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私には絶対ムリ!

プロローグ

今、僕が通っている、とある学校ではこんな話が流行っていた。

『現実のような夢をみるという夢をみるという夢をみたら、一週間以内に、みた夢が現実になる』

だが、実際にそんな夢をみたことがある人はいないので、みんな「そんなの迷信だ」、と思っている。

誰もこの変な夢をみたことがないなんて、そんなの当たり前に決まっているじゃないか。

ある、特定の条件がそろっていなければみることができない、それどころか、夢さえみることができないのだから。そもそも、条件のうちの一つなんて、『夢の番人に認められし者』。そんなの、確かめようがない。え?ほかの条件は何かって?うーん・・・。じゃ、特別に教えてあげる。ほかの条件って言うのはね・・・。『光り輝く満月の刻』『話を疑いなく信じし者』『悲しみを感じし刻』。この三つ。まあ、つまりこういうことだ。『満月の日に悲しみを感じていて、その上、学校で流行っている話を疑いなく信じている、夢の番人に認められている人』。この人だけが、おかしな夢をみることができるんだ。なぜ、こんなに知っているのかって?・・・それはちょっと言えないかな。ふふっ。でも、まあいつかきっと分かるよ。

僕の正体も・・・・・・ね。ふふふふふふ・・・・・・。


1  草埜小学校(くさのしょうがっこう

「え~?そんなの迷信に決まってる!あり得ないよ~。」

「そーかなあ?でもさ、ホントなら、起こってほしいことだったら、すっごくよくない?」

私、蒼月碧そうづきあお!草埜小学校に通う、オカルト大好きな五年生!占いとか、おまじないとかものすごく信じる方!今、学校で流行っている話で、『現実みたいな夢をみるという夢をみるという夢をみたら、一週間以内に、みた夢が現実になる』って言うのがあるんだ。その夢をみるにはいくつか条件があるみたいだけど、私全く知らないんだ!だから、「これはぜひ、みんなに聞いてみなきゃ!」と、思って私の親友の麓氷魅陽香ろくひみようかと、二人の友達に「この話のこと何か知ってる?」って聞いてみたんだ。

でも、みんな「迷信だよ」とか、「そんなの嘘っぱち」だとか言って、信じてる子なんてほとんどいなかった。

「ほんっと、碧は好きだねぇ~。そういうとこ、昔っから全っ然変わんないよね!」

「えっ、碧、昔からこういう話すきなの?」

陽香は、私と同じ幼稚園に通っていた。だから、陽香は昔の私のことをよーく知っている。もちろん、私も陽香のこと、よーく知っている。成績いいし、運動神経は人並みじゃない、ってぐらい抜群。そして美人。

「え?そうだよ!ちなみに、私オカルトとかものすごく信じる方だよ!」

「え~!?そーなんだ!全然知らなかったよ!」

「碧のオカルト好きは、まあまあ有名だよ。」

「へえ~。今、初めて知った!だって、碧にそんなイメージないもん。」

みんな、私がオカルト好きなの知らなかったんだ。・・・っていうか私、オカルトのイメージないんだ・・・。

と、そのとき先生が教室に「おはようございます!」と、大きな声で挨拶をして入ってきた。そして、

「みんな~!一時間目は、体育よ!まだ、着替えてない人は早く着替えてね!」

「はーい!」

みんなが、大きな声で返事する。

「今日は、リレーをします!体育委員会の人は、バトンを用意してください!」

「はーい!」「わかりました―!」

あーあ、今日、リレーか・・・。憂鬱だなあ・・・。私、別にリレーが苦手っていうわけじゃないんだけど、・・・あんまり好きじゃない。でも、みんなは好きなんだって。何でかって言うとね・・・。

「リレーって言うことは、夢宇賀君の走りが見れるってことだねっ!」

「きゃあぁー!たのしみ~!」

そう、みんなのお目当ては走ることではなく、夢宇賀蕎ゆめうかきょう。蕎は、頭がいい上、運動神経抜群。おまけに、顔もまあまあいい。だから、すごくモテている。女子からはもちろん、男子からの人気も高い。蕎は、クラスの、いや、学年の人気者なんだ。まっ、私は全然キョーミないけどね。レンアイとかよりは、学園七不思議とか、星座占いとか、お呪いとか、そういうものの方が断然興味ある。

「ねぇねぇ~。碧はさ、夢宇賀君に興味ないの?」

友達のうちの一人が私に聞いてきた。私が答えるよりも先に陽香が、

「碧は、そういうの興味ないんだよね。占いとかの方が断然興味ある、って感じだし。ね?碧。」

「うん!もっちろん!私、恋とかしてる暇があったら、七不思議調べたり、占いしてると思うよ。」

「えぇ~?!もったいないよ~!それにさ・・・。」

友達が、声を小さくして、

「私さ、授業中とかずーっと夢宇賀君のことみてるんだけど、ちらっと碧の方をみてるときがあるんだよ!」

「えー!うっそ~!いいなぁ~、碧。ってかあんた授業中ずっとみてるの?もうホラーじゃん。」

「そうかなぁ~?ただの偶然だと思うけど・・・?」そんなことを話していると、

「あっ!ちょっ、三人とも!今、何時何分だと思う?」と、陽香が言った。

私達三人は、声をそろえて「そんなの、知ってるわけないじゃん。時計みてないんだから。」といった。

陽香に言われ、私達は時計をみる。すると・・・・・・。チャイムが鳴る五分前だった。

「や、やばいやばい!早く着替えに行かなきゃ!いこっ、みんなっ!」

「う、うんっ!」

そうして、私達は急いで体操服に着替えた。


「・・・・・・はい!と、言うわけで、リレーのメンバーを発表します!」

ざわざわ・・・・・・

「夢宇賀君と同じメンバーがいいなぁ。」「夢宇賀君と同じメンバーになりたい!」

「夢宇賀君と同じメンバーになるのは、私よ!」「ちがう!あたし!」

女子のほとんどの子が、蕎と同じメンバーになりたい、とざわざわしている。みんな、なんでそんなに、

必死になるかなぁ?私にはちょっとよく分かんないや。

「じゃあ、まずAグループ!」先生が次々にみんなの名前を呼んでいく。そして、次々に女子がため息をつく。

「次!Bグループ!・・・・・・次!Cグループ!」私と陽香は、まだ呼ばれない。もしかしたら、陽香と同じチームになれるかもっ!陽香は、走るのがものすごく好きなんだ!おまけに、速い!だから、同じチームになれたら、ものすごく心強い!

「・・・・・・次!Dグループ!」私も陽香も呼ばれなかった。ってことは・・・・・・

「最後、Eグループ!麓氷魅さん!蒼月さん!・・・・・・夢宇賀さん!以上です!」

やったぁ!陽香と同じチームだ!・・・・・・って。あれ?なんか、ものすごく鋭い視線を感じるような気が・・・・・・。うっ。まさか・・・・・・。

ひそひそ・・・・・・

「蒼月さんってば夢宇賀君と同じチームになれたからって・・・・・・。」

「嫌みのつもりなの!?なんなのあの喜びの顔は!」

えぇ!?そ、そういうつもりじゃないのに~!私はただ陽香と同じチームになれたからうれしいだけで、蕎と同じチームになってうれしいわけじゃないんだけどなぁ。

「さ、みんな!同じチーム同士で集まって走る順番決めてね!」

先生が、そう言ってその場は収まった・・・・・・。

「お~い、碧!こっちこっち!」

陽香がリレーのメンバーが集まっているところから手を振っている。

「やったね、碧!同じチームだね!」

「うん!陽香がいて心強いよ!」

「えぇ~?そーかなぁ~?」

といいつつ陽香、ものすごくうれしそう。実は、陽香と私、そして蕎は幼なじみで、家も近いから小さい頃よく一緒に遊んでいた。小学校に入ってからも去年以外は三人ずっと一緒のクラス。確か、三年生ぐらいのときだったっけ。陽香が言ってくれたのは。


「あ、あのねっ碧!実は私・・・・・・。」

「?」

「蕎のことが好きなんだ・・・・・・。」

「へぇ~。」

「へぇ~、って何とも思ってないの?」

「え?何とも、って?」

「だ、だって、私達ずっと一緒にいて、なんか私だけあの・・・・・・その、なんていうか、その・・・・・・。」

いつも明るく、自分の意見をはっきり言うタイプの陽香が、びしっとはっきり言わないところを、このとき私は初めて見た。

「なんかよくわかんないけど、私は別にキョーミないし、人のこと好きになるのも悪いとも思わないよ!ま、もっとも、陽香が私のことほったらかして蕎の方ばっかり言ったら話はべつですけどねぇ~?」

「も~!碧のことほったらかしにするわけないじゃん!」

「なら、よかった!」


そう。実は、陽香は蕎のことが好きだった。だから、今回蕎と同じになれてうれしいんだと思う。

「・・・・・・?碧、何ボーッとしてるの?はやく向こうでみんなと走る順番決めよ!」

「え?あ、うん!」

そうして、私は陽香のいる方に走っていった。すると早速蕎が話しかけてきた。

「あ!碧も一緒なんだ!房彌幼稚園の三人集合だね!」

「・・・・・・うん、そうだね。あはは・・・・・・。」

うっ・・・・・・。できれば話しかけてほしくない。え?何でかって?だってさ、怖いもん。蕎のことを好きな女子が!・・・・・・ま、いっか!気にしなけりゃカンケ―ないもんね!

「クラスだけでなくリレーのチームまで同じになるとは思わなかったよ!陽香も蕎も、足速いし!このチームだったら絶対一位になれるねっ!」

「そうだね!じゃっ、早速順番決めていこう!僕、アンカーがいい!」

「確かに、蕎は足速いしアンカーの方がいいね!陽香は?」

リレーは、八人チーム。私は、「陽香は蕎のことが好きだから、きっと七番目を走りたいはず!」と思って陽香に話を振ったけど・・・・・・。

「ねぇねぇ!陽香ちゃん足速いから一番最初に走ったほうがいいんじゃない?」

と、メンバーのうちの亞夕美あゆみちゃんが言う。あ、この子も確か蕎のこと好きだったような気が・・・・・・。ってことはまさか七番目を走りたいんじゃ・・・・・・。

「そうだな。んじゃ、麓氷魅一番決定な。おい、麓氷魅、それでいいか?」

メンバーのうちの文一ふみかずが言う。って言うか陽香!あっさりうなずかないでーーーー!

「じゃあ、あたし、足遅いから七番目走っていい?」

あ、やっぱり。亞夕美ちゃんも蕎のこと好きなんだ。

「いや、この中で一番遅いの蒼月だろ。だから、蒼月が七番めな。」

「えぇ~!あたし七番目走りたい!」

「ってゆーか亞夕美!俺よりお前の方が足速いだろうが!」

文一と亞夕美ちゃんのやりとりをみていたら、蕎が

「いいんじゃない?碧が七番目で。」といった。

えぇーーーーーーーーーーーーーー!?何でそーなるの!誰か何とか言って―!

「もー!じゃ、いいわ!もうっ!あたし、六番目走るっ!」

結局、陽香が一番目、文一は四番目、亞夕美ちゃんは六番目、私が七番目、蕎が八番目を走ることになった。

「なんか、ごめんね、陽香・・・・・・。」

「全然ダイジョーブ!気にしないで、碧!」

そうして、ついにリレーが始まった。おおー!やっぱ陽香、速い!他のチームの子とあっという間に差をつけた!

「ファイト―!がんばれ、陽香-!」

私は陽香を大声で応援した。そしてどんどんバトンがつながれていく!そのたびに私も精一杯応援する。

あっ、次は文一だ!おおっ!文一もなかなか速い!

「がんばれー!文一ー!」

やった、今のところ私達のチームが一位だっ!

「亞夕美ちゃんー!がんばれー!」

「・・・・・・碧。次、碧走るんじゃないの?」

「うきゃあ!び、びっくりしたぁ~!なんだ、陽香かぁ~!」

「陽香かぁ~!じゃ、ないよ!ほら早く!後もう少しで亞夕美ちゃんくるよ!急いで急いで!」

あ!そうだった!私七番目だから、もう行かなきゃならないんだった!やっば!

「わー!もう全然忘れてた!ありがと陽香!」

「どーいたしまして。碧、がんばってね!」

「うんっ!」

私は、急いでスタート地点まで走っていった。よーし!がんばるぞ!

「はい!碧ちゃん!」

亞夕美ちゃんからバトンを受け取る。

「碧―!がんばれー!」

陽香が大声で応援してくれる。私も一生懸命走る。わっ。危なかった・・・・・・。転びそうになったよ・・・・・・。危ない危ない!よしっ!あと少し!と、思ったそのとき。

「うきゃっ!?」「碧!」

私は地面にあった、目を見張るぐらいの大きな石にマヌケな声を出して、ついに転んでしまった。膝がものすごく痛い。でも、後もう少しだし・・・・・・!

「いよっと!」

「えー!?」「うっそー!?」

「え、ちょ、碧!なにやってんの!?」

みんなが驚いてる。まぁ、そーだよね。だって・・・・・・。

「碧ー!何で前転して起き上がったの!?何で!?」

そう。私、転んだ後に、前転したんだ!何でかって言うとね、手をついて起き上がるよりは、前転してちょっとでも進んだ方がいいかな!っと思って!

「はい!」

そして、私は無事に蕎にバトンを渡すことができた。・・・・・・私の膝は無事じゃないけどね・・・・・・。

「碧!大丈夫?!」

「うん・・・・・・。何とかね。」

「もー!びっくりしたよ!膝怪我してるのに、いきなり前転したんだから!」

「えー?そんなに驚くことかなぁ?」

「驚くから。走ってるときにいきなり前転する人みてリアクションとらない人絶対いない、ってぐらい驚くから。」

「・・・・・・陽香、真顔で、しかも棒読みでそんなこと言わないで。」

「碧も十分真顔で棒読みですけど?」

「えー?そうかなぁ?」

だんだん話がそれてきている会話をしていると、たくさんの女子が一斉に叫んでいるのが聞こえた。

「きゃー!夢宇賀くーん!」

あ、そーだった。今、蕎が走ってるんだっけ。すっかり忘れてた。

「あぁ、蕎、かっこいい・・・・・・!」

「・・・・・・陽香?」

うわぁ・・・・・・。陽香のこんな顔初めて見たよ。ほんとに陽香は蕎のことが好きなんだなぁ。

「蕎ー!後もう少し!がんばれー!」

そして、なんと!私達のチームが一位だったんだ!さすが、蕎だね!私がこけて差を縮められちゃった

のに、また差をつけて余裕の一位!ほんっとすごいよね!

「蕎、ほんと足速いね!かなりの差をつけて余裕でゴールなんて!ソンケーするよ!」

「ありがと、碧。でもさ、そんなことより、膝大丈夫なの?」

「ううん、全然。すっごく痛い。」

私がそう言うと、蕎は「だよね・・・・・・。保健室行ったら?血出てるよ!」と、言った。

すると、陽香がやや呆れ顔でこういった。

「碧、保健室いこ。私もついて行ってあげるから。ほら早く!」

「わ、ちょ、まって、陽香!」

私は、陽香に保健室までついてきてもらい、先生に手当をしてもらった。

 

その日、久しぶりに、私、陽香、蕎の三人で帰った。最近ずっと一緒に帰っていなかった理由は、クラスの女子の中で蕎のことが好きな子が、怖いから。今日、一緒に帰ってるのがもし誰かに伝わったらやばいかも・・・・・・ね。

「でさー、文一が・・・・・・。」

「へー!」

蕎と陽香が楽しそうに話している。なんか、私だけ置いてけぼりだなぁ。はなしについていけないや。

二人には悪いけど、こっそりとため息をつく。陽香、最近ずっと相手にしてくれてない気がする。気のせいかなぁ?ま、いいや!陽香は蕎のこと好きだし、仕方ないよね、少しぐらい。そう思いながら、ついついため息をもう一度ついてしまう。すると、蕎が、

「碧、どうしたの?さっきからため息なんかついて。なんかあった?」と言った。

えぇー!?こっそりついてたつもりなのに!聞こえてたのかなぁ!?それにしても蕎、耳良すぎ!

「ななな何でもないよ!?あ、あははは・・・・・・。」と答えると、

「嘘だ。絶対なんかあったでしょ。」と、真顔で返されてしまった。

「ほんとに何にもないんだってば!大丈夫だって!」

「うん、なんかあったんだね。言いたくないんだったら言わなくていいよ。」

うっ。なんか蕎にばれてるかも・・・・・・。

「それじゃ、また明日。ばいばい、碧、陽香!」

「またね、蕎、碧!」

「ばいばーい!陽香、蕎!」

そうして、私達は別れた。家の中に入ると、テレビで、「今夜は晴れ、きれいな満月が各地で・・・・・・。」

と、アナウンサーの女性が報道している。今日は、満月か・・・・・・。

「さ、宿題やるぞ!」

わー・・・・・・。今日は、苦手な通分しなきゃいけない分数の計算だ・・・・・・。えーっとぉ、通分って、分母を同じにするんだっけ?違うかなぁ?いっそのこと、答えみちゃおっと!えいっ!・・・・・・あぁ~!そうそう思い出した!やっぱ、分母同じにするんだね!

「こうして、こうやって・・・・・・。よしっ!宿題終わり!」

「碧-、宿題終わったの?」

「うん、今終わったところ!」

「そう。晩ご飯の準備、できたから、食べ始めなさい。」

「うん。いただきます!うーん・・・・・・!美味しー!」

「碧-、ご飯食べ終わったら、さっさとお風呂入って寝てしまいなさいよ。」

「はーい!」

「いい返事でよろしい!」

お母さんの冗談交じりの言葉を聞いて思わず吹き出してしまった。なぜか分からないけど、なんかおもしろかった。でも、それと同時に今日の帰りの出来事を思い出してまた少し悲しくなってしまった。

「ふわぁ~・・・・・・。もう眠たいし寝よ・・・・・・。」

私は目をこすりながらベッドに寝転がった。そして、そのままなんの抵抗もなく眠りに落ちていった。


2  夢と同じ!?

その夜、私は不思議な夢をみた。


プルルルルル・・・・・・

「・・・・・・ん?」

電話が鳴っている。

「誰だろう?こんな時間に。」

そう言ってから気づいた。今、なぜか外が明るい。

「きっとこれは夢だ。だって、私さっき寝たはずだし・・・・・・。」

うん、そうだよきっと!真夜中に電話掛けてくる人なんていないもん。私の知ってる中では・・・・・・ね。

「・・・・・・とりあえず、電話でてみようかな・・・・・・。これは夢だし!よし、でちゃおう!えいっ!」

私は、電話にでた。電話の主は意外な人物だった。

「碧?僕だよ、僕。蕎。」

「え、蕎?」

「やっぱ、碧だよね?」

「うん、そうだけど・・・・・・。」

なんと、電話を掛けてきたのは蕎だった。私と陽香はよく電話で話したりするけど、もしかしたら蕎とは電話で話したことないかも。でも、いったいどうしたんだろう?わざわざ私に電話掛けてくるなんて、よっぽど重要なことがあったのかなぁ?あー気になる。よし、聞いてみよう!

「蕎が私に電話なんて珍しいね。どうしたの?なんかあった?」

「今から家これる?」

「へ?」

うわ、マヌケな声でちゃった。ていうか・・・・・・。

「なんで?」

「まぁ、それはとりあえず置いといて・・・・・・。これる?」

「置いとかないでっ!別にいけるけどさぁ!」

「オッケー。じゃあ、来てね。急いで!じゃあね!」

「え、ちょ、ま、待って!・・・・・・んもう!」

あーぁ。切れちゃった。なんのようだろう?言ってみれば分かるかな?よし、今から行ってみよう!と、立ち上がったそのとき。

「って、あれ?」

なぜか私は、学校にいた。

「な、な、なんでーーー!?」

いや、絶対おかしいよ!今、家の中で立ち上がっただけなのに!・・・・・・あ、そうだった。

「これ、夢なんだっけ・・・・・・。」

そうだ、そうだった!これは、夢だったんだ!なぁんだ!ってことはこれは別の夢なのかな?そういえば家にいたとき、デジタル時計をみるとそのときの日付と時刻は『九月二十一日』の『午後四時十分』だった。でも今は、『九月二十七日』。時計を観ると、『午前九時二十八分』だ。ん?あれ、ちょっと待って。現実では、確か私が寝たときは『九月二十日』の『午後九時三十二分』だった。え・・・・・・。ってことは、私が蕎と電話で話すのは明日ってこと!?・・・・・・そんなわけないか!これ、夢だし!あり得ないよ!あり得ない・・・・・・よね?いや、あり得るかも。これが正夢ならあり得るよね。って、ん??

パリーン

「きゃー!」「誰か助けてー!」「痛っ!」「うわあー!」

えっ、えっ?な、なになに!?いったい何なの?!みんなどうしたの!?何で窓割れたの!?訳が分からずにいると、私の方に何かが飛んできた。

「!?」

私は、飛んできたものを咄嗟に避けた。ドッジボールではいつも最後まで生き残ってる方だから、飛んできたものを避けるのはかなり得意な方だと思うな方だと思う。ただ、飛んできたものをみてゾッとした。

「こ、これって・・・・・・。」

なんと、飛んできたものは、短刀だった。も、もしこれをよけきれなかったら、最悪の場合死んでたかも・・・・・・。こ、怖っ!で、でも誰がこんなものを・・・・・・。

「へ~・・・・・・。僕の投げた短刀よけれるなんて、まあまあすごいね、君。」

「え・・・・・・・?」

声のした方をみたけど、もう誰もいなかった。気のせいだったのかな・・・・・・。そう思ったとき、誰かが「ふふっ」と、笑う声が聞こえた。そして、そのすぐあとに声がした。

「うしろだよ」

「!?」

私に短刀を投げてきたと思われる人が、なんと私の後ろにいた。振り向いてはいないけど、声が後ろから聞こえたから、後ろにいたことを確信できた。逃げなきゃ、と思ったのに恐怖で体が動かない。こ。殺されるかも・・・・・・!ゆ、夢なら・・・・・・。夢なら早く覚めて!すると、誰かに名前を呼ばれた。

「あお。あお!」

って、んん??なんか、聞き覚えのある声な気が・・・・・・。


「・・・・・お。あお。こら、碧!」

え?

「早く起きなさい!学校遅刻するわよ!」

あ、そりゃ、聞き覚えのある声だ。だって、お母さんの声だったんだから。お母さんが起こしてくれて良かた~!って、やばいやばい!お母さんに起こされなかったら絶対遅刻してた!間違いなく!危なかった~!それにしても、さっきの夢なんだったんだろう?ま、いっか。急がなきゃ遅刻しちゃう!


「あ、おはよー、碧!」

「おはよー、陽香・・・・・・。」

「どうしたの、碧?昨日から元気ないけど。」

私は、夢のことを全部はなすことにした。あっ、でも蕎とのことは言わない方がいいかな。陽香、蕎のこと好きだし。よし、蕎とのことは言わないことにする。

「・・・・・・へー、そんなことがあったんだ。」

「うん・・・・・・。しかも、その夢妙に現実っぽくてさ。」

「でも、窓ガラス割って短刀飛ばすやつなんてこの世にいる?あり得ないって!だから、大丈夫だと思う。そんなに心配しなくてもいいと思うよ。」

「そーかなぁ・・・・・・。そう・・・・・・、そうだよね!陽香がそう言うなら!」

「碧、もう大丈夫?」

「うんっ!もう大丈夫だよ!聞いてくれてありがと、陽香!」

「どういたしまして。」

そうだよね!あんなこと、起こるわけないよねっ!起こったとしても、陽香がいるし!陽香といれば、なんでもできるような気がする!

「おはよ!二人とも何話してたの?」

「あ、蕎!おはよっ!」

陽香が満面の笑みを浮かべて蕎に挨拶をする。そんな陽香の表情の変わりぐあいに、私は思わず吹き出しそうになった。それを我慢していると、陽香と蕎が怪訝そうな顔をして「碧、どうしたの?」と、声をそろえて言うもんだから、私は耐えきれず「プッ」っと吹き出してしまった。一回吹き出してしまうと、もっとおかしくなってきて、思いっきり笑ってしまった。

「あ、あはははははははははは!」

「うわ、びっくりした!」

「どうしたのよ、碧。急に笑い出したりなんてして。さっきまで『夢の中の出来事怖いよぉ~!陽香、助けて!殺される!殺されるのはいやだよ-!うわーん!』って言ってたくせに。」

「陽香、『うわーん!』なんて、言ってない!」

「えー?でもぉ、碧すっごく涙目でしたけど?」

「うっそー!?」

そんな私達のやりとりをみていた蕎は、なぜか急に笑い出した。

「あっはははは!」

「わ、びびった!」

「なんなの、蕎まで急に笑い出して!」

「え、だ、だって、碧も陽香も昔っから全っ然変わんないからなんか、懐かしくなっちゃって。」

確かに、そうだ。楽しく言い合いすること、幼稚園の時、よくやってたなぁ。お題を決めて、討論!することがないときは、いっつもこれをやっていた。例えば、おにぎりの具とか、好きな季節とか!お題は何でもいい。意見が違っているときもあれば、同じ時もある。同じ時は、「これはここがいいよね!」とか、「そういうとこもいいけど、ここもいいよ!」、「あぁ~!確かに!」。なぁんていう会話をする。

「まぁ、それはいいとして。」

「それはいいんだ。」

蕎が話題を変えようとしたところに、陽香が即座にツッコミを入れた。それがまた面白かった。

「さっき、なんの話してたの?碧の夢の話?」

「え、何で分かったの?」

「ほんとだ!何で分かったの?私も陽香も何にも言ってないはず!」

陽香の言うとおり、なんで分かったんだろ?

「だって、陽香がさっき言ったから。」

「へ?」

私達は、蕎の言葉を聞いて二人そろってマヌケな声を出した。そして、陽香が思い出したように、叫んだ。

「あーーーーーーーーーーー!ほんとだーー!」

クラスメートたちが、びっくりして「うおっ!」「きゃ!び、びっくりしたぁ~!」「もぉ~!驚かせないでよ!」

なんて言っている。

「あ、ごめんごめん!」

「まったく、陽香ったら~!ここが教室だって忘れてたんでしょ。・・・・・・どうせ。」

私が最後にぼそっと言った言葉を聞き取った陽香が、「どうせ、とは失礼ね。」と顔を赤くして言った。顔を赤くしたって言っても怒ってたわけじゃないよ。教室で大きな声を出してしまって、恥ずかしかったからだよ。・・・・・・たぶんね。あはは・・・・・・。

「ま、まぁそれはともかく・・・・・・。碧の夢のことなんだけど。」

「うん。」

私達は蕎に夢のことを話した。

「へぇ~。夢の中でそんなことがあったんだ。」

「うん。しかも、その夢なんかすっごく現実みたいで。」

「へ~・・・・・・。」

すると、蕎が急に黙り込んでしまった。どうしたんだろ?急に。でも、陽香が「どうしたの?」と、聞くとすぐに笑顔になって「なんでもないよ!大丈夫!」と、答えた。私には、その「大丈夫」が嘘にしか聞こえなかった。陽香もそう思った様子で私の方をみた。私達は「絶対なんかあるよね。」「うん、今私もそう思ったよ、陽香。蕎、絶対なんか隠してる。」「だよね。」と、目で会話して二人同時にこう言った。

「絶対、なんか隠してるでしょっ!」

「か、隠してないよ!」

「ほんとに?」

「絶対に?」

「う、うん、ほんと。絶対に。」

うそ、すごく焦ってますけど。これは、絶対なんか隠してるね、蕎。

「あはは、そっかそっか~!本当に何にも隠してないんだね・・・・・・?」

「うわ~、陽香のどす声怖・・・・・・。」

そう。文字だけみると優しく言ってるように思えるかもしれないけど、本当は陽香の声はどんどん低くなっている。その声はもうめちゃくちゃ怖い。陽香、好きな人の前でそんな声出しちゃ、だめだと思うよ。すごく怖いし。

「陽香のその迫力なら、夢の中で短刀投げてきた人も怖くて逃げ出すんじゃないかな・・・・・・。」

私がそうボソッとつぶやくと、蕎も「同感・・・・・・。」と、つぶやいた。でも、陽香はそんなことお構いなしに蕎に問いかけ続ける。

「いったい何があるの!?教えてくれてもいいじゃん。それとも、私達には教えられないことなの?」

「うん。」

「蕎・・・・・・。そこは、即答せずに少し考えてから答えようよ。」

陽香の問いに蕎は即答。それに私がつっこむ。

キーンコーンカーンコーン・・・・・・

そうこうするうちにチャイムが鳴った。私達はそれぞれの席に着く。蕎、なんで隠すんだろ?でも、私も夢で蕎と電話で話したこと二人に言ってないし・・・・・・。それと同じことなのかな?う~ん。全く見当もつかないや。

「蒼月さん!」

「は、はい!」

ずっと考えていたから、先生に呼ばれていることに全然気づかなくて、焦って立っちゃった!

「えっとぉ・・・・・・。」

な、何をしたらいいんだろう?あ、あはは・・・・・。

「蒼月さん?どうしたの、さっきからボーッとして。今は、授業中ですよ。授業に集中して下さいね。」

「はい・・・・・・。」

先生が敬語を使うときはたいてい少し怒っているからちょっと怖い。でもでも、さっきの蕎の様子が気になるし、授業に集中なんて、絶対無理無理!もしかしたら、二人に言ってない夢と、関係あるかもしれないし・・・・・・。うぅ、集中できるか分かんないけど、頑張って集中しなきゃ。集中しなきゃ・・・・・・。集中・・・・・・。

「・・・・・・。」

あーもう無理!全っ然集中できないっ!すごい気になるっ!何があったのか分かりさえすれば、すっきりして授業に集中できるのにっ!なんで蕎あのとき何も教えてくれなかったの!?教えてくれてたら授業に集中できたのに!もー!そんなことを、一時間目も二時間目も三時間目も四時間目も五時間目も六時間目も休み時間もずーっと考えて、そして、その度に先生に名前を呼ばれ、焦って立ち上がり、クラスのみんなも笑い出す・・・・・・の繰り返しの一日となった。


「碧ー、帰ろ-!」

「あ、うん。ちょっと待ってて!」

陽香と一緒に帰ろうと、私がランドセルを背負って陽香の方を向くと陽香が、右手だけで黒色のランドセルを掴んで誰かを捕まえていた。・・・・・・なんかあのランドセル見覚えがあるような気が・・・・・・。

「え、陽香、誰捕まえてるの、廊下で。」

「蕎。」

「え、何で捕まえたの?」

「逃げようとしたから。今日のことちゃんとはっきりさせとこうと思って。」

「・・・・・・。なるほど。」

「じゃ、帰ろっか、碧、蕎。」

「う、うん。」

なんかちょっと蕎が気の毒だけど、私は二人と一緒に帰ることにした。通学路で、蕎は陽香から質問を大量に受けていた。・・・・・・と言っても、全部同じような質問で、「なに隠してるの?」とか、「何かあったの?」とか。そんな感じの質問ばっかりで、蕎の答えはいつも「何も隠してないよ!」とか、「何にもないよ!」とかばっかり。もう会話にすらなってない。またついて話しについていけないから私は静かーに二人のことを見守っていた。今回は、なぜか、前みたいに悲しくならなかった。と言うか、二人が小さくて幼い子供のように思えてきて、なんだかすごく微笑ましいなぁ。

「なに?碧。さっきから薄笑いというかニヤニヤというか・・・・・・。」

微笑ましい、と思ってたら陽香になぜかそんなことを言われた。私はそんな風に笑っていると自覚がなかったから、「え?そんな笑い浮かべてる?」と答えた。すると、今度は蕎が「うん。結構不気味だよ。」と棒読みで答えた。

「蕎、そんなこと言わないでよ!私自覚ないんですけど!え、何、周りの人からそんな不気味な子に思われてたの?私。」

「さぁ?」

「さぁ?って・・・・・。そんな無責任なこと言わないで!」

「責任って・・・・・・。僕責任とらなきゃいけない事したっけ?」

「うっ・・・・・・。」

ちょっと意地悪な笑みを浮かべた蕎の言ったことを聞いて思わず言葉に詰まる。私が何も言い返せずに、悔しがっているともう家に着いた。あぁ、これって言い返す事ができないまま家に帰って、夜ぐらいに言い返すことが見つかるパターンだ。

「そ、それは置いといて・・・・・・。蕎、何隠してるの?」

「それは置いとくんだ・・・・・・。ていうか、なにも、か、隠してないよ!じゃ、じゃあね、ばいばいっ!また明日っ!」

「あ、ちょっと!・・・・・・もー!」

「はは・・・・・・。じゃ、私達も帰ろっか。」

「う、うん。じゃ、ばいばい、陽香!」

「うん、またね、碧!」

あーあ。結局何も言い返せなかったな。ま、話変えたの私だから言い返せなかったの当たり前だけど。

プルルルルル・・・・・・

「・・・・・・ん?」

そのとき、電話が鳴った。

「誰だろう?」

そう呟いたとき、夢のことを思い出した。まだ、はっきり覚えられてる。って事はこのあと、私が電話に出て蕎と話をして・・・・・・。あ、でも、その後どうなるか知らないんだった。まさか学校にワープ!・・・・・・なんてことないよね。あ、でも、学校は違う日付だし。そういえば、この電話、私が出なかったらその後どうなるんだろ?ま、いいや。電話に出ようかな。とりあえず。

「碧?僕だよ、僕。蕎。」

「え、蕎?」

「やっぱ、碧だよね。」

「うん、そうだけど・・・・・・。」

やっぱり、蕎だった。私が何を言おうか迷っていたら、先に返事が返ってきた。

「今から家これる?」

「へ?」

言われると分かっていたけど、実際に言われるとマヌケな声がやはり出てしまった。私は、わざと夢と同じような事を言ってみた。

「なんで?」

「まぁ、それはとりあえず置いといて・・・・・・。これる?」

「置いとかないでっ!別にいけるけどさぁ!」

「オッケー。じゃあ、来てね。急いで!じゃあね!」

「え、ちょ、ま、待って!・・・・・・もー!」

こうなることが分かっていたはずなのに、言葉がすんなり出てきた。何でだろ?っていうかちょっと待って。

もしかして昨日みた夢って、正夢になってるよね。まさか・・・・・・。そんなわけない・・・・・・よね。ま、とりあ蕎の家に行ってみよっかな。このままじゃ埓が明かないし。う~ん。でも、夢じゃ学校にワープ・・・・・・ってそんなことあり得ないよね。もう、いいや!

「どうにでもなれ-!」

そうやけくそ気味に叫んで私は立ち上がった。でも、何も起こらず、ただただ沈黙が部屋に広がるだけだった。もしお母さんが買い物に行っていなくて、部屋にいたら「なんで、急に叫ぶの!驚いて包丁で指切ったらどうするの!」って言われてただろうなぁ・・・・・・。結果何も起こらなかったし!蕎にも「急いで!」

って言われたし、早く蕎の家に行こうっと。


「あら、碧ちゃん!いらっしゃい!蕎ー!碧ちゃん来たわよ!」

「碧、どうぞ上がって!」

「お、おじゃましますっ!」

私は「どうにでもなれー!」と、叫んだ後、ダッシュで蕎の家に向かった。

「ぅわぁ・・・・・・。」

蕎の家が見掛けに依らずかなり広くて、思わずマヌケな声が出てしまった。・・・・・・なんか最近マヌケな声出してばっかりな気がする。夢の中でも出してたし。

「ここが僕の部屋。」

たぶん初めて蕎の部屋に入ると思う。幼稚園の頃に何回か入ったことあるかもしれないけど、全然覚えてないから、初めて入るって事にしとこう。

「広っ!」

きっと、お金持ちの人以外がみたら私みたいな反応すると思うよ。だって、蕎の部屋すごく広い。本当に蕎の部屋なのか、ってぐらいすっごく広い。

「いきなり電話で呼び出してごめんね。」

「あ、うん、全然大丈夫だよ。とくに大事な用事は無かったし。」

「そっか。なら、良かった。大事な話があるんだけどね。」

「う、うん・・・・・・。」

ごくり・・・・・・。ど、どんな大事な話なんだろう?わざわざ呼び出すぐらいだから、相当大事な話だよね。

「大事な話っていうのは、碧の夢のことなんだけど・・・・・・。」

「え?私がみた夢?それって、そんなに大事なの?まさかとは思うけど、蕎、私がみた夢が本当に起こると思ってるの?」

私が、蕎はきっと冗談を言っているんだろうなぁと、思いながら冗談でそう訊いてみると、蕎はすごく真剣な顔つきになって、私にこう言った。

「そのまさかだよ。というか、本当に起こる。」

「え・・・・・・。」

蕎は、私がみた夢が本当に起こる、と断言した。もし、本当に起こったら・・・・・・。私、どうなるの?っていうかその前に。

「なんで断言できるの?!」

だってさ、夢の話を聞いただけなんだよ!?話を聞いただけで、断言するんだよ!?「本当に起こる。」ってことは、正夢を見たって事でしょ?た、確かに、蕎から電話がかかってくるってことは、正夢になったけど、まさかダブルで正夢になるなんて事、あり得るわけないっ!・・・・・・たぶん。

「なんで断言できるのか。それは、学校で流行っている話が、カギだよ。」

「学校で流行っている話が、カギ・・・・・・?」

『現実みたいな夢をみるという夢をみると言う夢をみたら、一週間以内に、みた夢が現実になる』っていう話のことだよね。学校で流行っている話っていえば今は、コレだもん。

「そう。碧も知らないと思う。その変な夢をみるための条件のことをね。」

「え、ちょっと待って。その変な夢と、私の夢は、関係あるの?」

「関係?大ありだよ。碧が夢をみた日、どんな日だった?」

「えっと・・・・・・。晴れていて、月とか星とかよく見えていて・・・・・・そうそう、満月だったよ。」

「そっか。じゃあ、碧はその日悲しかったんだね。」

「え?な、なんでそう思うの?」

「だってね。あの変な夢をみるには、条件がそろっていないとだめっていうのは碧も知ってるよね。」

「う、うん。」

なんで、私が、その日悲しかったって分かったんだろう?夢の条件と関係あるのかな?

「その条件が、『光り輝く満月の刻』『話を疑いなく信じし者』『悲しみを感じし刻』。そして、最後の一つが、『夢の番人に認められし者』なんだ。」

「え、えーっと、つ、つまり、えっと・・・・・・?」

「つまり、『満月の日に悲しみを感じていて、その上、学校で流行っている話を疑いなく信じている、夢の番人に認められている人』。碧は、オカルト好きで、学校の話を全く疑わずに信じていた。ほら、これで一つ条件クリアでしょ?」

「ほんとだ!」

って事は、そういうふうに当てはめていけば、残りの三つのうち、二つは条件クリアだ!・・・・・・でも、最後の一つ、『夢の番人に認められし者。』ってさ、確認のしようが無いよね?それに、二回目だけどダブルで正夢になるわけないっ!・・・・・・たぶんね。

「でもさ、『夢の番人に認められし者』は、確認できないよね?なら、絶対じゃないでしょ?それに、仮に正夢だったとしてもダブルでなるわけないよ!」

「・・・・・・ダブル?」

「あっ・・・・・。」

そうだった。私、陽香と蕎にもう一個の方の夢のことまだ話してないんだった・・・・・・。しまった!言わないつもりだったのに!察しのいい蕎は、私が『ダブル』と言ったことに、即座につっこんできた。

「碧。ダブルとは、どういうことかな?」

「え、えーっと・・・・・・あ、あはは・・・・・・。」

「ふふふ・・・・・・。」

こ、怖いっ!にっこり笑いながら不気味に笑うとこが怖い!

「さぁ、最初からぜーんぶ話してもらおうか。」

「き、蕎、怖い怖い!分かった、分かったから!全部はなすったら!」

「うん、そうしてくれるとありがたい。」

全部話す、って言ったら蕎は元の感じに戻った。全部って言っても隠してるの、一個だけなんだけどね。

あんまり言いたくなかったんだけどなぁ。でも、全部話すって言っちゃったし。仕方ない。ここは話すとしましょーか!私は、蕎から電話がかかってくる夢をみたことを、できるだけ詳しく蕎に話した。

「・・・・・・へ~、そっか。今日僕が電話を掛けることを、碧は昨日から知ってたんだね。」

「う、うん。」

「でもさ。何で学校でそのこと話してくれなかったの?」

「え、う、う~ん。えっと・・・・・・。」

まさか、「陽香が、蕎のことが好きだから」なんて、本人の蕎に言えるわけない。言ったら、陽香が告白したも同然だ。そんなこと言ったら、陽香と友達のままでいられないかも。それは、イヤだ!

「えっと・・・・・・。う~ん・・・・・・。」

こんなときどう返したらいいんだろう?どうしたらいいんだろう?どうするのが正解なんだろう?

「・・・・・・言いたくないんなら、言わなくてもいいよ。無理に、とは言わないからさ!」

「う、うん・・・・・・。ごめん。」

「ううん!大丈夫。それより、条件の残り一つのことなんだけど、碧の場合は例外だよ。」

「へぇ~。そうなんだ。私の場合は、例外なんだ!・・・・・・って!えぇ!な、なんで!?どういうこと?」

例外って事は、私が、その『夢の番人』って言う人に認められていることが、確認できるって事だよね!?どうして!?

「どうして例外なのか、教えてほしい?」

「うん!なんで?」

「ふふ・・・・・・。実はねぇ。僕が、夢の番人だからだよ!」

「蕎が、夢の番人なのかぁ~!」

私は、そう納得してうなずき、一拍おいて。

「えぇーーーーーーーーーー!?」

何で、私、今当然のように納得しようとしたんだろう!?幼なじみが、夢の番人なんだよ!?物心がつく

前からずーっと一緒にいた蕎が、夢の番人なんだよ!?

「だから、碧は例外なのさ。碧を認めた夢の番人って言うのは、僕のことだからね。」

「って事は、やっぱりあの夢は現実になるのか・・・・・・。」

あれ?でもさ、おかしいよね。私、現実みたいな夢をみるという夢をみるという夢をみてないよ。いくら現実っぽくても、そのヘンな夢じゃないといけないんでしょ?なら、現実にならないかもしれないよね?

「碧、今『あの変な夢をみてないから現実にならないかも』って思ったでしょ。」

「え、なんで分かったの?」

「う~ん。何となく。それより、碧は自覚ないみたいだけど、条件を満たしていたから、絶対にみているんだ。たぶん碧は、無意識にその夢をみていたんだと思うよ。」

そっか。じゃ、結局あの夢は現実になるのか・・・・・・。

「でも、正夢になるなら、結構やばいんじゃない?ガラスは割れるし、短刀は飛んでくるし・・・・・・。」

「うん。問題はそこなんだよ。危険な夢じゃないなら、そのままでいいかなぁ~って思ってたけど、さすがに命が関わるとなると、ほっとくわけにもいかないからね。」

「私の夢の話聞くまでは、そんな軽ーい気持ちだったんだね・・・・・・。」

「・・・・・・うん。だって僕、夢の番人になってから『話を疑いなく信じし者』の条件に当てはまる人が、知ってる人の中でいなかったから、まさかこんなことになるとは思わなかったんだ。・・・・・・ま、ただの言い訳に過ぎないけどね。」

「そうかな・・・・・・?」

「?どういう意味?」

「だって、初めてだったんでしょ?なら、仕方ないと思うけど。」

誰でも、初めてのことはきっとうまくいかないと思う。一昨年、お母さんに教えてもらいながら初めて、卵焼き作ったんだけど、焼きすぎて真っ黒にしちゃったんだ。それと同じように、初めてあの夢を見られる人を蕎は見つけたんだよ。なのに、いきなり危険な夢に対応しなきゃいけないなんて無理があるよ!これは、絶対って言えるっ!

「初めての事なんて、うまくいかないときの方が多いと思うよ!私、初めて料理作ったとき真っ黒に焦がしたんだよ!お母さんに教えてもらいながらだったのに!だから、仕方がないことだよっ!」

「ありがと、碧。でも、残念ながら『初めてだったから』じゃ済まないんだ。でも、まだ夢の出来事が起こったわけじゃないから、まだセーフかな?」

蕎は、不安そうに私にそう訊いた。だから、私はこう言い切った。

「まだ、セーフ!」

・・・・・・なんか、最近大きな声ばっかり出してるような気がする。ま、いいや。

「絶対の絶対、まだセーフっ!まだ大丈夫っ!!」

「・・・・・・ほんとに?」

「ほんとっ!絶対にっ!!できることなら、私も手伝う!だから、大丈夫!!」

「ありがと。碧、じゃ、早速だけど手伝ってもらうね。」

「立ち直りが早いね・・・・・・。ま、いいや。で、何を手伝えばいいの?」

「ちょっと、こっちに来て」

なんだろう?どんなことを頼まれるのかな?夢に関することは少し怖いけど、なんかちょっとだけわくわくするなぁ。・・・・・・こんな事言ったらヘンかもしれないけど。

「いきなりだけど、『コレ』、しばらく腰から提げといてくれる?」

「え!?」

私は、蕎から渡された『コレ』をみて、一瞬恐怖を感じた。そして、その後すごく驚いた。何でかっていったらね。その、『コレ』っていうのが、短刀だったから。夢の中で、短刀を投げてきた人のことを思い出しちゃって、一瞬恐怖を感じたんだ。で、なんで蕎が、そんな物騒なもの持ってるのかって、疑問に思ったし、すっごくびっくりしたんだ。でもさぁ。

「なんでそんな物騒なものを提げる必要があるの?」

「え?護身用に・・・・・・と思って」

「いやいや、私短刀扱えないから意味ないと思うけど!」

「うん。そういうと思って」

あ、分かってもらえたのかな?っていうか、短刀なんて腰から提げてたら学校で没収されるよね?たぶん。

そして先生に、激怒される。え、激怒されるのはイヤだよ?担任の先生激怒したらすっごく怖いもん。担任の先生だけに怒られるならまだましかもしれない。もしかしたら、学校全体の先生が校長室とかに集まって私も、そこに呼び出し食らって、お母さんも学校に呼ばれて数十人から激怒される。・・・・・・絶対いやだ。

考えなきゃ良かった。あ、でもたぶん分かってもらえたから持って行かなくていいよね!

「碧?どうしたの?ボーッとして」

「あ、ううん、なんでもないよ。ちょっと考え事を・・・・・・」

私の言葉は途中で途切れた。どうしてかって?それはもちろん、蕎が短刀を棚からもう一本取り出したから。

「はい、碧コレもって」

「え」

「持ったね。じゃ、いくよ」

「ちょっと待って!ストップストップ!」

「え?」

「『え?』じゃ、ないよ!『じゃ、いくよ』って、何しようとしてたの!?」

「短刀扱えるようになるために、トレーニングっていうか、稽古っていうか・・・・・・勝負?をしようと思って」

・・・・・・無理でしょ。絶対無理でしょ。

「初めての事なんて、うまくいかないんでしょ?だから、初めてのことじゃないように、練習何回もするんだよ。ま、とりあえずやろうよ!」

「絶対無理だって!っていうか蕎、絶対戦いたいだけでしょ!?」

蕎は、そういえば戦う系のゲームが好きなんだよね。三年生ぐらいのとき陽香の家で、よく三人でゲームしてたけど、いっつも私負けるんだよね。ちなみに、陽香には三つ上のお兄さんがいるけど、ゲームは全部陽香の物らしいよ。って、すっごく話がそれたね。話を戻すね。

「まあまあ、そう言わずに。じゃ、改めて。いくよ!」

「はいはい、やればいいんでしょ!やれば!」

そして、私は蕎と、二時間ぐらい鞘から抜いていない状態の短刀で戦い続けたんだ・・・・・・。あー疲れた!

「どう?もう扱える?」

「一応扱えるようにはなったけど。そんなことより、蕎の体力がありすぎて怖い」

「え?」

私が、何でこんな事を言ったのか。それは、私が動けないぐらいに疲れ切っているのに、蕎が息切れさえもしていないからだ。怖くない!?それとも、ただ私に体力がなさ過ぎるの?!でも、息切れしてないなんて、普通じゃないよね!?そう思って、「なんでそんな平然としてるの?」って訊いてみたんだ。返ってきた答えが、「慣れてるから。」だったんだ。でもさ、よく考えてみたら怖いよね。慣れてるって事はさ、何回か短刀を実際に使ったことあるって事だよね。・・・・・・いったい蕎は、誰と戦ったことがあるんだろう?本当に蕎はいったい何者なんだ。夢の番人って、そんな危険な仕事なのかな?あ、でも夢の番人としての仕事はしたことないって言ってたっけな。

「・・・・・・」

「?どうしたの、蕎?なんかおかしい?なんでそんなに笑い怺えてるの?」

「あはははは!」

「わっ!びっくりした・・・・・・。え、何があったの?」

やっぱ、蕎が怖い。いきなり笑い出すんだもん。息切れしてないし、短刀を使うのは慣れてる、って言うし急に笑い出すし。何人も人をこ・・・・・・じゃなくて、倒してそうな人だよね。

「急にそんなに笑い出して、どうしたの?何かあった?」

「だ、だってさ、あ、碧の顔がすっごく間抜け面だったから、あははは!」

「失礼だね。っていうかそんなに笑う?結構失礼だよ!?」

人の顔みて笑うなんて失礼な人だな、ほんとに!そんなに顔ヘンだったのかな?すっごく気になる!誰か、鏡貸して!

「ふふっ。碧ちゃん、お疲れ様」

「わーーーーーーー!びっくりしたーーー!」

いやこれほんとに冗談抜きで、すっごくびっくりしたんだよ!?だって、音もしなかったし、気配もなかったのに、ジュースとお菓子がのったお盆を持って、蕎のお母さんが、にっこり笑いながらすぐ隣にいたんだから!

「え、碧、そんなに驚く?普通にドアから入ってきてたけど」

「驚くよっ!気づかなかったんだから!」

「ごめんね、驚かせちゃって。はい、ジュースとお菓子、どうぞ」

「あ、ありがとうございます。」

オレンジジュースかな?早く飲みたい。

「じゃあ、ゆっくりしていってね」

蕎のお母さんが、部屋から出て行った後、私は蕎に訊いてみた。

「蕎も、蕎のお母さんも、いったい何者なの!?」

「?何者、とは?」

「蕎は体力ありすぎだし、蕎のお母さんは気配しないのに隣にいるんだよ。蕎も時々そんなときがあるし。

もしかして、蕎のお母さんも・・・・・・。」

たぶん、蕎のお母さんも、夢の番人だったと思うんだよね。なんか、なんとなーく思うって言うか、こんな事言ったらヘンかもしれないけど、蕎のお母さんが夢の番人だったって事を知ってるような気がするんだよね。でも、それってなんかおかしい気がする。

(つづく)


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