第8話 試し切り
オレの作った剣の試し切りに、この世界で最強クラスの魔物が蔓延る森へ行くことになった。だが、ここは神界なはず。
「神様、どうやって森へ?」
「どうやって?この扉をくぐるだけだが。」
すると、神様の腕にしてあったブレスレットが輝き、扉が現れた。
「なんですか、これ?」
「転移扉だ。」
「へー。」
(便利そうだな。それにブレスレットは収納道具かな?今度作ってみよ。)
「ではいくぞ。」
神様が扉を開けると、静かで綺麗な森の中が続いていた。
(オレの想像とかなり違うな。もっと殺伐とした森なのかと思ってた。)
「よし、いくぞ。」
「はい。」
神様と並んで森の中を歩く。だが、魔物は見当たらない。不思議に思っていると突然神様が立ち止まった。神様の先には暗い森が続いている。
「ここより先が終末の森だ。心して進め。」
どうやら、さっきまでは普通の森だったようだ。
(魔物がいないと思ったらここからが本番か。ま、神様もいるし大丈夫か。)
そんなことを考えながら暗い森を進んでいると、少し先に全長3メートルほどの熊のような魔物が現れた。魔物にしては小柄だが、魔物は上位種を除き、小柄な方が厄介だとされている。体が小さい分、魔物の持つ膨大な魔力の循環がしやすいため、身体能力が高くなるのだ。目の前にいる熊も、こちらに気づくと凄まじいスピードで走って来た。
「試し切りにはちょうど良い魔物だな。よし、お主の剣をかしてみろ。」
「嫌ですよ!オレが試し切りしたいんですから!」
(神様もこの剣振ってみたいだけじゃないか。)
熊は目の前まで近づいている。
(試し切りのついでにあれ、試してみるか。)
体に魔力を循環させ、身体能力を上げる。剣を鞘から抜いてリラックスし、熊が腕を振り上げた時、剣に一瞬だけエンチャントをかけ、熊の腕めがけて一閃。熊の腕が飛ぶ。切断面から相当の切れ味だとわかる。
(一瞬だけのエンチャント成功。っと、もうエンチャント切れたか。)
「ガァァァ!」
だが、熊は腕を切られたにもかかわらず、もう片方の腕を振り上げてきた。
(まじか、まだ来るのかこいつ。なら次はこれだ!)
剣を構え、また別のエンチャントをかける。熊の動きに合わせ、腕を切りつける。先ほどと同じように腕が飛ぶが、今度は切断面が燃え始める。
(エンチャント<フレイム>、これは傷口が燃えて止血されるから魔物には向かないな。)
そんな考察を行っていると、熊が噛みつこうとしてきた。
(うおっ!あぶねっ。さすがに諦めろよ。)
噛み付いてきたところを無防備な首をはねる。ようやく力尽き、崩れ落ちる熊。はねた首からは大量の血が流れている。
「剣そのものの性能もいいな。あれ?神様、どうしました?」
さっきから神様が静かだ。
「ば、、、」
「ば?」
「馬鹿者がー!」
どうやら、また何かやらかしてしまったらしい。