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「総員!戦闘配置に付け!」
戸高艦長は、すかさず号令をかけ、長谷川戦術長が以後の戦闘指揮を引き継いだ。
今後の戦闘は、戦術長が全ての情報を総合的に判断して、指向武器の選定などを行い指揮し、艦長はそれらの助言を受けて指揮するのである。
「水測長、敵味方識別探信儀、打て!通信長、各艦へ通達、攻撃は松、竹が行う、梅、桃は攻撃艦を支援せよ!艦橋、面舵三十度、ヨーソロ!」
長谷川戦術長は、矢継ぎ早に命令を発した。
それに従い、大友水測長が水中探信儀を使ってモールス信号を水中に放った。
これは、錯綜する戦闘海域で味方潜水艦への誤射を防ぐ目的で新たに採用された、新戦術であった。
「駆逐艦竹より、入電!我、目標ヲ探知ス。左十度、距離四千!」
「戦術長、目標より、応答無し!的針ヒトヒトマル、的速四!目標増速の模様!距離三千五百!」
「戦術長了解!艦長、目標を敵と判定します。攻撃を行います。」
「艦長了解!総員、砲雷撃戦用意!目標、前方敵潜水艦!二式爆雷、撃ち方はじめ!」
「水雷長!目標、前方敵潜水艦!一番投射機、撃ち方はじめ!」
戦術長が武器を選定し、佐竹水雷長に命じた。
「水雷長了解!目標、前方敵潜水艦!一番投射機、撃ち方はじめ!」
「水測長了解!目標諸元入力終わり!的針変わらず、的速六、距離三千!」
敵潜の攻撃可能距離到達まで、後五分であった。
「よーい、てぇーッ!」
ドドドッー!
いつもの様に、二式爆雷投射機からの発射音と振動が戦闘指揮所内でも感じられ、夜空高く小型爆雷が撃ち上がる姿が脳裡に浮かんでいた。
「目標、的針フタナナマルへ変針!的速十五へ増速!」
「ちぃ!外されたな!」
俺の横にいる佐竹水雷長が舌打ちして言った。
するとまだ命中の成否も判明しない内に長谷川戦術長が命じたのである。
「三番投射機用意!諸元入力、急げ!」
「三番投射機、諸元入力しますッ!」
間もなくして初弾の全てが外れた事が判った。
「敵潜の直上通過!…後方に抜けました!」
「三番投射機、諸元入力終わり!」
「敵潜との距離、五十、…百、…百五十!」
「よーい、てぇーッ!」
ドドドッー!
二式爆雷の第二射が放たれた。
戦闘指揮所に居る全員が固唾を呑んで、命中の爆発音が聞こえて来るのを待っていると、艦底から振動が伝わって来た次の瞬間!
ドドドーン!
と海中の爆発音が響いて来たのである!
「第二射!命中ッ!」
大友水測長が叫んだ!
「ヨッシャー!」
「帝国!バンザイ!」
爆発音を聴いた乗組員が艦内のいたる所で歓声を挙げていた。
しかし、その歓喜も長くは続かなかった。
「敵潜水艦!浮上して来ますッ!」