第1話 恩神
初作品です。暖かい目で見てもらえると幸いです。
井上康介。何処にでもいる高校2年生。
彼は車にはねられ死亡した、と世間では思われている。しかし、彼は、彼の世界とまた別の世界、つまり彼から見た異世界の神により、通常は消えるはずの魂を「偶然」保護され、肉体は死んだが魂は生き延びた。物語は、康介のその後の人生の話である。
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そこは、真っ白な世界が広がっていた。
「えっと、ここ何処?」
「ここは、神界。神々の住まう地だ。」
「!!」
いきなり聞こえた声に驚く。さらに、声は聞こえるのに声の主が見当たらない。ついでに自分の体も見当たらない。
「えっと、誰ですか?」
「儂か?儂は鍛治・錬金の神だ。」
(神?なに言ってんだ。大丈夫かこの人。)
「いたって正常だぞ。何か文句でも?」
「す、すみません!なんでもありません!」
声に出してなかったのに返事をされた。
(なんでオレの考えてることがわかったんだ?)
「儂は神だぞ。思考を読むぐらい容易い。」
まただ。
「は?思考を読む?」
「はぁ、物分かりの悪いやつだ。その様子だと自分がどうなったかもわかっとらんな。」
「どうなったって、どう言うことですか?」
(そういえば、オレ、なんでこんなところに?)
なぜここにいるのか思い出そうとするも、記憶が一定のところで途絶えていて、思い出せない。
「はぁ、説明してやる。まず、お前の肉体は死んだ。車とやらにひかれてな。しかし、魂は儂が保護してやった。今、お前は魂だけの虚ろな存在だ。もともと、魂は肉体と言う器がなければ霧散してしまうような、不安定なものだ。ただし、お主のように魂さえ生きており、新たな肉体に魂を定着させることができれば、死にはしない。」
「つまり、神様はオレの魂?を保護した命の恩人ということですか?」
「そう、儂は恩人だ。」
「えっ?」
なにやら、恩着せがましいことを言い出した神様。こういう時は「まぁいい」とか言うんじゃないのか。
「そこで一つ頼みを聞いてはもらえんか?」
そして、また何か言い出した神様。
「頼み、とは?」
「儂の弟子となり、技術を受け継いでくれないか?技術を受け継いでくれた暁には新たな肉体を授けようではないか。」
「それは、オレは弟子にならなければ肉体が手に入らないわけですよね?」
「まぁそうなるな。」
これ、神様が頼みごとをしてるように見えて、一方的な要求だ。オレは肉体がないと消えてしまうのだから。ここでダメだと言えばオレはここで消える。それに、おそらくだが、
「神様、神様は魂は不安定だと言っていましたが、オレはまだ消えてない。これ、もしかしなくても、神様のおかげですよね?」
「そうだが?」
やはりだ。オレの魂はこの神様の手の中、と言うことだ。要するに、オレに拒否権はないも同然。
(弟子になるのはいい。だけれども、、)
深呼吸する。まぁ、魂だけの存在では体がないから深呼吸などできないが、気分だ。
(よし、やるぞ!)
オレは、決意を固めた。