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五人少女シリーズ

よくわからない悲しき復讐の連鎖を断ち切るまでのよくわからない話【五人少女シリーズ】

作者: KP

こちらどの話からでも適当に読むことが出来る【五人少女シリーズ】です。


人物像の紹介は別途プロフィール記事もシリーズ一覧から確認することが出来ますが、読むほどの内容でも無いのでここで端的に済ませてしまいますと、全員美少女前提で


留音 普段は脳筋系運動少女

衣玖 普段は天才のはずの少女

真凛 家事が大好きな幼馴染系少女

西香 基本的に性格悪い系少女

あの子 存在が光に等しいため描写すら少ない至高存在


という感じです。

「それでな、マリアンヌ女王は最終的に納豆のネバネバを利用することで王座を奪還して国民に毎日納豆を食べることって法を組み込むことに成功したんだよ」


「へぇ~そうなんですね~」


 窓から差し込む陽の光の暖かさと、同時にそよそよと心地よい風が入り込むとある日の午後三時ごろの事。おやつでも食べながら5人の少女たちがいつもの家のリビングで団らんの時を過ごしていた。


 悠々と歴史を語ったのは運動少女の留音だ。勉強が不得意な彼女が語るには妙な話だが、最近見た歴史のドキュメント番組に触発されて、その独特な歴史を誰かに語りたくて仕方なかったようだ。


 そこに用意されていたおまんじゅうは真凛が用意したものである。以前から個人的に食べていた真凛はすっかりそれのファンになり、今日はおやつにと全員分を買ってきた。


 そしてそれはすこぶる好評で、その場にいる全員が留音の話を聞くなり、勝手にスマホをいじるなりしながら、パクパクと器に分けられた4つのこぶりなおまんじゅうを1つずつ口に運んでいた。サイズとしては口が小さめの衣玖でも少し頑張れば一口で食べてしまえるような大きさで、皮の色から4種類それぞれ別の味だということを伺うことが出来た。それも、5人に配られた味に統一性は見られない。味自体はパット見て8種類ほどが確認出来ている。


 留音が最初に食べた味は緑の皮の抹茶味だった。渋みと甘みが同居しながら、まんじゅうの中には宇治金時のような餡と、練乳のようなとろりとしたミルククリームが練られており、それはもう絶品だったようだ。


 そこにあるまんじゅうが全てそのような形になっており、歴史的な側面と現代的スイーツの側面を兼ね備え、色合いがキレイであることでいわゆる”インスタ映え”までカバーする、大人気のスイーツお菓子だったのだ。……というようなことを真凛は器に並べながら言っていた。


 そんなこんなで話を続けていくうちに、おまんじゅうはそれぞれの器からすぐに消えていった。


 スマホでゲームをしていた西香だけは食べるスピードが遅く、大事にいちごクリーム味が器に置かれ続けていたのだが、ふと目を離した瞬間、それが何者かに食べられてしまった。


「ねぇ~ちょっとどなたですの?わたくしのおまんじゅう食べたのは!」


「私よ」


 何者かに、なんて割に犯人は躍り出るように手を上げた。天才の衣玖はそれがさも当然の報いであるとでも言うように冷静な声で、何の反省の色味せずにただスッとまっすぐに手を上げていた。


「衣玖さん!なんでわたくしのおまんじゅう食べちゃうんですの!賠償を請求いたしますわ!」


「聞きたいなら教えてあげる……」


 西香は机をバンバン叩きながらそう訴えるのだが衣玖は顔色一つ変えず、後悔はないとこう言い始めた。まんじゅうに大層な説明があった割にもう食べつくされてしまっている。留音はからんとした声で疑問を投げかけた。


「そんなテンションで言うほどのハプニングか?」


 その言葉には誰も反応せず、衣玖が悔しそうな口調で言った。


「あのおまんじゅうは……私の父の仇よ」


「なんです……って?」


 衣玖の言葉にゴクリと唾を飲み込む西香、空気に飲まれた真凛とあの子も息を止めるような真剣な表情で見守っている。場の空気はすっかりそういうテンションである。留音を除いて。


「あのいちごクリーム味の大福はね……何から話せばいいのか。少し長くなるわ」


 衣玖はそう言うと椅子に座り直し、みんなの方を向いて手元にあった水をククと少しだけ飲んで唇の乾きを潤すと、重々しい空気のまま話を始めた。


「先日実家に帰った時……私もこのおまんじゅうを買って帰った。味は3種類で、計6個ね。私と両親にそれぞれ2つずつ行き渡る計算よ。……ルー、ついてこれてるかしら、今のは算数というものなのだけど」


「この雰囲気作っといて単純に失礼なヤツだな」


 鋭い眼光のままの衣玖は留音の返しを聞くと更に続ける。


「私はこのおまんじゅうを買うのは始めてだった。だから味は、なんか適当に食べればいいやって思って買って帰ったの。みんなが好きな味をつつけばいいと。わたしはチョコミント味が食べられればあとはなんでもいいと思ったわ」


 チョコミント味なんてあるの?という留音のツッコミに期待した衣玖が彼女に視線を向けるが、留音自身さっきチョコミント味を食べており「あ、美味しかったよな」と普通に返されて衣玖は渋々コクリと頷いて続けた。


「でもね……私が2つ目に食べたのはいちごクリーム味だった。信じられないほど……美味しかった。だから今日配られた分も3個あったいちごクリーム味のうち2つを素知らぬ顔で自分の器に乗せたわ。本当は真凛に行き渡るはずだった分を、自分のものにした。流石に3つ並べたら不自然だから1つは西香の皿に放置したけどね」


 西香は不満そうな表情を作っている。真凛は自前で買った際に食べているので別に構わないという表情だ。


「家族に振る舞った時の話に戻るけど、2つ食べてしまった私はもうおまんじゅうは食べられない。ルー、どうしてかわかる?6個あったものが3人に分けられて……」


「お前はさっきからあたしを傷つけようとしてるのか?」


「とにかくね。私は食べたかったの。パパの皿にも置いてあったいちごクリーム味を。だからお願いしたわ。今から話すのは約半年前の出来事よ」


 苦い思い出を振り返ることに頭を重くさせたのか、少しだけ俯いて当時の事を思い出す衣玖。


『パパ、それちょうだい?』


 つんつくと人差し指で父親に取り分けられた薄ピンク色のかわいいおまんじゅうを示す衣玖。その様子を久しぶりの親子の交流だと少し嬉しそうな表情を浮かべた衣玖父は茶化すような表情でニマニマしながら甘々にこう返した。


『えぇ~パパのだよこれ~、だめ~。どうしてもって言うなら』


『食べたいッ!!』


 可愛い娘に楽しそうな口調だったはずの衣玖父は次の瞬間に死の運命が決まった。衣玖が崖から突き落としたのだ。


「え?崖で食べてたの?ずいぶんアグレッシブな家族なんだなぁ」


 しみじみという留音はもう真面目に話を聞いていない。その言葉に衣玖が「っく」と奥歯を噛んで悔やむように言った。


「いちごクリーム味のおまんじゅうがあんなに美味しくなければ……パパは死なずに済んだのよ!だから私はいちごクリーム味のおまんじゅうを許さない!!私はね、目の前にあるいちごクリームのお饅頭を全て駆逐することに決めたの!それが例え、ルールを無視して5個目のおまんじゅうを食べることになってもね!!!」


「そんな過去が……あったのですね……」


 西香が同情でもしていそうな表情でそう言ったが、留音はやはり冷めているようだ。


「ただのいやしんぼだな?」


 その衣玖の告白が終わった瞬間、異音と共に空間は不思議な静寂に包まれることになる。


 最初に起こったのはズドーン!という重火器の音だった……はずだ。そして何者かの体が爆風と共に飛んでいく、順番を考えればこの順番だろう。何者かがバズーカを撃った。そしてそれによって昔の映画の無茶なスタントで使われるラグドールのように飛んでいく事になったのは……衣玖だ。飛んでいった先ではピクリとも動かなくなっている。


「あ?ぁあ↑あぁ↓!?衣玖死んだ!?」


 留音の間抜けに驚いて見やった衣玖の遺体の先には煙の出る黒い砲塔、どこに隠していたのかもわからない無反動砲を持った真凛の姿があった。


「やっと、見つけました……!!」


 真凛は絞り出すような声でそう言った。


「ど、どうして撃ったんですの!?真凛さん!いえ、よくやりましたわ。わたくしのおまんじゅうを食べた衣玖さんは万死に値するという事ですわねっ?」


 静かに銃口を下げた真凛は首を横に振り目を閉じた。そして静かにこう言った。


「衣玖さんは……わたしのパパの仇だった!やっとパパの仇を取れた……!」


 安堵の涙をポロポロと流し始める真凛。


「え!?姉妹だったの!?」


「今までの感じから言って……衣玖さんは気づいていなかったと思いますけどね」


 真凛はそう言いながらポケットから巻物の家系図を取り出し、シュルシュルと該当の箇所まで巻き勧めようとしたが、巻物はかなり長くて一分近くリアルな静寂が起き、そして真凛は小さく首を「あれぇ?」と傾げた後でこう言った。


「……見つかりませんでした。でも考えてみてください。わたしの背丈と衣玖さんの背丈を。わたしの方がお姉ちゃんで衣玖さんが妹だったら……たとえ血縁が無くてもピッタリの姉妹じゃないですか?」


「えっ?血縁ないの?さっきの巻物は?背丈の話なの?」


「血縁はあるかなーと思って調べただけです!もう留音さん!今は見た目に限った姉妹感の話をしてるんです!茶化さないでください!!」


「怒られるのはあたしなのか?」


 真凛は本気で怒っており、留音はこの流れでまたバズーカぶっ放されるのも嫌だなと肩をすくめて口を閉じることにした。


「でも言われてみればその通りですわ。真凛さんの背丈は大体150センチくらい。そして衣玖さんは130センチ台……並べば姉妹にも見えますわね……」


「そうです。そして衣玖さんはパパを崖から突き落とした……だからわたしが復讐したんです!大好きだったパパの仇を……っ」


 真凛は持っていた巻物を放り捨てる。


「でも真凛さん、それならあなたの宇宙人説はどこへ行ったんですの?あなたの出生について今一番有力な考察だったはずではありませんの?」


 そう言いながら西香は転がっている巻物を拾い、手慰みのようにそれを流し読みし始めた。家系図が延々と続いている。


「そうですね……確かにわたしには宇宙にパパがいます。正真正銘、わたしのパパです……。でもわたしが衣玖さんの姉なら衣玖さんのパパはわたしのパパでもあるんです!」


「背丈だけでそこまで他人の家族に感情移入出来るもんなんだなー」


 留音は表情を一切変えること無く感心してる風に言った。


「そうなのですね……ところで真凛さん、わたくしフリティアがあるんですけど、食べません?」


「あ、ありがとうございます」


 西香がチャッチャと小さいケースからタブレット型のお菓子を出し、それを真凛に手渡し、真凛がそれを口に運んだ。


「うっ……こ、これはっ……毒……」


 バタ……真凛は崩れ落ち、そのまま全身の運動を停止させてしまうのだった。


「あ、毒殺した」


「ついに見つけましたわ……おまんじゅうを変えた犯人を……!」


「おまんじゅうを変えちゃってたかぁ~」


「そうです……このお店のおまんじゅうは元々、普通の餡だけしか入っていないオーソドックスなモノでした。でもそれがある日このようなスイーツおまんじゅうに変わっていた。店員のおばあちゃんに聞き込んだ結果、それにはどうやら料理好きでめんこいお嬢さんで宇宙人の血筋を持ったものが関わっていたらしいことを、わたくしは掴んでいたのです。そして今!真凛さんは自分が宇宙人説を肯定するような事を言いました!」


 留音は心配そうな表情のあの子に「そんなに真面目に聞かないでいいから」と促している。


「あの店がそうやって餡をほとんど使わないおまんじゅうばっかりになった結果……どうなったかご存知ですかッ?」


「そんな怒った感じに言われても全然興味無いんだけどぉ」


「当然わかりますよね……餡を作らなくなった分、余った小豆を何に使ったか……あの店はッ!!余った小豆で甘納豆を作り始めたのです!!わたくし!甘納豆大ッ嫌いなのに!!だったら小豆の発注減らしなさいよぉ!!!」


「シンプルにクソクレーマーじゃん」


「許せなかった……小豆は餡になりさえすればいいのです。納豆なんておぞましいものの仲間が増やして真凛さんはわたくしの精神を多少なり圧迫した!!!これは重圧によってちょっとだけやだなと思ったわたくしの心の仇なんです!!」


 ちなみにだが、納豆と甘納豆は全くと言ってもいいほど別の食べ物である。


「……」


 留音は黙り込んだが、一瞬だけ指をピクリと動かした。ここで始めて、少しだけ心に不意を打たれたというか、何か思うものがあったらしいことが伺える。


「でもこれで復讐の連鎖は終わりですわね……留音さんは今回の件についてあまり関心がなさそうですし。はぁ、久しぶりにわたくし、すっかり生き残ったような気がしますわね」


「どうかな」


 その時留音は自分のポケットから取り出した赤いスイッチを押すと西香の足元が開き、底には奈落の落とし穴が出現したのだ。落ちる瞬間に両足を開いて「フンッ!」と一瞬だけ耐えた西香だが軸になった足を中心に上半身を回転させるとそのまま「あ~れ~」と落ちていった。


 その様子を悲痛な面持ちで見ていたあの子の視線に気づき、留音は寂しいような苦しいような、窮苦した表情を一瞬浮かべると、小雨のような口調でポツポツと喋り始めた。


「西香は最後に……たった一つのミスを犯した。わかるか?」


 あの子は小さく首を横に降る。


「あいつは最後に……納豆をバカにしたんだ。ふっ、あたしが誰かも知らずにね」


 あの子は目を丸くさせて話の動向をしっかりと受け止めるつもりのようだ。


「あたしはね、実はかの納豆王女、マリアンヌ女王の血筋に連なる人間なんだよ。あたしの血には色濃いナットウキナーゼが含まれている。だから納豆はあたしの母親みたいなもんだ。それを西香はッ……」


 悲しそうな表情のあの子に、留音は弱々しく微笑み、それから覚悟を決めたような瞳で告げた。


「でももう、こんな悲しい復讐の連鎖は終わらせなければならないよな……テイッ!!」


 留音はどこからか取り出した千パックあった納豆のパッケージを開けると、その納豆をくるくる巻き始めた。留音の体質が影響したせいかグルタミン酸が活性されネバネバ感どんどん強化されていく。

 

 そしてそのネバネバを留音は自らの顔にまとったのだ。それはまるで首を吊るためにロープを首にかけるかのようだった。


「うっ、クッサ!!」


 その言葉を最後に留音は納豆のネバネバで窒息して死んだ。


 最後に残されたあの子はペタリと腰を床に落とし、悲しい復讐の連鎖の終息に涙を流すのだった。


 こんな復讐を、一体誰が止められたのだろうか。答えは誰にもわからない。あの子は自分の無力さに項垂れ、静かに目を閉じるのだった。



今回のテーマは殺人事件で、連鎖する復讐と巧妙な伏線を設置しようとしていたはずなのです。


でも衣玖がバズーカで殺された辺りからなんだかよくわからなくなってきました。


この子は一体、どうしてバズーカで殺されてしまったのだろう。バズーカはどこから出てきたのだろう。大体なんでバズーカ?そんなんじゃギャグっぽくなってしまうじゃないか。


この辺からぶれてきました。毒殺はまだシリアスっぽくて良かった。でも苦し紛れな落とし穴に続いてしまった。


ただ、留音が最後に納豆の糸にまかれて死んでしまうのは当初からそんな感じになりそうだなと思っていたので、着地場所大きくはずれてもフォームはキレイだったのかなと思います。


このシリーズを書いているといつもよくわからなくなってしまうのですが、今回はいつもよりもっと自分を見失ってしまってロック感にキレがなかったかなと振り返ってしまいます。


精進しようと思います。ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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