第2話 天使との出会い
オレは今、なぜか魔族に襲われている。
「話せば、分かる、から、さ。」
「…」
さっきから剣を避けながら対話を試みているが、返事すらしてくれない。
(それにしても、効率の悪い魔力循環の仕方だな。)
魔族の男は全力で循環を行っているようだが、効率がオレと比べると天と地程の差がある。しまいには魔族の方が息を切らし始めた。
「…なぜ当たらない。貴様、何処の者だ?」
「何処って、」
「まだシラを切るか。」
(この人はさっきから何を言ってるんだ?)
魔族の言っていることがわからず、首をひねっていると、息が整ってのか、また襲いかかってきた。
(このままじゃ何も進まないな。こっちからも攻撃するか。)
オレも剣を抜き、魔族が振った剣を受け止める。それだけで相手の剣が折れた。
「なっ!」
「空きあり!」
剣が折れた事に驚きガラ空きになった胴体に、身体能力を高めた拳を一発撃ちこむ。
「ぐはっ!」
それだけで魔族の男は気を失う。
「ごめん!そんな強くするつもりはなかったんだ。」
「貴様、よくも我が同胞を。許さん!」
魔族を1人倒したせいで、もう1人の魔族の魔力が急速に高まっていく。魔法の兆候だ。どうやらもう1人の魔族は魔法を得意としているらしい。
「ごめんってば。」
「黙れ!我が同胞の仇、魔法で消しとばしてくれる。」
「まだ生きてるってば。」
まるで聞く耳を持たず、魔力の上昇が止まる。魔法が構築し終わったのだ。魔法を見るのが初めてなオレは、ここまで言うのだからこの魔族の魔法はヤバイのだと考えた。そこで、剣の持ち手の魔道具としての機能を作動させた。それと同時に魔法が飛んでくる。
「吹きとべ!」
視界が真っ赤な炎で埋め尽くされる。だがオレは落ち着いて、剣の持ち手を体の前に出す。持ち手から出ている半透明の壁と魔法がぶつかった。
(見た目より威力ないな、この魔法。慌てて魔力障壁を全力展開して損した。)
オレの体には一切魔法は当たっていない。オレが行ったのは、持ち手の魔道具としての機能、魔力障壁の展開だ。これは所謂バリアを出す機能で、込める魔力によって強度が変わる魔力障壁を展開する。今も、魔法を完璧に防いでいる。だが、魔族の男は気づいていないようだ。
「ハッハッハッ、ひとたまりもあるまい。」
(笑い方がムカつくな。)
魔法を防ぎながら前進し、魔族の前まで近づく。魔族は自分の魔法のせいでオレが見えないため、かなり近づいても気づかれない。
(自分の魔法で敵を見失うなんて馬鹿か。もっと上手く魔法使えよ。)
心の中で悪態をつきながらも身体能力を上げ、魔族の前に飛び出す。
「何⁉︎」
隙だらけの魔族の体に拳が刺さる。これまた気絶し、その場に倒れる。
「なんだったんだ、こいつら。」
何かこいつのことがわかる物がないか、魔族たちを調べる。1人目は何も持っておらず、2人目は大きな袋を持っていた。中は部屋ぐらいの大きさなっており、魔道具のようだ。
「こんなもん持って何してたんだ?」
とりあえず中に入れそうなので、入ってみる。中は普通の部屋になっていて、真ん中に椅子が置いてある。その椅子に誰かが座っている。
(また魔族か?)
警戒し剣を構えながら正面まで移動し、椅子に座っている人物の顔を見る。
「っ…」
そこには、天使が眠っていた。




