DATA:013 勇者と魔王
「で、収穫は?」
とりあえず、ミィの部屋に集まって報告会。
マオは疲れたのか、ミィのベッドでぐっすり眠っている。
「全くなし。魔道に関するものは、王宮内には全然ないみたいだよ」
「そーか。こっちもだ。この国の魔道師たちが集まって書いたって言う魔道陣を見たが、ありゃダメだ。
魔道陣は俺の専門じゃねーけど、それでも分かる。円は歪んでるし、床に墨で書いてたし、呪文も明らかに違う。
それを自身満々で見せるんだから驚いたぜ。てきとーに言っといたけど。
俺たちが思ってたよりも、この国の魔道の技術は悪いみてーだな」
「だったら、勇者召喚なんて無理?」
「だろーな。アミラでさえ最近やっと完成できた魔道陣あってのもんだからな。あんなんじゃ、不可能だ」
「じゃあ、問題は振り出しに戻ったって事?」
「だなー……。とりあえず、明日フィーア国に帰るか。もう、この国に居る意味がねぇし」
レオンは静かに聞いていた。
ミィは、頭に? を浮かべながら聞いていた。
後でゆっくり説明してあげるから、今は待っててよ。
すると、レオンが何か、本を差し出した。
真っ赤な表紙の本だ。
「何? これ?」
「赤魔道についての本だそうです」
「え?」
「この国にはこれしか無いそうなので。フィーア国に戻れば、もっと良い本がありますから、それまでは……」
「わぁ、ありがとう!!」
さっすがレオン!
気が利く!!
私は、さっそくその本を開いた。
どうやら、文字は私たちの国と一緒らしい。
平仮名に片仮名に漢字。
……名前は日本語じゃないっぽいのに、世界観ばらばらだなぁ。
【第一項 赤魔道師とは
赤魔道師とは、魔道を使える職業の中でも、最も自由で曖昧な職業である。
黒魔道師は攻撃専門の黒魔道のみ、白魔道師は回復などの補助専門の白魔道のみ使える。
しかし、赤魔道師は違う。
黒魔道も白魔道も使えるが、比較的弱い呪文しか唱える事が出来ない。
そして、赤魔道師だけが使う事のできる魔道。赤魔道、というものが存在する】
ふーん、赤魔道っていうのがあるんだ。
しかも、黒も白も魔道がつかえるなんて、結構便利。
【第二項 赤魔道とは
赤魔道とは、相手が魔道師だったときに力をよく発揮できる魔道で、魔道を攻撃する魔道である。
魔道師自体や他の物に対する攻撃力はゼロに近く、相手を殺す能力は無い。
それゆえに、優しい魔道などと呼ばれることもある。
実際にどんな技を使えるのかというと、白魔道の回復を無効化したり、黒魔道の爆発を凍らせたりすることができる】
なるほど、ね。
赤魔道って、結構便利な技なんだ。
しかし。
その本を最後まで読んでも、赤魔道の使い方は載っていなかった。
「赤魔道って、どうやって使うの?」
「載ってねぇのか?」
答えてくれたのは、ジナだった。
やっぱ、魔道の先輩に訊くのが一番かな?
「うん。歴史とか、そんなんばっか」
「ああ、じゃあ、ハズレだ。ま、フィーア国になら魔道の本はたくさんあるから、そこで探してみろよ」
「でも、赤魔道師って、黒魔道も使えるんだよね?」
「……まぁな」
じっとジナを見てみる。
教えてくれないかな、という願いをこめて。
「言っとくけど、ぜってー教えねーからな」
「なんで?」
「お前に教えんのとか、死んでもヤダ」
「……そこまで?」
ジナは頑なだった。
しかし、私も負けてられない。
自分が戦いで死ぬよりも、ジナに教えてもらってジナが死ぬ方が良い。
「ねぇ、教えてよ」
「やだっつってんだろ?」
「いいから! どうやるの?」
「うぜー!」
「魔道の使い方って?」
「ああもう!! 白い爆発だ!」
「白い爆発?」
「体中のエネルギーで、白い爆発を起こすイメージ!」
「……そうすると、何が起こるの?」
「知るか! 教えたぞ! いいか! 俺は教えたぞっ!」
ジナはそっぽを向いてしまった。
これ以上機嫌を悪くすると何が起こるか分からないので、とりあえず黙っておいた。
あれ。
そもそも、教えてもらった程度で、どこで練習すればいいんだ?
…………どうやら、私に魔道を使う事はまだまだ許されないようです。