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夏の日  作者: きりもんじ
7/11

再会

四つ切のスイカを買った。大きく深呼吸を

してスーパーを出た。むっとした熱風が

息を塞ぐ。すでに暑さは40℃位か。


ゆっくりと猛暑の中を歩みはじめる。

木蔭沿いにものの5分もしないうちに

着いてしまった。


4階までの階段を上る。流れ落ちる汗。

次第に気が遠くなっていく。

扉の前で大きく息を吸って呼び鈴を押した。


『ピンポーン』

『はーい』

すぐに扉が開いた。12年ぶりだ。

少し老けたか、もうおばあちゃんだ。


こちらも相当老けて見えてるはずだ。

「よく来れたわね?」

「ああ、住所探すのは得意」

「そうよね。昔から得意だったよね」


四つ切のスイカを手渡す。

「ありがとう。とにかく入って」

君子の歯切れのいい関東弁も懐かしい。


「おじゃまします。今日皆は?」

「健ちゃんはお仕事。知見は二人の子と病院に

行ってる。夕方パパと合流して一緒に帰ってくるわ」


「健ちゃんていうんだパパは?」

「今山健一、警察官よ」

ダイニングのテーブルに座りながら、

「警察官?」


「そう。何か飲む?ビールでも?」

「いや、ビールは。麦茶でも」

かなり広そうなマンションだ。しかも新しい。


君子は冷蔵庫を開けながら、

「5年前に結婚してもう男の子2人よ」

「もうおばあちゃんか。親父さんは亡くなった

て聞いたよな。お母さんは元気?」


グラスを置いて君子も座った。

「元気元気。今は私と二人で毎週山歩きと温泉よ」

「そうだよな。出張先から2度ほど電話した時、

2度とも出かけていたよな。1度電話でパパと話してる」


「パパは子煩悩でとても助かるのよね、そういう時」

「しあわせそうだね?」

「まあね。お母さんも父が亡くなって今こそ自由と

あれこれやりたかったことしてるわ、忙しそうよ」


「そうそう、いるかネット検索しても出ないよ」

「うそ?ちょっと来て」

君子は立ち上がって自分の部屋へ行く。


若林は後についていく。

「広いねえ」

「2世帯住宅。分譲でパパが買ってくれたの」





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