母の行方と6年前のクリスマス
第3話
―6年前―
その時は突然現れた。
6年前の12月24日
アンナたちが9歳 小学3年生とき だった。
家の周りや街はクリスマスムードまっただ中の、雪の降り積もる肌を刺すような寒さの日。
私の家に毎年クリスマスはエイキのお母さんとケントのお母さんが来てパーティをやるのが恒例行事だった。
クリスマスパーティの最中にチャイムがなった。
ーピンポーンピンポーンー
ガチャ。
銀色の防具に やけた茶色い肌の男の人が20から30人、立っていた。
軍だ。
皇帝陛下直属の軍隊だ。
家の周りは、相当のことが起きない限りこんな
田舎町に来るはずがない軍隊が来ているということで、大騒ぎになっている。
アンナ、エイキ、ケントの母達が軍隊と話している。
もめている。
叫んでいる。
泣いている。
追い返そうとしている。
3人の母がその時の小学校3年生の私には見たこともないような怖い顔で、冷たい顔で
軍隊と話していた。
その時、3人が同時に能力を発動させようとした。
ーーーーーギィィィ っっ 、、、、、
能力発動を強制的に3人は止めた。
そして3人はそのまま軍の人と家を出ていってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
6年間。 今まで帰ってくることは無かった。
だけど、今の私ならわかる。
能力発動を強制的に止めた理由。
軍人は私たちを指さしていた。
そしてお母さんは振り返った。私を見た。
いつも凛としてて、なんでも1人で解決して、私なんかに弱い姿は見せたこともなかった母が瞳を震わせ 泣いていたのだ。
そしてエイトの母もケントの母も同じように。
‐私たちを人質にしたのであろう‐
そうわかった時には、自分の無力さに情けなさに怒りからの震えが止まらなかった。
あの時の私達には何も出来なかった。
ただ叫ぶことしか。
行かないで、どこ行くの、やめてよ、離して、
連れてかないで、こわい、助けて、誰か。誰か。
誰かなんていない
その時わかったことだ
自分でどうにかするしかない
あの時の私には力がなかった
抗うすべがなかった
考えることをしてなかった
だけど今はもう違う。
あの時とは
私を含め3人とも成長をした。
あの日の話はしない。
したことがない
話し合わなくても同じ気持ちだということをお互い ひしひしと伝わってくるからだ。
だから、能力の勉強、強化。
徹底的にした。
入団試験も受けに来た。
あんな思いを二度としたくないから。
大切な人を何もせずに奪われたくないから
そして、
‐いつかお母さんを取り戻す-
そうおもっていた。
だから、リヒィード・アゼカ その名前を聞いた時には、全身の力が抜け、鳥肌が立ち頭が真っ白になった。
「え、、、、、、、、、、、、」
「お、おかあさんなの、かな、、、、?」
アンナは絞り出すようにいった。
「わかんねぇよ」
いつもより全然小さい声でつぶやいたエイキ。
ケントは下を向いたまま何やらブツブツ言いながら考えている。
「いや。多分そうだ
アゼカさんだよ。アンナのお母さんだよ」
ケントはぎこちなく微笑みながら言った。
「どうして、んなことわかるんだよ?」
するとケントがいった。
「お姉さん 名前は?」
「え、え、??私?」
状況が飲み込めないように たじろいた。
「うん。そう。」
「私の名前はルーシー」
「そっか、じゃあルーシーさん、上の名前は?」
「え、、上?
えっ、えっと、、、、??」
「じゃあ、次エイキとアンナね。
上の名前 何??」
2人は沈黙していた。
そして口を開いたのはエイキだった。
「上の名前なんてねーよ。」
「うん。それが普通。けどアゼカさんは、リヒィード・アゼカさんだよね?
俺のかーさんは、クライド・レミ
エイキの、母さんは サミス・リィーナ
そう。何故かあるんだよ。3人ともね。
街の中や、今までの人生で上の名前がある人な んて今まで出会ったことないよね? てことは、
上の名前がなぜ母さん達にあったのかは知らないけど特別な ことなんだよ。きっと。
だからそう簡単に上の名前なんての はもらえない。だから、団長と言われてるリヒィード・アゼカ様はアンナのお母さんで間違いないよ」
2人は黙りこくっている、
いや もう黙ることしかできないのかもしれない。
そんな中沈黙を切り裂いたのはルーシさんだった
「あんた達、団長の子供さんなの!?
しかも 3人とも!?」
ルーシさんは大声で叫んだ。
『え!?3人とも、、、???』
そして、こちらも負けないぐらい大声で、3人が揃って叫んだ。