皇都の中にある遺跡
今日は、皇都へ出発する日だ。ここで1つ重要な事を忘れていた。私はガルディア帝国の皇都に行った事がないのだ。急遽、リッチを呼び戻し皇都入口に転移させてもらって座標を覚えた。全く気付いてよかったわ。
皇都でする事は、そう多くないだろう。最重要事項は、遺跡調査ね。皇帝の話によると、遺跡には地下もなく、昔の建物の痕跡が少し残っているだけらしい。そこにポツンと女神像が置かれているだけだそうだ。それも寂しいわね。次のスフィアのメッセージ、管理世界の座標を教えてくれればいいんだけどね。マルコ遺跡での情報も、殆ど知っている事だった。せめて、黒幕の連中の誰かを正式な名前で教えて欲しいところだ。
皇帝との集合場所に行くと、皆揃っているようね。
「皇帝陛下、準備は宜しいですか?」
「転移の前に、騎士団の皆に力を示してくれないか?リッカの力はわかっているが、その主人であるサーシャが如何程のものかを皆に理解させて欲しいのだ」
そういえば、今回私は直接的に一切関わっていない。騎士団が不審に思うのは当然か。
「わかりました。それじゃあ軽く威圧でもしましょう。『威圧』」
《ぐ、こ、これで軽く?》
《リ、リッカ殿より強いという噂は---》
威圧を解除すると、騎士団全員が崩れ落ちた。うーむ、リッチの言う通り鍛え直しね。
「本当はリッカにグリグリ攻撃をやれば、騎士団の皆さんを1発で納得させれると思うんですけど、リッカ自身が嫌がりますからね」
「サーシャ様、何も悪い事していないのにお仕置きされるのは嫌です!あれだけは、嫌だ。私じゃなくて、フィンでやって下さい。お疲れ様会の時、小籠包を自分のアイテムボックスにこっそりと入れてたんですよ」
「ふぇーーーーーー、リッカなんでバラすの!リッカも同じことしてたじゃない!」
妙に減りが早いと思ったら、そんな事をしていたのか。2人とも同罪ね。
私は、口論している2人に笑顔でこう言った。
「----2人一緒にお仕置きね」
「「みぎゃああああーーーーーーーーー!!!」」
《ドサ、ピクピクピク》
そんな光景を見ていたイリスは、
(小声)「参加しなくてよかった。我慢して正解でした」
と言っていた。うん、イリスは偉いね。
この光景を見ていた騎士団達は、皆一斉に真っ青になっていた。
「あのリッカちゃんが為す術もなくやられた!」
「手合わせをお願いしなくてよかった」
「皇帝陛下が一目置くはずだ。サーシャ様を怒らせてはいけないな」
「「「「うん!」」」」
騎士団が納得してくれたのは良いけど、何か違う気がする。
「皇帝陛下、如何ですか?」
「ああ、充分だ」
「騎士団の皆さん、私の部下であるリッチが現在キース皇子と行動を共にしています。リッチはキース皇子の師でもありますから、これからリッチに鍛えてもらって下さい。今後、邪族との戦いも激しくなります。その時、私やリッチ、リッカは駆けつけれないと思います。キース皇子を筆頭に、あなた達自身が強くなって、ここガルディア帝国を守って下さい」
《うおおーーーーーー》
どうやら納得してくれたようね。
「それでは転移しましょうか?」
「ああ、任せた」
「『転移』」
ガルディア帝国王都に到着した。皇帝達を見ると、皆呆気にとられていた。
「まさか、こんな一瞬で到着するとは、これが転移か。サーシャ、転移を獲得するための方法を教えてくれ」
キースも、あと少しで長距離転移を覚えるし教えても問題ないわね。
「転移の取得には空間魔法が必須となります。通常なら空間魔法のレベルを10にすれば上位の時空魔法が手に入ります。ただ、空間魔法のレベルが5以上あれば、鍛錬次第で、時空魔法を入手可能です。まずは短距離転移をマスターし、次に長距離転移へと移ります。キース皇子は既に短距離転移を取得していますし、もう少しで長距離転移も取得出来る位置にいます。詳細は、キース皇子とリッチに聞けばいいでしょう」
「キースは短距離転移を使えるのか!それは良いことを聞いたな。魔法使い達にも空間属性を持つ者が多少いたはずだ。リッチ殿にお願いし転移を覚えさせよう」
「おそらく、短距離と長距離転移を利用すれば、温泉の発掘も楽になると思いますよ」
「む、そうか!温泉は地下深くにあると聞く。サーシャ、感謝するぞ!」
さて、皇帝を送るのはここまでだ。
「皇帝、私達はこのまま遺跡に向かいますね。中華料理を教えるのは、いつ頃が宜しいですか?」
「本来なら今すぐと言いたいが、さすがにそれは無理だな。ふむ、3日後の朝9時に城に来てもらえないか?それまでには片付くだろう」
3日後か、それなら問題ないわね。
「それなら大丈夫ですね。では3日後の朝9時にお伺いしますね」
これで皇帝との話も終了だ。皇帝は騎士団と共に入口に向かったが、警備兵が驚いていた。当初よりも早い帰宅で、スオウの協力者達も驚くでしょうね。皇帝やキース、リッチの力があれば、3日で全て片付くでしょう。
私達も中に入ると、テルミア王国の王都同様賑やかだった。
「師匠、中華料理を教えるのは皇宮の料理人だけでいいんですか?」
「ええ、今回はそれで充分よ。ビルブレムの学食の件もあるし、すぐに広めてくれるでしょう」
「お姉様、冒険者ギルドに寄らないんですか?」
「特に用もないし、このまま遺跡に行きましょう」
○○○
遺跡に到着すると誰もいなかった。ここ一応観光スポットにだよね?まあ、好都合だからいいけど。
「誰もいないか」
「サーシャ様、あそこに女神像があります」
ジンに言われた場所を見ると、女神像はあったのだが、手入れがされておらずボロボロだった。
「うわあ、なにこれ手入れが全くされてない」
「お姉様、ガルディア帝国ではスフィアートのように、女神スフィア様は崇拝されていません。以前皇帝陛下にもお尋ねしたのですが、『頼れるのは自分自身のみ。女神の存在は認めるが、上から見ているだけの女神を信用する方がどうかしている』と仰っていました」
「まさにその通りね。私も、以前まで神様の存在を信用していなかったしね」
「でも、今はお姉様自身が神ですよ」
「う、そうなのよ。まさか、自分が神になるとは思わなかったわ」
「師匠なら、全ての国で崇拝されますよ。テルミア王国とガルディア帝国では、近い将来確実に崇拝されますね」
それはそれで、何か嫌なんだけど。
「お姉様、女神像に触れますね」
イリスが女神像に触れると、女神像は光だし、スフィアの声が聞こえてきた。
【---アイリス、ここまで来てくれてありがとう。---私から少しずつ力が消えていっているのがわかります。---力の消費を最小限にするため、メッセージだけ伝えておきます。私は邪神封印後、封印の維持と管理によって下界に行けなくなりました。そこで、来るべき危機に備えるため、人に異世界からの勇者召喚の儀式を教えました。もちろん異世界から無断で召喚するのですから、送還と帰還両方の儀式を教えています。そして、これまで幾度となく邪王を退けることに成功しました。元々は邪神がシステムの一部を書き換えたことで、邪王が生まれ、そして邪族も生まれたのです。私もシステムの再度書き換えようと試みましたが、予想以上に妨害が強力でなかなか捗りませんでした。そんな時です。下界の管理を任せていた黒幕の1人がある日私に言いました。
『ここまで世界中に広まった邪族を討伐するのは不可能です。邪族を1つの種と認め、放っておくべきです。そして、人が危機に陥った時、異世界から勇者の召喚を行うのなら、邪族が危機に陥った時も異世界から召喚を行なうべきです』
始め、こいつは何を言っているんだと思いました。邪王と邪族がいるせいで、人の発展が完全に止まっているんです。少しずつですが、人口も減っています。私は、その時、その人にこう尋ねました。一体何を召喚するつもりですかと。そいつは、こう答えました。
『邪族が召喚するんですよ。人や神と相反するものといえば、悪魔しかいないでしょう』
絶対に許されない行為です。悪魔、確かに他の異世界でも存在します。そんなものを召喚したら、スフィアタリアが滅びます。私は絶対に許可しませんでした。この者は悪魔の危険性を何もわかっていないからです。ですが、今、サリア達は私を追い出し、管理世界を乗っ取ってしまいました。おそらく、黒幕連中は邪王に悪魔召喚を教えているでしょう。アイリス、申し訳ありませんが、召喚されていれば勇者と共に悪魔を滅ぼして下さい」
メッセージが終わった。2回目までの声より、少し弱々しくなっていたわね。スフィアを殺そうとしている黒幕の連中から逃走しつつ、メッセージを残しているから体力的に限界に近づいているのかもね。
「お姉様、邪王と悪魔を私と勇者様だけで討伐出来るわけないじゃないですか!1回目のメッセージ場所にあった剣も聖剣じゃないし、完全に自分の仕事を私と勇者に押し付けていませんか?」
「まあ、この時点で鬱病という病気になっていたのよ。メッセージを残すだけの意志があっただけでも良しとしましょう」
「でも、師匠、悪魔というのは本当に強いんですか?」
「さあね、私の世界では悪魔に関係する言葉だけは良く出てくるわ。例えば、ベリアル、ベルゼブブ、アモンとかがそうかな。言葉があるだけで、実在していないのよ。他の異世界の悪魔達が気になるところね。ただ、作った本人が悪魔に対して、どういう認識をしているのかによって、召喚される悪魔の強さが変化するわね」
「お姉様、どういう事ですか?」
「発言した黒幕は悪魔の事を知っているから、まず間違いなく異世界召喚者でしょう。ただ、異世界召喚でも私がいた世界からの召喚者の場合、元いた世界では悪魔は実在しないわ。実在しない者をどうやって召喚する?」
「あ、それもそうですね」
「他の異世界からの召喚者の場合だったら、実在している悪魔を召喚可能かもしれない。召喚させるには、強いイメージが必要よ。そのイメージの仕方次第で悪魔の強さが変化するわ。黒幕が悪魔という存在をどう考えているかが問題ね。また、邪族にもプライドがあるでしょうから召喚しない可能性もある」
「うー、そうなると対処しようがないですね」
これは、あの剣を早急に作製しておく必要があるわね。一番最悪なパターンは、高次元の悪魔が召喚された場合ね。その場合、そこに存在はあっても高次元に位置しているから、私達の攻撃自体が一切効かない。でも私が作製している虚無の剣は、指定した対象全てを虚無に帰す機能を持つ。たとえ、どこにいようとも関係ない。非常に危険な剣だけど、絶大な力を持っている。今後、スフィアタリアとは違う別の異世界からの侵入者(悪の心を持った者限定)を防ぐためにも役立つ。ただ完成には、まだ時間がかかる。
これは、対悪魔用の魔法を考えておく必要があるわね。
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