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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

思いつき短編集

とある排他的な村の話

作者: 頭の軽い奴

 

  この世界は精霊と契約を結ぶことで人間は超常の現象を起こす。契約は精霊の気まぐれであり、結ぶも切るも精霊が主導だ。精霊を説得して契約を複数結ぶ様な猛者は伝説足り得る。


  さて、本編は交流が途切れ後は滅びるだけとなった農村から始まる。そこは古来より火の精霊が封じられていると言う様な伝承が伝わっていた。


  伝承では火の精霊による怨念が原因で、この村で火を使えないというものだった。だが人を捧げることでその怨念を回避できるとも伝わっていた。


  そのために代々、溢れ者が厄介払いの意味も含めて捧げられた。


  今日もまた、恒例行事と化した儀式で生贄に捧げる者が会議で決まる。


「お前はこの村を救う運命を持って生まれてきたのだ。しっかりと、その運命を真っ当するのだぞ」

「……」


  その言葉を告げたのはこの村でも一番の年長者であり、生贄として捧げられる少女の祖父であった。


  生贄に捧げられる少女の経歴を告げる必要はないだろう。なぜなら、この少女はこれから儀式のためにこの村に帰ることはないのだから。


「運べ」


  この村から離れ、儀式場に着いても少女が何かを話すことはない。


  儀式場と呼ばれるところは石造りの祭壇であり、煌々と暗がりを照らしながら燃え盛る篝火がある。


  祭壇の中央に立たされ他の者が祭壇から降りると篝火の火が燃え盛った。その火は少女を生き物の様に蠢き少女を包み込む。


  その熱風は外で固唾を飲んで見ている村民にも伝わった。村民の内心は場の緊張感とは反対に晴れ晴れとしている。


  しばらくすると、火が治まる。炎に包まれた祭壇の中心部は陽炎が揺らめいているために外から見ていた者には見通すことができない。


  だが、そこには誰か立っている。その人物は赤い髪を靡かせながら平然とした様子で村民の方に向かっていることが足音で分かる。


  火に包まれた後に何者かが立っているというのはこの伝承が伝わって以来、初めての出来事であった。そのため呆然とした様子でただただ眺めていた。


  ひんやりとした空気が祭壇に流れ込み陽炎が徐々に治まってくると、歩いて来ているのは先程炎に巻かれ死んだと思われる少女だった。


  だが、身にまとっている服装や瞳の色などが違う。それは伝承に伝わる火の精霊が現れた、その様に言っても過言ではないだろう。


  呆然と眺めていた村民を見た少女は、何かをすることもなく祭壇を降りて村を出た先の森へ行く。


  我に帰った村民は慌てて村へ戻り、先程の出来事を報告しようと祭壇から離れる。


  だが、その村民が見たのは目映い位に明るくなった村だった。先程の篝火の様に煌々と夜の闇を裂く炎によって村は燃えていた。


  空には一つの村が燃えていることなど関係ないかの様な満天の星空が広がっている。

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