武器部門本戦開始と邪族乱入
○○○ シュリ視点
ここ最近、サーシャが作った宿泊施設に寝泊まりしているが、正直環境が良過ぎる。この畳から漂う匂い、布団、温浴施設全てが身体を癒してくれるのだ。サーシャに畳の作り方を聞いたが、対応する植物が帝国内にあればいいんだがな。スオウを倒した後は、ここを離れ皇都にある皇帝宮に移らないといけない。もし、俺が皇帝になったら、サーシャのこの施設を参考にして、新たな浴場を国民に作ってあげよう。国民にも、この癒しを与えないといけない。
そして今日から本戦か、スオウとの因縁もここで終わる。奴がいつ仕掛けてくるのかが問題だ。本戦開始前に、皇帝からの宣言がある。そこで、いきなり仕掛けてくるか、もしくは決勝戦が終わってからの襲撃か。可能性としては、本戦出場者の力が減衰している後者が妥当だろう。
「サーシャ、邪族がいつ攻めてくるかが気がかりだ。本戦終了後の閉会式に攻めてくるのが妥当だと思うんだが?」
「普通はそうね。ただ今回に限って言えば、本戦開始前の開会式に攻めてくると思うわ。ビルブレム周辺の邪族達を討伐している時、何体かがノートを持っていたのよ。それを見ると、予選出場者の冒険者ランクが記載されていた。冒険者ランク最低がC、最高がSとなっていた。Sランクはリッカ、Aランクの人数は30人程だったの。Aランクの中には闘技ランクSの人もいたわね。ただ、邪族側にとったら大した戦力がいないから、開会式に攻めても問題ないと書かれていたわ。」
嘗められたものだな。ランクが全てではないという事を教えてやる。
「開会式か、全員が全力で戦えるということか。あとは、どういった方法で攻めてくるかが問題だな。」
「こればっかりはわからないわ。ただ、大勢で転移する時に生じる兆しが見えないのよね。スフィアート同様ビルブレム周辺を邪族で覆うか、もしくは時空魔法『空間切断』で闘技会場に一気に攻めてくるか、現状なんとも言えないわね。そして、ノートに書かれていたといっても、開会式に必ず攻めてくるとも限らない。気を引き締めていきましょう。」
そうだな。俺もリッチに特訓されて魔力感知や気配察知もレベル8になったが、全く気配を感じない。少し不気味だな。
「時空魔法による『空間切断』で襲ってきた場合は、兆しが見えないのか?」
「その方法で襲って来た場合、兆しは直前までわからないわ。涼見がSランク邪族1体に教えているから、『空間切断』で一気に転移してくる可能性は大きいわね。」
空間切断か。
短距離転移
自分中心に周囲500mの範囲内なら、どこにでも移動できる
長距離転移
1度行った街なら、どんなに遠距離でも瞬時に移動出来る。ただし、立ち寄った場所の座標を覚えておかないといけない。
空間切断
距離に関係なく、どんなところでも瞬時に移動出来る。ただし、空間を無理やり切断し目的の場所に移動するため、切断後は必ず修復しなければならない。放っておくと空間に綻びが生じ、それが徐々に広がっていき、最後には大爆発が起こる。邪族は人を殺せばいいだけなのだから、修復はまず行わないだろう。まあ、この魔法を使ってくるだろうな。
「我が主、もし闘技場内で邪族が空間切断で出現した場合、???????になると思います。」
「それって私の力のせいで?」
「はい、そこから邪族達がどう行動してくるかはわかりませんが。」
「ふーん、ふふ面白い事を考えたわ。もしリッチの予想通りに現れたら、シュリあなたの剣で??????してあげなさい。そうなったら、観客達はしばらく惚けた後、どんな反応を示すかしら?」
「あははは、確かに今の俺の力なら可能だな。そうなったら邪族共はいい見世物になるな。」
まあ、本当にそうなったら、邪族達はいい前座になるな。さすがにないだろうけど。
「サーシャ様、もしそうなったら残りの邪族は、私が空間切断の中に入って殲滅してもよろしいでしょうか?その間、切断面を維持して欲しいのですが。」
「ええ、ジン構わないわよ。ただ、そうなったらね。」
ジン、さすがにないと思うぞ。
「師匠、なぜか邪族達が気の毒に思います。そうなったら瞬時に解決するんでしょうけど、邪族の立場がありませんね。」
「お姉様は、毎回毎回突拍子もないアイデアを考えますね。さすがに今回は、そんな都合よく行かないと思いますが。」
「さっきのアイデアは、半分冗談のようなものよ。まさか、S級やA級がそんな簡単に殺られないでしょう。もし、私のアイデア通りになったら、邪族達がアホなだけよ。」
まあ、そりゃそうだ。世の中そんなに甘くないからな。
さて、そろそろ移動しようか!
○○○
ゴールド闘技場に到着か。
「リッカ、控室に移動しようか。」
「うん、サーシャ様、行ってきます。シュリにボコボコに」
《ゴン》
「痛い!」
「リッカ〜〜、今ここで、それを言っちゃだめでしょ〜。お仕置きされたいのかなー?」
「ひい!すいません。行ってきます。」
リッカ、公衆の面前で八百長しますと言ったらダメだろ。
「シュリ、リッカのこと頼んだわよ。」
「ああ、わかった。一応、俺らはここで戦う選手同士なんだけど。」
まあ、リッカが余計な一言を言いそうで怖いな。側で見ておこう。控室に行くと、6人の選手が一斉にこちらを見た。予選での戦いを知っているはずだから、皆俺らを見て緊張しているな。
「なんか、張り詰めてるね。みんなリラックスしようよ。もうすぐ試合だよ。」
こうなっている原因の大半は、君のせいだがらね。まるで、わかってないな。
「シュリ、そこの女の子と知り合いなのか?」
予選で戦った優勝候補の人か。この男性は、ハゲで口髭が似合い好戦的ではあるが、根は良い人だ。
「ええ、俺が師事している先生の弟子なんですよ。同じ門下生仲間ですね。ちなみに、俺はまだ1回も勝ったことがありません。彼女と対戦している人はわかっていると思いますが、外見に惑わされてはいけませんよ。」
2人が頷いた。予選で、リッカの強さと怖さを味わったんだな。
「「マジかよ。シュリより強いのか!」」
「みんな、リッカだよ、宜しくね!誰であろうと容赦しないから。」
目付きが変わった。全員戦闘態勢が整ったようだ。
《コンコン》
「選手の皆様、準備が完了しました。武舞台入口に集合して下さい。」
いよいよか。控室に入る前に対戦相手を決めるくじを引いた。対戦相手に関しては、開会式最後に発表される。邪族が開会式に出現しない可能性もある。その場合、余力を残しておかないとな。事前に対戦した時の段取りは話し合っているけど、リッカだからな。予測不可能なことを仕出かす可能性が高い。さて、移動するか。皇帝とスオウは、もう貴賓席にいるはずだ。貴賓席は、暗殺面の事を考えて周囲には高レベルの騎士団が配備されているから、邪族が現れてもすぐに対応するだろう。
選手入場口に到着すると、1人ずつ選手紹介されて武舞台に上がっていった。
「次は、ゴールド闘技場の予選において、並み居る強豪を全員心が折れるまでぶっ飛ばした期待のSランク新人リッカちゃんです。」
《おおーーーーー》
《リッカちゃ〜———ん》
《可愛いぞーーーー》
リッカが入場すると、凄い歓声が湧きあがった。男性女性年齢問わず、全員から応援の声援が上がっている。サーシャのアドバイスのおかげもあってか、嫌われていないようだ。
「次は、シルバー闘技場の予選において、優勝候補の人達を一撃でぶっ飛ばしたシュリ選手でーーーーす!」
俺とリッカの紹介だけ、雑に言ってないか?俺も入場し観客に手を振っておいた。
《きゃあああーーーーー》
《シュリ様〜〜〜〜》
俺の方は、女性からの声援が凄いな。
さて、次は皇帝の宣言だ。
皇帝とスオウが武舞台近くの貴賓席に登場すると、周囲は静かになった。さすがは皇帝だ。圧倒的な存在感を感じる。
「闘技会も今日で最終日だ。召喚部門と魔法部門において、良い試合を見させてもらった。武器部門予選での出来事は私の耳にも入っている。ここガルディア帝国内で日々鍛錬に励み、強くなっている者達を一撃で葬った旅仲間のリッカとシュリ。世界は広いという事を皆思い知っただろう。悔いのない様、全力で立ち向かえ。そして勝って見せろ!今日は思う存分戦うがよい、武器部門本戦の開始だーーーがあ!」
皆、この瞬間、何が起こったのかわからなかった。突然何もないところから手が出てきて、皇帝の胸を貫いたのだ。やはり開会式を狙ってきたか。俺自身は、皇帝の宣言の時から空間切断の兆しが見えていた。
サーシャの言った通りになったな。開会式や閉会式どちらにおいても観客や騎士団の目の前で皇帝を殺し、そこに大量の邪族が突然現れれば、人間の悲しみ、憎悪、不安、驚き、絶望などが入り混じった負の感情が最も誘発しやすい。スオウは、その状況下でどう行動するのかわからないが、俺も行動を開始するか!
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