スフィアからのメッセージ2回目
マルコ遺跡最下層に到着した。女神像が目の前にある。
「あれ?師匠、ボスが出てきませんね?」
「ゾンビハウスの最終任務に出てきたわよ。ダンジョンコアで確認した限り、全長4m程のムキムキゾンビだったわ。何故か、ロケットランチャーを装備してたわね。」
「お姉様、ロケットランチャーてなんですか?」
「簡単に言うと、1発でも当たれば、ジンやリッカが木っ端微塵になるくらいの破壊力がある近代兵器よ。」
「え、俺やリッカがですか!一体どれ程の武器なんだ?」
女神像を調べると、台座近くに宝石が埋め込んであった。そういえば、私も聖女になったんだから、私がやっても反応するのだろうか?
「試しに、私が宝石に魔力を通してみるわ。」
「「「「止めて下さい!宝石を破壊する気ですか!」」」」
なんでよ!
「お姉様、私がやります。お姉様の場合、確かに聖女ですが、同時に邪神でもあります。スフィア様が拒否反応を示すかもしれません。」
「う、言い返せない。」
「それでは、宝石に魔力を通しますね。」
宝石が光輝き、やがてスフィアの綺麗で澄んだ声が聞こえてきた。
【マルコ遺跡最下層まで来て頂きありがとうございます。ここでお話しするのは、私を追い詰めている黒幕の1人、マルコ遺跡とゾンビハウスのダンジョンコアのシステムを書き換えた者についてです。名前は言えません。この者は、500年前の召喚者の中にいます。500年前の召喚は、アルテハイムで行われました。現在でも、資料が残っているはずです。その資料を基に奴の弱点を探し出して欲しいのです。奴は、とんでもない魔法の使い手、その気になれば、世界を滅ぼすことも可能です。遭遇しても、決して怒らせないように。そして、1つお願いがあります。ここまで来たということは、ノーマルルートかゾンビハウスルートのどちらかを辿ってきたはずです。どうか、ゾンビハウスにあるダンジョンコアを書き換えて下さい。コアに魔力を通せば、情報があなたの頭の中に入ってきて、書き換え方法を教えてくれるはずです。ゾンビハウスには、多くの異世界の人々が取り込まれ、ゾンビとなっています。その者達を解放してあげて下さい。書き換えには、最低でも魔力10万を必要とします。聖女よ、ゾンビハウスにいる人間達を救ってください。】
メッセージが終わったようだ。メッセージの前半は、知らないことがあったからまだいい。問題は後半だ。スフィアの奴、これを聖女であるイリスにやらせるつもりだったの?ふざけるのもいい加減にしろ!
「お、お姉様、魔力を抑えて下さい。お、お願いします。」
「し、師匠、魔力を抑えて下さい。マルコ遺跡が潰れます!」
おっといけない。怒りで、魔力が少し漏れたわね。
「ごめんね、2人とも。ちょっと、私もスフィアをぶん殴りたい気分になったわ。」
「師匠、どういうことですか?スフィア様は、書き換えをイリスにやらせるつもりだったんですよね。何か問題でもあるんですか?」
私自身、書き換えたからわかるわ。最低10万ですって!冗談じゃない。魔力操作スキル10、魔力は30万必要よ。
「問題大アリよ。スフィアの奴、いい加減なことをイリスに教えてんじゃないわよ。書き換えに必要な条件は、魔力操作10、魔力が30万いるわ。」
「え、30万!今で26000くらい、魔力纏いを全力で行っても16万くらいが限界ですよ。お姉様、30万なんて、絶対無理です。」
「ええ、イリスは一切悪くないわ。そもそも、聖女でなくても30万なんて魔力を持つ人間は、現在この世界に存在しない。イリスをもう少し鍛えて、魔力纏い全開でやれば、辛うじて条件はクリアする。仮にゾンビハウスの最終任務であるボスを討伐し、ダンジョンコアを露出させてハッキングを行っても、ゾンビハウスのコアの書き換えを終わらせるには、6時間程かかるんじゃないかな?イリス出来る?」
「魔力纏い全開で、6時間やり続けるなんて無理ですよ!」
「そう、だからイリスは一切悪くないの。スフィアのような神なら出来るんでしょうけど、人間には出来ないわ。」
「きっと、スフィア様にも理由があるんですよ。メッセージを入れる時点で、追い詰められていたから、システムのことを考えてなかったんですよ。」
イリス、それは無理があるわ。システム自体は、スフィアが作り上げたものだから、完全に熟知しているはず。スフィアの奴、本当にイリスにやらせるつもりで言ってるわ。ここに大勢の人達で来て、イリスに力を分け与えれば、30万はクリアするでしょう。でも、問題はここからだ。本来、神であるスフィアや邪神だから情報解析や統制も簡単に出来るんでしょうけど、イリスは人間だ。しかも何の知識もない、唯の素人だ。情報解析するだけで頭がパンクする。仮に成功したとしても、まず間違いなく、当面冒険出来ない身体になってしまう。ただ、イリスが言うんだから、悪い神様ではないのだろう。
「今回のメッセージで、スフィアが他人の気持ちを考えない良い神様だということがわかったわ。」
「あのお姉様、それ褒めているんですか?」
「褒めてる----わけないでしょう!他人にどういう影響を与えるのかを一切考えず、自分の思い付きだけを話す奴が、一番タチ悪いのよ。大方、私が認めた聖女なら出来るはずと思って言っているんでしょう。やってみてわかったけど、ハッキングはとても危険な行為よ。自分の魔力が、コアに込められた魔力より低かった場合、コアの魔力が自分の中に侵食してくるの。おそらく、スフィアは思い付きはしたけど、ハッキング自体を試していないわね。試していたら、何かしら危険性を指摘するはずよ。もしイリスにやらせてたら、2度と冒険出来ない身体になっていたわ。スフィアの奴、悲嘆そうな声でいかにもあなたになら出来るような言い方で話している。もし、私がいなかったらイリスはどうしてた?」
「え、えーと言葉をそのまま鵜呑みにして、修行で魔力を40000くらいまで上げてから挑みますね。もしものことを考えて、大勢で行くと思います。」
「それで挑んだら、仮にハッキングは出来ても、情報解析の時点で頭がパンクするわよ。書き換えが成功しても、当面寝たきりになるでしょうね。」
「ええー!スフィア様は、そんなことを私にさせるつもりだったのですか?」
「ええ、そうよ。ただし、本人いや本神は、自分の言ったことの大変さを欠片も理解していないわ。もしかしたら、スフィアの奴-----」
「もしかしたら何ですか?」
「いえ、何でもないわ。」
もしかしたら、スフィアの奴、自分の作ったシステムでカバー仕切れないことが多発し、そこへ涼見凌一達黒幕連中が現れて対応しきれなくなったから、仕事を放棄して【あとは、貴方達にお任せします】みたいな感じで、そのまま逃げたんじゃないでしょうね。もしそうなら、涼見凌一と違った意味で、最悪な神だ。
「---ともかく、これで、ここの仕事は全て完了ね。あ、あとはマルコ遺跡とゾンビハウス内で人を死なないようにしておきましょう。今後は、ダンジョンコアにある私の魔力で邪族と同じ怪物を作って、人間達と戦わせればいいでしょう。全員、少し休憩していてね。」
マルコ遺跡のダンジョンコアにアクセスして、ちょっと弄ろう。
「いよいよ、ここで人が死ななくなるんですね。スフィア様が、どうしてあんな行動を取ったのか気になりますが、まずは私の出来ることをやっていきます。」
うん、イリス、それが正解よ。
「イリス、私としては、今後この遺跡がどうなるのかが気になるよ。」
「フィン姉、どういう意味ですか?」
「確かに、師匠のおかげで、人は死ななくなるよ。でもさ、あの師匠が、それだけで終わらせるとは思えないんだよ。」
「う!確かに。」
お、フィン当たってるわ。当たり前じゃない。人は死なないけど、死亡判定の攻撃が決まった場合、罰を与えるつもりよ。まずは、マルコ遺跡にいる冒険者達を入口に戻し、看板【ダンジョン改良中】を設置。私の考えた通りにルールを変更していこう。
○○○
「よし、終了!」
「師匠、長かったですね。全部終わったんですか?」
「ええ、新しいルールを設けたわ。1階層の入口に看板を設置したから、冒険者達は驚いているでしょうね。」
「ちなみに、どんなルールにしたんですか?」
ルール
1)邪族を討伐すると、討伐対象部位と肉または10%の確率でアイテムに変化する。
2)ゾンビハウスは、現在改装中。
3)死亡判定の攻撃を受けた場合、入口に強制送還。ただし、死んだ罰として、下着と宝石の付いた指輪以外、身につけているアイテムは全て没収、魔力に変換される。
4)合計50階層あり。5階層ごとに中ボスを配置。中ボスを討伐すると、解体状態で再度出現する。20%の確率でレアアイテムが貰える。
5)5階層ごとにダンジョン構成が変化する。ただし、この構成は冒険者達がいようがいまいが、3日で変化する。女神像のある安全地帯だけは、変化しない。
「簡単にいうと、こんな感じね。変えたのは、大きな骨格部分だけ。今後、時間が出来たら、邪族の配置も変化させていくし、強烈な罠も用意するわ。」
「ふぇー、死亡判定の罰が厳しいですね。」
「お姉様、可哀想ですよ。」
「何言ってるの!仮にも冒険者なんだから、このくらいきつい罰の方がいいわ。死ぬよりマシよ。入口近くに配置した強制送還部分には、男性用と女性用の2つ用意してある。特に女性用は外側から見えないし、入れない設定にしてあるから、男に襲われる心配はないわ。男は知らん!強制送還部分で、これから販売される『アイテムボックス』や『マジックバッグ』付きの指輪を使って、予備の装備を付ければいい。」
「あ、師匠、そこは細かく考えているんですね。それなら大丈夫そうですね。」
「お姉様、男が女を襲うのはわかるんですが、男が男を襲うという状況がいまいちわかりません。」
「あー、イリス、そこは考えなくていいわ。」
さて、マルコ遺跡の改良も、これで一区切りついたし、脱出しますか。
「みんな、転移でここを脱出するわよ。私に集まって。」
「サーシャ様〜。女神像を使わないの。」
「リッカ、今、それを使って入口に私達が現れたら、マルコ遺跡を改良したのが1発で私だとバレるわ。転移で、ビルブレムに戻るわよ。」
「は〜〜い。」
こうして、私達のマルコ遺跡探索が終了した。
今回の冒険で、いくつかの新情報をGETした。
1)スフィアは、基本良い神ぽい。しかし、自分でカバー仕切れない出来事が発生した場合、無責任にも他人に丸投げする傾向がある。しかも、その際に発生する危険性を欠片も理解していない。黒幕に追われているからこうなった、で済む問題だろうか?
2)黒幕複数。その内の1人は涼見凌一、ゾンビハウス製作者で、かなりの魔法の使い手。コアの魔力の質から考えて、邪神に及ばないものの魔力量は1200万前後。ハッキングしつつ、邪神の邪力を掻き消したのだろう。私から言わせれば、ただの雑魚だ。ゾンビハウスで亡くなった人達の為にも、きつい制裁を与える予定。
3)涼見凌一は、500年前、アルテハイムで召喚された。アルテハイムに行けば、他の黒幕について何かわかるかもしれない。
4)管理システムの数値の上限は、1億。邪神がいるから、ここまで上げたのだろう。
こんなところか。正直、スフィアは当てにしない方が良いかもしれない。まあ、ガルディア帝国には、あと1つスフィアのメッセージがある遺跡があるから、その内容を見て判断しよう。
さあ、次はリッカが出場する闘技会だ。何か一波乱ありそう。
リッチに連絡して、状況を聞いてみよう。
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