第3話 ルナ
魔族たちが持っていた袋の部屋にいた女の子。その子を見たとき、オレのからだにカミナリが落ちた。
「か、可愛い…」
端正な作りの顔、艶やかな長く青い髪。つい見とれてしまう。すると、女の子の閉じられていた瞼が動き、ゆっくりと目を開けた。
「っ…」
女の子の瞳を見た瞬間、オレの体に二度目のカミナリが落ちた。女の子の瞳は透き通るような青で、オレは吸い込まれるようにただ見入ってしまう。だが、女の子がオレを警戒しているように感じたため、話しかけてみることにした。
「君はどうしてここにいるんだ?」
「…」
女の子は返事をしてくれない。そこで、オレからいろいろ質問をしてみる。
「魔族の仲間なのか?」
「…」
「それとも捕まっているのか?」
「…」
その他にも色々と聞いてみたが何も話してくれない。
「んー、どうしたもんか。」
いろいろの考えていると、「くぅぅ」とお腹の音が部屋に響いた。音の主は女の子のお腹だ。
「お腹が空いてるのか?なら、これやるよ。」
そう言いながら、オレはブレスレットを操作し、食べ物を出す。
「…っ!」
オレがブレスレットから食べ物を出したことに、女の子は驚いたようだ。
「ちょうどオレもお腹が空いてきたところだ。遠慮せずに食べてくれ。」
「…」
やはり返事はないが、食べ物をじっと見つめ次にオレを見てくる。目があうとドキッとしてしまう。
「…本当に、食べていいの?」
「ああ、遠慮せずいっぱい食べてくれ。」
オレが促すと、いそいそと食べ物に手を伸ばし、パクパクと食べだした。ちなみに、食べ物はパンのようなもので、不味くはないが上手くもない。
(やっと喋ってくれたな。この調子で色々と話してくれるといいが。)
オレも女の子の横でパンを食べ始める。よほどお腹が空いていたのか、女の子はパンをすぐ食べ終わり、残念そうな顔をしている。その顔も可愛く思えてきてしまう。
「…ありがとう。」
「どういたしまして。」
初めて女の子から話しかけてくれた。
「そういえば名前聞いてなかった。」
「…」
「オレから名乗ろうか?」
女の子はこくんと頷く。
「オレは…」
(そういえば、この世界って苗字とかあるのか?)
迷った末に普通に名乗ることにする。
「オレは井上康介だ。」
「…コースケ。」
「君は?」
「…私はルナ。」
「よろしく、ルナ。」
女の子改め、ルナと話を続ける。
「それで、ルナはどうしてここにいるんだ?」
「…魔族にとらわれてた。」
(やっぱりか。あいつらめ、こんな可愛い子を攫うなんて。)
今の話を聞いて、決めたことがある。それは、
「よし、これからオレは君を守る。」
ルナを魔族や他の奴から守ること。
「…なんで?」
「なんでって、魔族に狙われてるんだろ?」
「…そうじゃなくて。」
「じゃあなんだ?」
「…なんであったばかりの私を助けてくれるの?」
そんなこと決まっている。
「君に、ルナに惚れたからだ。」
理由なんて単純。男とはこういう生き物だとオレは思っている。だから、オレはルナを魔族や他の奴から守る。
「…ありがとう。」
「何が?」
「…惚れたって。」
「ああ、ルナに惚れた。」
言っていてだんだん恥ずかしくなってきた。それによく見ると、ルナの顔も赤い。
「…ねえ、コースケのこと聞かせて。私のことも話すから。」
「いいぞ。といっても、オレのこと聞いたって楽しくないと思うけど。」
「…コースケのこと知りたい。」
「分かった。まずオレは異世界から来たんだ。」
それからオレは、自分のことを話し始めた。




