追放された途端、最速でざまぁする暗殺者
「お前は首だ! ローレンス!」
パーティのリーダー、勇者マグナスの言葉を聞きながら、俺は不思議な気分に囚われた。
ちらっと見て確認すると、彼の発言に同意するように、騎士アレン、賢者ハルスも頷いている。
ローレンスというのは、俺の千ある偽名の一つ。
俺の本名は、俺しか知らない。
そしてこいつらに、名乗る気もない。
とりあえず今は、疑問を解消しよう。
「なぜだ? 充分役に立ってると思うが」
「どの口が言いやがる!? おめぇマジで何もしねぇじゃねえか!」
わからん。
こいつが何を言っているか、まったくわからん。
俺はこいつらが雑魚と戦っている間、こいつらを全滅させることが可能な強力な敵をいつも暗殺しているというのに。
もちろん、暗殺者として証拠を残さないように、死体は完全に消している。
そんなことは、こいつらもわかっているだろう。
死体は暗殺手段を特定する、証拠の宝庫だ。
超一流の俺が、そんなものを残すはずがない。
だからマグナスにそんなこと言われる筋合いはないが。
まぁ、雇い主が首といえば、しょうがない。
「まぁ、ならいい。さらばだ」
「二度とその顔見せんな! ごくつぶしが!」
立ち去りながら……お前が今見てる顔は、真の顔ではないし、また見ることがあっても違う顔だよ。
そう言ってもよかったが、控えておこう。
こうして俺は立ち去ることにした……が。
こいつらから、俺の正体が世間に発覚する可能性は限りなく低いが、ゼロではない。
一応、皆殺しにしておくか。
どうせ強敵にやられるだろうし、早い方がいいだろう。
暗殺者はリスク管理が大事だからな。
まぁ、おまえ等のこと、なんだかんだ言って好きだったぜ──
──勇者パーティが行方不明になったのは、そんな経緯だ。
俺の雇用期間は、なぜか、いつもすぐに終わる。
次の雇い主は、長く付き合えることを期待しよう。