表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【告知あり】クズだらけのプロット  作者: 蒼風
Ⅲ.作品をよくするための会議をしよう
16/45

13.テンプレツンデレの発祥はどこなんだろうね?

 それはさておいて、


「まあそれはあくまで一巻時点での話だ。それが二巻でどうなったかというとだな」

 と言いつつ、箇条書き部分から太めの矢印を右に伸ばし、その先の空間に「二巻」という題目を付けた上で、再び箇条書きにする。



・主人公の毒舌が不快

・ヒロインがテンプレツンデレと化す。BAD!(クソデカ青文字)

・地の文が味の無いガム



「味の無いガムってアンタ……」


 食ってかかろうとする春菜(はるな)に対し俺は淡々と、


「じゃあ、聞くが、加賀(かが)さんは文章を褒めてくれたか?」


「ぐ、そ、それは」


 良かった。どうやら身近に正しき読者がいたみたいだ。でもそれならもっと早く過ちに気が付いてほしかったな。まあ、仕方ないとは思うけど。流石に春菜でも、書籍になる前の原稿を友人に見せたりはしないだろう。その段階ではそこまでの必要性も感じてなかっただろうし。


 俺は箇条書きを一つ一つ説明する。


「まず一つ目だ。主人公の毒舌が不快。このへんはさじ加減が難しいところなのは分かるが、今の主人公はただの嫌なやつだ。あんなやつがラブコメの主人公になって、皆から好感度マックスの視線を浴びるなんて世界、少なくとも俺はお断りだ。一巻の時点では毒はあれど、性根が良いやつに見えたけど、二巻のあれはなんだ。ただのクソ野郎じゃないか」


 それを聞いた春菜は、


「……だって、元………記憶なんてほとんど……だったし……」


 ぼそりと呟く。その声があまりに小さすぎて、聞き取れない。


「ん?なんだって?」


「なんでもない!!」


 それを隣で聞いていた月乃(つきの)がにやりとして、


「ちょっと耳を借りるぞ」


 と一方的に宣言し、春菜に何か耳打ちをする。最初は戸惑いながらも聞き入っていた春菜だが、やがてみるみるうちに顔を紅潮させ、


「なっ…………!?」


 月乃のことを「信じられないものを見る目」で見つめる。それを受けた月乃は「ふふっ」と笑い、


「でも、事実だろう?」


 なんだ。何が事実なんだ。あの春菜があんなに動揺するなんて気になるじゃないか。なので、


「なあ、月乃」


「コスモうるさい。一年くらい息止めてて」


「それ死ぬよね!?後うるさいだけなら息止める必要なくない!?」


 それを聞いた春菜が「ホントにうるさいわね……」みたいな顔をする。そこ、うるさいぞ。目は口程に物を言うという言葉を知らないのか。今のおまえの視線はおしゃべりが過ぎるぞ。


 月乃が「まあ、なんでもいいが」と話を畳み、


「だがな、如月(きさらぎ)。これだけは言っておく。人間タイミングというものがある。それを逃したらもう二度とめぐってこないことだってある。負けず嫌いも、高いプライドも成功する上では重要だが、それだけでは上手くいかないこともある。それだけは覚えておくといい」


 と締めくくる。だから一体何の話なんだ。俺を置いてきぼりにするのはやめてくれないか。このままだと妙に神妙な面持ちで悩んでいる春菜の考えていることがさっぱり分からないじゃないか。


 あ、いや、分かる必要はないか。でも、コハル先生の考えてることならなんでも知りたい。でも、こいつはあくまで如月春菜なんだよ。同一人物なのは理屈では分かってるけど、魂が拒否するんだよな。理解を。


 まあいい。分からないものは分からない。必要があれば改めてその時に聞けばいい。答えてくれるかは分からないけど。


 俺はそんなことを考えながらかなり強引に方針転換を行い、


「次行くぞ。ヒロインがテンプレツンデレと化す。これだ。正直これが諸悪の根源だ。なんだあれは。「ふん、あんたなんか別に好きでも何でもないんだからねっ!」とか、今日日どころか、ツンデレってワードが出来上がる以前でも以後でもほとんど見たことないぞ」


 そう。一巻ではもうちょっと自然な感じだったのに、二巻になった途端、脳みそを持っていかれたのかと首を傾げるレベルのキャラクターになっていたのだ。


 逆に感心しちゃったよ。人間こんなクソゴミテンプレみたいなキャラ作れるんだなって。いや、感心はしてねえわ。あまりの出来事に脳が理解を拒否して乾いた笑いは出たけど。


 それに対して春菜は、


「で、でもツンデレキャラが素直になれないところが可愛いって編集さんが」


「もうその編集船から下ろせよ」


 舵取り失敗ってレベルじゃないじゃないか。まあ、これも断片的な情報だから、実際どういう表現をしたかは分からないし、どうして欲しかったのかも分からない。


 だけど、その過程と意図がどうであれ、結果がクソなのは変わらない。いくら逆方向に対しても強い打球を打てるようになれるようにという意図があっても、実際の打球がセカンド正面に転がる力の無いゴロなら、打撃コーチは無能のレッテルが貼られて叩かれる。頑張っただけで褒められるのは学生の間だけだ。


 俺はため息一つつき、


「いいか?ツンデレキャラが素直になれないところを見せるのは確かに可愛いかもしれない。だけどな、それはあんなテンプレ過ぎて誰も使わない台詞を使うことじゃない。第一考えてもみろ。あんな台詞吐くやつ現実で見たことあるか?」


春菜が食ってかかり、


「べ、別に現実にいなくたっていいでしょ?フィクションなんだから」


「そうだな。フィクションなんだから現実に起こらないことが起きても問題は無いんだよ」


「え……」

次回更新は明日(1/11)の0時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ