表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/31

DATA:017 勇者と魔王

「な……に、これ……」


あまりの驚きに、声が出ない。

やっとの思いで搾り出した声は、とんでもなくがらがらだった。


「……お前の魔道、だろ」

「私、の? 私がこれをやったの?」


これ、といって、真上を指差す。

其処にあるのは、魔物と一緒に消え去った天井のお陰で見える青空。

壁の一部も一緒に消えている。

……この状況で、人が誰も死んでいないのが、不思議だ。


「恐らく、生命の危険を察知したのと潜在能力が開花したのがきっかけで、魔道が馬鹿でかくなったんだろ。多分」

「多分、て……」


何故かけろりとしているジナ。

魔道を使った本人は、腰を抜かすくらいびびってるって言うのに。

……はい、立てません。

隣りでは、ミィが私と同じように座っている。

うーん、ミィも腰が抜けてるのかな?

そうは見えないけど。


「なんか、すっごい疲れた」

「そりゃそうだろ。魔道使ったんだから」

「え? ジナとか、ぴんぴんしてるじゃん?」

「あのなぁ、俺は魔道師だから、鍛えてあるんだよ。

常人が突然魔道なんて使ったら、魔力が底をついて死ぬぜ」

「……ん? 私、生きてるよ」

「お前はこの世界の常識が通じない存在だから良いんだよ」


え? それ、どういう意味?


もう一度ジナに訊こうとしたんだけど、それは私の名前を呼ぶ声に妨げられた。

ルイー! という声だ。

あれ、この声は……


「元気だったか? ルイ?」

「させるかっ!」


穴が開いた壁から入ってきた男、ヴィーザだ。

こいつは、すぐに私に近寄って、またキスしようとしてきた。

しかーし!

二度もやられて、私が黙っているはずもなく。

(一応)対策を考えておいたのだ!


その甲斐あってか、抱きつこうとしたヴィーザに向かって、平手打ちを食らわした。

残念ながら、その手はヴィーザが受け止めてしまい、頬に手の跡をつけることは叶わなかったが、キスは防げた。

うむ。任務は遂行したぞ!


「なんだよ。照れるなって」

「照れてない! 迷惑がってる!」

「またまたぁ。顔赤いよ?」

「むしろ青くなってるわ!」


この男に日本語は通じない。

このとき、私は痛感した。



「……で。何したの?」

「いやぁ、魔物が襲いに来るって言う情報があったからさ、急いでやってきたんだ」

「遅いっ!」

「だよね。この天井が爆発したのみて、急ぐの止めて歩いてきたんだよね」


ことごとく外れている奴だ。

すでに奇襲に遭った後だって言うのに、そんな知らせを持ってくるなんて!

何のためにお前は此処に来たんだ。


「でも、それ以外にもすっごい情報があるんだけど。知りたい?」


ふむ。とりあえず聞こうじゃないか。


「今王宮で話題の、魔道陣が消えた事件の犯人」


何!!


「嘘! 誰、それ!!」

「知りたいー? そーだなー、一発ヤらせてくれたら、教えてあげる」


はい。

私がすると思いますか?

とりあえず鳩尾を一発殴ったら、ヴィーザは大人しく喋りだしました。

どうやら冗談だったみたいだよ。


「……うーんと、犯人は、フィーア国出身の優秀な術師」

「え? フィーア国?」

「そ。ジナとレオンは知ってんじゃね? 嫌味ーで、上流貴族のスターレッグ家、三男坊」

「……! ミーディアか!」

「せーいかーい」


???

ミーディア?

初めて聞く名前だ。

誰だか分からないが、そいつが、真犯人か! 許すまじ!


「はぁ……ばれたんなら、しょうがないな」


そう言って出てきたのは、緑の髪の男。

ん? どっかで見たことある気が……?


まてまて。確かに、知ってるぞ。

あの蛇のような嫌な目つき。

変な緑色の長髪。

ああ! ミィとぶつかって、長時間説教してきたあいつだ!(DATE:012参照)


「お前は!」

「まさか、あの時のしつけのなってない女どもが、フィーア国の勇者だとは……」

「……相変わらず、嫌味な奴っ!」


ああもう、すごくムカツク奴だ。

私、こいつ大っ嫌い。


「……ミーディア、説明を」

「分かっている」


レオンが、ミーディアに話し掛けた。

やっぱり知り合いらしい。

ジナは明らかに嫌そうな顔をしている。

ああ、やっぱりあいつの事、嫌いなんだ。

うん、それが普通の反応だと思うよ。


「この私がこの国へ来たのは、スターレッグ家の命令でな。

この国が作った適当な魔道陣が、大変危険なものであると判明したんだ」

「危険なもの?」

「説明している最中だ。口を挟むな、小娘」


小娘?!

始めてそんな事言われましたけども!

はいはい、何も言わずに静かに聞いてますよー。


「その魔道陣は、魔物・魔族が陣内に入ると、驚異的なレベルアップが起こるんだ」

「はぁ?! マジかよ!」

「フィーア国を代表する術師である我が父は、早急に私をこの国へ送った。内密にな」

「……どうしてですか?」

「この国の王が、あの魔道陣を消す事を許すはずが無い。だから、勝手に消してしまおうと思ったのだ」

「そんなことして良いのかよ」

「それぐらい、事を急いでいたという事だ。噂は、魔物や魔族の間に行き交っていた。

奴らがこの国を襲うのも、時間の問題だったのだ」


なんだよ。

ジナもミィも、口挟んでるじゃん!

なんで私だけ怒るのさっ!


「それで、消したの?」

「そう言う事だ。魔族が、もうすでに動いているという話を聞いたからな。

もう、ぐずぐずしていられないと思った」

「……それで、何で私の髪がそこにあったのよ」

「お前が勝手に入ったんじゃないのか?」

「入ってない!」


そのミーディアとか言う男が嫌味たっぷりに言ってくるから、私もつい頭に血が上って、大きな声を出してしまった。

しかし。

話を聞く限りでは、本当に私の髪をあの部屋へ置いたのはミーディアではなかったみたいだ。

……じゃ、誰が?


「……それに、魔族が関わっているという話だったのに、今回の奇襲には全く姿を現さなかった」

「確かに、な」

「………奇妙だ。奴らの掌の上で遊ばれていたような気がして、虫が好かんな」


私なんか、どうなんのよ。

犯人扱いされて、裏切られて、なんか、もう面白くない事の連続じゃない。

最悪、って言うんだろうな。こういうの。


「日頃の行いが悪いから疑われるんだ、下品な紅毛などして」



…………こいつ、ほんとムカツクな。


一回くらい殺していい?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ