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LOAD:005 ミィのハーレムその三

時間……一章が終わってから、二章が始まる前

視点……ミーディア視点

 まったく、散々な目にあった。


 リン・マカの魔道陣を消すだけだったのに、なぜか勇者一行に巻き込まれてしまった。

 彼らは騒がしい事この上なく、何よりも迷惑。

 しかも、結局勇者達と一緒にフィーア国へ帰る事になり、まあ、同じ荷車に乗ったところまでは良い。問題はその後だ。

 揺れるわ酔うわ騒がしいわで、とにかく最悪だった。庶民の荷車になど乗るんじゃなかったと、酷く後悔したのはまだ記憶に新しい。

 やっとの思いでフィーア国へつき、国王のもとへ報告しようとと思ったら何故かあいつらもついてくる。まぁいくら迷惑この上ない奴らでも、一応は勇者一行であるわけで。立場上、仕方なく先に国王とそのお付きのアミラ様へと報告をさせた。


「……何だと? もう一度言ってみろ、ミィ」

「……えと、その、実は、魔王はマオで、マオは魔物と一緒にどっか行っちゃって…………」

「お前らは、馬鹿か!! なんで魔王だって分かっていながら、そうやすやすと逃がす! 何の為の勇者だ!」

「ご、ごめんなさい! 脅されて!」

「脅されたからって逃がす馬鹿が何処に居る! お前らは、魔王を倒す為に召喚されたんだぞ?!」

「すみません!」


 大激怒のアミラ様。本日のアミラ様は短髪である。けれど着ているのは女性物の服で、すこし違和感が残る格好だ。

 が、それもそのはず。実は、入室した際にはアミラ様はきちんと女性の格好をしてにこやかに出迎えてくれたのだ。しかし、勇者の報告を聞いて豹変。彼(彼女?)はあまりの怒りに勢いあまってつけていた長髪をするりととってしまった。その結果の、この格好だ。

 そして同じ部屋で雑務をしていたらしい国王のシント様は、怒りを通り越して呆れているようだ。右手で頭を抑え、大きく溜め息をついている。

 まぁ、それはそうだろう。よくよく考えれば、あの時逃がすという選択は、どう考えても可笑しい。

 あの場に居た私が言える言葉じゃないが。


「………よし、分かった。お前ら、ここで正座!」

「せ、正座?」

「この硬い床の上に?」

「そうだ! そこで、三時間ずっと正座をして、反省しろ!」

「三時間?! 嘘だろ?!」

「本気だ! おら、少しでもズルしようとしたら、時間が倍になってくからな!」


 そして、大人しく正座をする四人。本棚の前にずらりと並び、神妙な面持ちでアミラ様の言葉を待ち続けていた。

 ……あのレオンハルトまでもが正座をしているなんて、なんだか奇妙な光景だ。

 そして、アミラ様は未だ怒り冷め遣らず、と言った表情で、ソファにどかりと座った。どうやら、シント様は彼らを叱ることはアミラ様に任せたらしく、呆れ顔で本棚前正座隊を眺める。

 いっそここまで呆れられると、馬鹿にしているように見えてくるから不思議だ。


「で? スターレッグ家のミーディアが、何でこいつらと一緒にいたんだ?」

「ああ、ええっと、それには理由があって……」

「お前がリン・マカにいた話なら、聞いてる。王宮になんの報告も無しにあの国の魔道陣を消そうとしたことも、な」


 ああ、しまった。

 確かに、責められるべき事をスターレッグ家はした。一歩間違えば国同士の問題になることを、一家の判断だけで決行しのだ。王宮から責められるのは仕方なし。むしろ、その程度で済むのなら軽いものだ。

 しかし、それだけことを急いていたのだ。

 少しでも遅れれば、魔族は驚異的なパワーアップをしていた。そうなれば、リン・マカだけの問題ではなく世界的な問題にまで発展する事は目に見えていた。

 一分一秒さえ惜しい中で、いつ決断が下るとも分からない王宮へと判断を仰ぐことは自殺行為に思えた。だから、迅速で最善の策をとった。

 ……まぁ、それはただの屁理屈だ。

 俺たちスターレッグ家の独断でリン・マカへ出発した事は変えようの無い事実だ。どんな罰も仕方のないことだと思える。


「頭の良いお前の事だ。今回こんな行動に出たのには理由があるんだろうが、それでも、許されるべきことじゃない」

「覚悟は、出来ています」

「よし。じゃ、そこに並べ」

「…………は?」


 斯くして、本棚前正座隊は五人に増えたのだった。







「うぅ。足が、足がぁ!」

「聞き苦しいぞ、ジナ」

「なんでレオンはそんな涼しい顔してんだよ? もう一時間だぞ?」

「涼しくなど無い。自分も、もうだいぶ前から足の感覚が無い」

「むゅー。なんか、ルイちゃんも平気そう……」

「……まぁ、日本人ですから」

「私だって日本人だよぉ? なんで? なんでぇ?」

「……いや、ほら。ミィはクオーターだし?」

「生まれも育ちも日本だよ~!」

「くっそ~、ヴィーザの野郎、やっぱ、引っ張ってでも連れてくるべきだった……。あいつ、一人だけ難を逃れやがって……」

「まるで察知してたかのように、城に来ないなんて……」

「やかましい! 静かにせんか、貴様ら!!」

「八つ当たりしてんじゃねーぞ、ミーディア!」

「だれが八つ当たりなど! 貴様と一緒にするな、魔道しか能が無い短絡男め!」

「んだと?! やんのか、こらぁ!」

「あーもう! 私を真ん中にして言い合わないでよ! 両耳が痛い!」


 と紅毛の馬鹿女。

 は、馬鹿か、お前。


「立つこともできんのに、どうやってお前を挟まないで言い合いをするんだ。馬鹿が」

「言い合いをするなって話をしてんのよ!」

「はっ」


 とりあえず言い返す言葉は無かったので、鼻で笑って馬鹿にしておく。

 すると、それは効果覿面。その女は顔を赤くして怒った。

 まったく、鼻で笑われたくらいで怒るなど、ガキにもほどがある。

 そう思ってメガネを人差し指であげる。ジナとルイの馬鹿コンビがなにやら言っているが、私の耳には入らんな。聞こえない。

 私の左隣に居るミィと言う名の勇者も、どうやら彼らの叫び声が耳に入っていないらしい。集中しているらしく、目をつぶって足の痛みに耐えるようにぶつぶつと何かを呟いている。

 すると、不意に彼女は瞑っていた目を開け、私を見た。


「疲れましたね~」

「……そうだな」


 その、たった一言だけだった。

 彼女は疲れた表情で笑い、そしてまた痛みに耐えている。

 私は、しばらく彼女から目が離せなかった。


 …………ふ、ふん。品の無い笑顔だな。


 それにしても、今気付いたが、この勇者はずいぶんと美麗な顔立ちをしているな。母と並ぶ……いや、もしかしたら母よりも美しいかもしれない。これだけ美しい女は、なかなかいない、な。


「おい、ミーディア?! 聞いてんのか?」


 聞いてる訳が無いだろう、この馬鹿が。

 お前らのような馬鹿の相手をするほど、私は暇な人間ではないのだ。


 左からは、ジナとルイの怒号。

 右には、まるで座禅のように仏頂面で正座をしているレオンに、またも瞳を閉じて集中しているミィ。



 まったく、今日は散々な目にあった。

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