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夏の日  作者: きりもんじ
9/11

近況

「もうそれ以上言わないで、悲しくなるから」

パソコンをしまいながら君子は、

「シャワーでも浴びてきて、汗大変でしょ。

パパの着替えを出しとくから」


「ありがとう。帰りに又これを来て帰るから乾かせるかな?」

「そうね。大丈夫でしょ」

若林は自分のTシャツを君子に手渡した。

12年の空白が一瞬途切れたような気がした。


若林はシャワーから出てダイニングのテーブルに座った。

よく冷えたウーロン茶が出ている。

「タバコやめたの?」


「2年前に大怪我をしてタバコも酒もやめた。

ついでに爪かむクセも、ほら」

若林は両手の爪を見せた。


「あ、ほんとだ。すごい!相当の大怪我?

私、タバコ失礼させてね」

「ああいいよ。その大怪我とは実は・・・」


若林は出張先で夜釣りに行って突堤に墜落、骨折し。

半年間ギブスだった事件を語った。


「そうだったの。失明に次ぐ大事故ね」

「何とか変毒為薬しなければと、それ以降禁酒禁煙

ついでに爪かむクセもきっぱりと止めた。

お袋が知れば泣いて喜ぶと思うよ」


「すごいわね。人間革命?」

「お金周りは相変わらず最悪だけど誇れることはこれかな」

「もう冒険はしないの?」


「それが・・まだまだこれから。小説と中国」

「小説と中国?」

「スペインで1ヶ月ボーッとしてた頃憶えてる?」


「おぼえてるわよ。レストランでお財布盗まれたもの」

「あの頃ちょっと小説書きかけたけど、今長編2本と

短編が10数本完成してる」


「そんなに?」

「ここ2,3年あちこち公募に出してはいるんだけど、

全く入選は難しい」


「相当難しいのね?」

「もう公募はやめて誰が読もうが読むまいが書き続けて

いこうと思っている。一生の仕事になりそう」


「そして最後は中国と言うわけね?」

「そう、仕入れもあるしね」

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