはあくまで部分の話だ。全体についてじゃない」


「どういうこと……?」


 どうやら間違った解釈をしているようだ。俺はとつとつと説明する。


「いいか?確かに二巻は迷走した。それは間違いない。その部分については撤回するつもりはない。だけど、それで作品全体が死んだかと言われれば答えはノーだ。世の名作と言われる長編作品を見返してみろ。半分くらいはクソみたいにつまらん「ダレた部分」を持ってるぞ」


「そ、そう?」


「ま、半分ってのは言い過ぎかもしれないけどな。だけど、体感ではそれくらいの作品が全編完璧じゃない。だけど終わってみれば名作扱いされる。終わりよければ全てよしっていうのはちょっと違うかもしれないけど、作品が続いていく限り、評価が覆ることがある。一つの例外を除いてな」


「例外ってなによ」


「最初……つまり一巻がつまらなかった場合だ。その場合はいくら中盤が盛り上がっても、結局最初の話に戻ってくるから、全体で見ると微妙っていう評価になる。だけど、『だけ僕』は逆だ。一巻があれだけの話になっている以上、挽回の可能性は十分ある。もし、そうなった場合、二巻は「あの辺はちょっと迷走していたよね」で済まされる可能性が高い。シナリオなんてそんなもんだ。最後が盛り上がって、辻褄があってれば、途中でよく分からない刑務所編を挟んでも評価されるもんだ」


「……何の話?」


 おっと。つい例えが入ってしまった。でもしょうがないじゃないか。WRGP編からの面白さで全て許された感じがするもんな。あのアニメ。

次回更新は明日(1/21)の0時です。

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