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月の手毬(月星雪✻②✻)下巻  作者: YUQARI
第五章 奪還作戦
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謎の子だぬき

 子だぬきたちは、玉兎(ぎょくと)姮娥(こうが)を取り巻き、ふんふ〜んとご機嫌な様子で、矢をかわしていく。


『良かったのー。貫通しなかったのー』

『さすがは醜鬼(しゅうき)さまなの、物知りなの!』

『でも、さすがに矢が当たりそうになったときは、さすがにキャーってなった!』

『あ、それボクもなの』

 ボクもー、ボクもー、と子だぬきたちは、まるで行楽にでも出掛けるかのような様子で、ふんふんと先を急ぐ。


『……』

 玉兎(ぎょくと)の気分は、複雑だ。


 綺麗好きなのに、姮娥(こうが)から泥玉を耳にねじ込まれただけではなく、傷口に唾まで刷り込まれてしまった。


 その上この状況。


 逃げ出そうにも逃げ出せない。

 ムスッと顔をしかめ、子だぬきの様子を伺っていた玉兎(ぎょくと)だが、ふと姮娥(こうが)が妙な行動に出たのに気づく。


『!?』

 矢の侵入を防いでいる、不思議な《布》に触ろうとしたのである。

 玉兎(ぎょくと)の体が跳ねる!



 確かに、その《布》は不思議だった。


 ()()()()を防ぐのなら、特に問題はない。実際、そのような武具は沢山ある。

 けれど相手は《破魔矢》だ。だだの《弓矢》だはない。

 威力のほどは、普通の矢と差ほど違いはないが、こと《妖怪》に対しては、絶大な力を発揮する。


 矢が掠めただけの傷を受けた玉兎(ぎょくと)が、歩けないくらいのダメージを、受けたのがその証拠だ。

 ひとたび傷をつけれは、そこからジワジワと全身に破魔の効果が現れる。それはあたかも、毒を塗った矢に侵されるのと同じ感覚だった。


 《破魔矢……もしかすると、()にも対応出来るのではないでしょうか……?》


 一度矢傷を負った玉兎(ぎょくと)は、そう思う。

 破魔矢の効果は、絶大だった。きっと《鬼》にも十分対応出来るだろう。



 一言に《鬼》と言っても、色々ある。


 風神雷神のように、厳しい表情で悪鬼を吹き飛ばす神のような存在と、生き物に災いや病をもたらす鬼……いわゆる悪鬼。それから、そのどこにも所属しない、ただただ傍観する鬼などなど……。


 破魔矢は、その中でも《悪鬼》と言うもののみを選び、攻撃するのだと、以前どこかで玉兎(ぎょくと)は聞いたことがある。

 それが本当かどうかは分からないが、足に受けた感覚からすると、余裕で鬼も捕らえるに違いない。


 破魔矢は、人間にとって()を生み出す存在を、瞬時に滅する。



 その《破魔矢》……。


 その破魔矢を、何故、たぬきたちは防げるのか……?

 鬼ならいざ知らず、妖怪は良いも悪いも、瞬時に消してしまう破魔矢。いったいこの()は、どのような素材で出来ているのか、実に興味の出るところではある。



 しかし──。

 玉兎(ぎょくと)は、大方の予想をしている。


 《……。コレは、触ってはダメなヤツです》

 そう思っていた。


 だから、頭上に掲げられた()()が、子だぬきたちの動きのせいで、少し()()()()()、動いているのを見て、人知れず青くなっていた玉兎(ぎょくと)だ。

 ()()に触れそうになった姮娥(こうが)の腕を、勢いよく耳で(はた)いた。《触るな……!》と。


 けれど耳栓をしている姮娥(こうが)に、それが伝わるわけもない。

『……』

 姮娥(こうが)は、ムッと玉兎(ぎょくと)を睨み、ヤケになって手を伸ばした。



 《あっ! 姮娥(こうが)!! バカなんですか……っ!》


 玉兎(ぎょくと)は心の中で悪態をついて、再び耳で叩こうとした。

 しかし──。


 姮娥(こうが)はニヤリと笑うと、反対の手で、布をむんずと掴んだ!

『うぎゃ……!』


『……』

 叫んだのは、玉兎(ぎょくと)ではない。()()()()だ。

 《いやーん》と顔を赤らめ、困ったように姮娥(こうが)を見た。


『……』

 姮娥(こうが)はそっと、()を離す。


 子だぬきはホッとした様子で、再び前を見た。


『……』

『……』


 姮娥(こうが)玉兎(ぎょくと)を見る。


 玉兎(ぎょくと)は無言で、姮娥(こうが)の背から降りようとする。

 しかし姮娥(こうが)はそれを許さない! ガッと玉兎(ぎょくと)を掴み、先ほど()を掴んだ手を、玉兎(ぎょくと)の柔らかな白い毛に擦り付けた……!



『ぎぃやあぁぁあああ……』



 子だぬきたちが驚いて、二人を振り返る。


 ただ、一匹の子だぬきだけが事情を察し、顔を赤らめた。


たぬきの妖怪……と言えば、お約束でしょ?


いやー悩みましたよ。

どうするか。


ここは外せないですよね……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] てことは、雄ですねw
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