LOAD:006 ルイのハーレム?その一
時間……一章が終わった直後
視点……ルイ視点
リン・マカでの一戦の後のことである。
「そう言えば、ヴィーザはこれからどうするの?」
ふと、頭に浮かんだ疑問を口に出した。よく考えてみれば、もうヴィーザは私たちに用は無いのだ。最初の約束は私たちをリン・マカでサポートするという話なのだから、これからフィーア国へ帰る私たちとの約束はきちんと果たしたことになるわけで。ヴィーザは私たちと一緒に帰る必要は無いのだし、これからどうするのかは彼の勝手だ。
「ああ、んー、どうすっかなぁ」
「リン・マカに滞在するの?」
「や、それは無理。俺、オヤジに勘当されてっからさ」
「お父さんに?」
「違う違う。盗賊団の頭。まぁ父親代わりみたいなとこあったからオヤジって呼んでんだけど。そいつが凄い奴でさぁ。そのオヤジから嫌われたら、この国の裏通りは歩けないって言われるくらいで」
「へぇー。凄い人なんだねぇー」
「で、実は喧嘩して家出、みたいな感じで出てきたから、この国じゃあ俺、人権無いんだ」
「そうだったんだぁー」
ミィは、あんまり興味無さそうに相槌を打った。興味が無いなら、無視すればいいのにね?
「だから、とりあえずこの国じゃねーとこにいかねーと」
「ふーん。帰り道なら送ってっても良いよ?」
「ダメェ!!」
突然悲鳴をあげたのはミィ。うわぁ、何したの、ミィ!
「ぜぇったい、ダメ! ヴィーザなんか送ってくの、絶対ダメェ! ルイちゃんから離れろ、コノ、コノ!」
「ちょ、ちょちょ、ミィ! 突然何したの?」
「ルイちゃんならそう言うと思ってたのっ! 絶対ダメだからね!」
「ミィ、そんなにヴィーザのこと嫌いだったの?」
「そうなのっ! だからダメ!」
「ふぅん? イヤ、じゃなくてか?」
「私はイヤ! でも、それ以上に絶対ダメなのぉ!」
どことなく支離滅裂なミィの言葉を、ヴィーザは楽しそうに聞き流している。うっわぁ、楽しそう。嫌な奴の代表だね。
「ルイちゃんは、なんでヴィーザなんかにそんなこと言うのっ?!」
「や、そりゃ私もヴィーザは好きじゃないよ? っていうかむしろ大っ嫌いだよ?」
「じゃ、何でさ!」
「でも帰り道だったら別に良くない?」
「私は一緒に居たくないのっ!」
ミィは過去最高ではないのかというくらい、叫んでいる。こんなに大きな声をいっぱいだして、酸欠とかにならないのかな?
すると、ふいにヴィーザは真面目な顔になる。ミィは何か言ってるけど、ヴィーザはその頭を片手で掴んで遠くへやった。
いやちょっと。物を扱うんじゃないんだからさ。
「なールイ」
「ん?」
「なんで、ルイはこの世界の為に戦おうと思ったんだよ?」
「はぁ? いくらなんでも話題飛びすぎでしょ……」
「ルイにとっちゃこの世界の事なんてどうだっていいだろ? なのに、なんで戦おうなんて思ったんだ?」
「えー? うーん…………、私も最初はそう思ったよ。っていうか今でも思ってる。でも、この世界が消えると私たちの世界も無事じゃ済まないみたいだし。それに、決めたから」
「は、決めた? 何を?」
「戦う、って。だって、私、帰りたいんだもん。けど、帰るためには戦わなきゃいけない。だったらもう、戦うしかないでしょう」
「欲しいものがあるなら手段はいとわない、か?」
「え。……うーん、結果的にはそうなっちゃうかな?」
ヴィーザ、変なことを訊くんだなぁ。なんかちょっと真面目だったから、真面目に答えといたけど。
「ふーん……ルイでも、そう思うんだなー」
「ルイでもってどーゆー意味」
「そのまんまだって」
「ちょっと、ヴィーザっ! ルイちゃんの悪口だったら許さないからねっ!」
「あー、はいはい」
「むゅー!! 馬鹿にしてるっ!」
楽しそうだなぁ、あの二人。いっつもいがみ合ってるのに、息はあってる。意外と良いコンビ……?
「よし、決めた」
「へ? 何を?」
「俺、フィーア国に行く」
「……え?」
「ってわけで、乗せてってくれるんだよな? ルイ?」
「ダメェ!」
答えたのは私ではなくミィ。ほっぺたをぷくーと膨らませてヴィーザを睨んでいる。ちょ、その顔可愛いんだけど!
今この場には居ないジナとレオンには、なんと言えばいいのか。まさか、私がヴィーザを誘っちゃいましたーなんて言えるはずがない。ジナは言わずもがなヴィーザを毛嫌いしてるし、レオンも良くは思ってないみたいだし。
うわぁ、どうしよう。
その時私は、でもまぁなんとかなるだろ、なんて楽観的だったから。
この時、とんでもないことをしでかそうとしているヴィーザの背中を押していただなんて、全く気付かなかったのだ……。