協力者、現る
翌日、報酬の受け渡し分の魔導具を予定数より少し多めに作り終えたところへ来客が来た。人数が多いみたいなので会議室に入ってもらい、私・フィン・アイリスも会議室へ移動した。
「あ〜やっと作り終えたよ。まさか、冒険者全員が魔導具を選ぶとは。」
「当たり前ですよ。世界初の『アイテムボックス』付き魔導具(盗難防止付き)、しかも製作者はお姉様、超貴重品です。全員欲しがるに決まってます。」
「師匠はそんな凄い存在なんですから、もう少し自覚して下さい。」
なんか、最近フィンとアイリスによく怒られている気がする。
「これからは、何か作る時は前もって言うわ。」
「少し前にも同じことを聞きましたが、そうして下さい。お姉様は、その世間知らずを治さないといけません。」
うーん、私は世間知らずか。気をつけよう。あ、会議室に到着したわ。来客か、スキルのせいで誰かわかっているのよね。あの人達とは、今後大きく関わっていくだろうから仲は深めておこう。
会議室に入ると、バーンさん、リフィアさん、ウィルさん、ロイさん、ミアさん、ヒミカさんの6人がいた。ちなみに、会議室には情報漏洩を阻止するため、『サイレント』の魔導具が設置されている。
「皆さん、こんにちは。今日はどうされたんですか?」
始めに話し出したのはバーンさんだ。
「サーシャ、またやってくれたな。『アイテムボックス』付き魔導具、冒険者全員が喜んでいたぞ。」
「あはは、フィン達用の『アイテムボックス』付き魔導具を買う予定だったんですけど、高いだろうから自分で創ったんです。それを昨日エレノア様達に見せたら、あの事態となってしまいました。」
リフィアさんが呆れた声で話し出した。
「つまり、お金を節約するため、自分でポンと創ってしまったのね。それが世界初の発明だとも知らずに。」
「おっしゃる通りです。」
ウィルさんも笑い始めた。
「ははは、やっぱり、今回の全ての発明品の基は、サーシャが創ったんだろ?大方、目立ちたくないから知り合いの人に頼んで、開発者になってもらったてところか?」
げ、全部見抜かれてる。ここは潔く認めよう。
「はい、その通りです。」
「あのね、殆どの冒険者はとっくに気がついているわよ。今回の件は、全部サーシャが絡んでいる事にね。理由も察しがついていたから、そんな大きく広まることはないでしょう。安心していいわ。」
リフィアさん、それを聞けて安心しました。あれ、今日ここに来た用事は何だろう?もしかして----
「もうわかっていると思うけど、今日来た理由は、あなたが何者であるかを確認するためよ。ウィルのおかげで、あなたが転生者か召喚者のどちらかなのはわかっているの。問題は、あなたの強さよ。バーンが威圧しても平然としていたでしょ。」
ああ、ウィルさんは転生者なんだ。それなら私が何者かわかるのも納得ね。
この人達なら信頼出来るから話しておきましょうか。
「わかりました。私が何者かお話しします。他言無用でお願いします。」
---私は、自分の名前以外の事を全て話した。---
全てを話し終えたら、全員呆然としていた。
「調べたらすぐわかると思いますけど、私からは本当の名前を言うのは控えさせて頂きます。」
ウィルさんは、転生者だけあって、あまり驚いていないわね。
「はは、サーシャのユニークスキルだからこそ、討伐出来たんだな。それでも、邪神をステーキ弁当にして喰べるとはね。サーシャにしか出来ないよ。邪神に関しては、気の毒というかなんというか、最悪な死に方だっただろうな。」
「ウィルさん、当時は死にたくない一心で、ヤケクソになってました。邪神、叫び声をあげながら私に喰べられてましたね。」
バーンさんも、ようやく復帰してくれた。
「お前、それを普通喰うか。まあ、邪神の最後としては傑作だな。」
リフィアさんがずっと考え込んでいるわね。どうしたのかな?
「なるほど、サーシャのユニークスキルのおかげで、邪神の能力を全部盗んだわけね。サーシャ自身は大丈夫なの?邪神の悪意とかもあるでしょう?あなたが邪神に乗っ取られる可能性はなかったの?」
「それについては大丈夫です。喰べると同時に全ての悪意を全部力に変換したんで、邪神も驚いてましたよ。途中から、私を恐れていましたね。【早く喰って俺を消滅させてくれ〜〜】と私に懇願していました。最後は、ホッとして逝きましたね。邪神の全てを力に変換したせいか、基礎能力値が凄いことになってました。」
「サーシャ、凄いね。邪神を恐怖のどん底に陥れるなんて!お仕置きの時、ウィルもそうさせた方がいいのかな?」
ミアさん、後半の内容がおかしいですよ。
「うん、尊敬する。そんなお仕置き、考えた事なかったわ。私もロイに-----」
ヒミカさん、最後聞き取れなかったんですが。
「おい二人とも、今何を想像しているんだ?俺とウィルに何をさせるつもりなんだ!」
なんか、話がお仕置きの方向になっているよ。
「ゴホン!---とにかく驚いたわ。まさか、邪神が既に討伐されていたなんて。これは快挙ね。ただ、全ての元凶が邪神と思っていたけど、別の存在がいるわけか。」
リフィアさんは、話を変えてくれてありがとうございます。
「リフィアさん、歴史について詳しく聞いてもいいですか?私も、邪神が何者か、1000年前以降の歴史を何も知らないんです。」
「そうね、このメンバーなら話しても問題ないわね。といっても、これはエルフの国で伝わっている伝承で、資料はないのよ。先祖代々、伝えられている口伝という奴ね。」
私達は、その口伝の内容を聞いた。
1)はるか遠い昔、スフィアタリアは今以上に栄えていた。断片的に残っている言葉として、飛行船・銃・魔石列車など、聞いた限りだと、少なくとも元の世界でいう1900年代前半の文明を持っていたのね。
2)その文明も長くは続かなかった。邪神が到来し、世界レベルでの戦争が勃発した。世界の半分が邪神の手に落ちた時、女神スフィアが現れた。熾烈な戦いの末、邪神を別空間へ封印する事に成功した。
3)しかし、邪神は誰にも気づかれないように、世界に卵を残した。
4)その卵こそが邪王であり、1000年前に羽化したことで、邪王との因縁の戦いが始まった。
5)現在、エルフが精霊と協力して、邪王の完全なる消滅方法を考えているが、まだ構想の段階にも至っていない。
「そして、邪神を目覚めさせるな。破った場合、世界が滅びるだろうと伝えられているわ。」
そんな歴史があったんだ。それにしても、口伝で1000年以上も伝えていくとは、エルフ凄いな。
「その邪神をサーシャが討伐したというわけか。それなら邪神が何者か、邪王の消滅方法を知っているんじゃないか?」
「ウィルさん、すいません。それに関しては、私もわからないんです。邪神を喰べる時、悪意と感じるものは全て力に変えてしまったんで、多分邪神の記憶の一部が悪意と判断されたんだと思います。」
「そう、それは残念ね。かなり期待したんだけど。」
「リフィアさん、邪神の正体が何者かはわかりませんが、邪王がどういった方法で毎回蘇ってくるのか、おおよそ見当がつきます。ウィルさんも、なんとなくわかっているんじゃないですか?」
「なんですって!ウィル、どうなの、今すぐ吐きなさい!」
ああ、リフィアさんがウィルさんを羽交い締めにしている。
「ちょっとリフィアさん、苦しい!ギブギブ、言いますから話して下さい。」
リフィアさんも我に帰り、急いで話した。
「ごめんなさい。エルフの国では、邪王関連のものは懸賞金が出ているぐらい、研究熱心なのよ。」
ウィルさん、言っちゃって下さい。
「サーシャ、俺に言わせる気満々かよ。まあいいけど、多分、前世の世界で言うところの【輪廻転生】を応用したんだろう。」
「輪廻転生?ウィル、それはどういう意味なの?」
さすがに、この世界には伝わっていないか。
「輪廻転生、生物は死ぬと魂となって、また別の生物へと生まれ変わる。生まれ変わる際、前に死んだ時の記憶や強さは全て消去される。邪王の場合は、強さや記憶を保ったまま、新たな邪族に転生しているんだろう。そうだろ、サーシャ。」
さすが、転生者、その通りです。リフィアさんもしばらく考え込んだ後、急に納得した顔になった。
「それしか考えられないわ。私も資料を調べた事があるからわかるわ。邪王は、時には子供、時には大型の怪物と毎回毎回姿が異なるのよ。でも、それならどうやって完全に消滅させるの?方法はあるの?」
「あります。邪神はこの輪廻転生システムをスフィアタリアのシステムに組み込んだものと思われます。つまり、邪王を完全に消滅させるには、スフィアタリアのシステムの中にある邪王用の輪廻転生システムだけを排除すればいいんです。」
「あのお姉様、理屈はわかるのですが、スフィアタリアのシステム自体はどこにあるのですか?」
「スフィアタリアを管理する世界に行くしかないわ。そして、そこには女神サリアがいる。私も一度行っているんだけど、半分気絶していて、その世界の事を殆ど覚えてないのよ。でも、召喚者達なら何か知っているかもしれない。勇者と聖女に聞いてみるのが一番ね。」
その時、バーンさんが笑い出した。
「こいつはいい。勇者と聖女か、何か運命を感じるな。リフィアもそう思うだろ。」
「ええ、そうね。実は、指名依頼が入ってね。勇者達一行が邪王再封印の旅に出発したそうなの。始めの目的地がシルフィーユ国の王都で、大森林を抜けるルートで行くみたいね。依頼内容は、気づかれないように護衛すること。」
へー、大森林を抜けるルートか。最短距離ではあるけど、かなり危険ね。
「依頼内容を考えた奴は馬鹿なんじゃないのか?大方、勇者達を見張って、危険がないようにして欲しいんだろうが、それじゃあ成長しないだろうが!大森林を冒険中、偶然出会い、そこから一緒にシルフィーユの王都に行けばいいじゃねえか。」
うーん、まさにその通りです。
「まあ、バーンの言う通りね。準備は出来ているから、サーシャとの話が終わり次第出発する予定だったの。サーシャと話せて良かったわ。邪王の事で有力な情報を手に入れたしね。」
「サーシャ、俺達はこれから勇者達と会い、その管理者の空間に行ける方法を探し出すつもりだ。お前達は、当初の予定通り、女神スフィアのメッセージを探せばいい。場合によっては、管理者の空間に行ける方法を教えてくれるかもしれんからな。」
バーンさんは、さすが的確な指示を出すね。
「ええ、そうします。ただ、気を付けて下さい。女神サリアが何か仕掛けてくる可能性がありますし、他にも黒幕がいるかもしれません。一番注意すべきはカプリースボックスですね。あの箱がある部屋のみ、女神サリアもこの世界に介入出来るみたいなんです。」
「その女神サリア、何者かしら?私達エルフの伝承にも、出てきていないわね。バーン、カプリースボックスには迂闊に近づかないようにね。」
ここで、ウィルさんが話しかけてきた。
「俺達にも協力させて欲しい。放っておいたら、スフィアタリアが滅びるかもしれないからね。ロイ、ミア、ヒミカもいいよね?」
3人とも了承してくれた。
「ウィル、それなら私達は、魔国の魔王様に会いに行こうよ。ウィルの友達でもあるし、きっと力になってくれるよ。」
ミアさん、それ本当ですか!友達が魔王というのも凄いな。
「ああ、そうだな。魔国レグナント王国の王都には魔法や邪法関係の資料が沢山あるし、管理者の世界についても何かわかるかもしれない。」
バーンさんやウィルさん達は、本当に良い人達だ。感謝します。
「皆さん、ご協力に感謝します。現時点で、黒幕が何者か殆どわかっていないので、注意して行動して下さいね。」
「いや、サーシャ、一番注意して行動すべきは君だよ。ここまでで結構目立ってるからね。周りが、なんとかフォローしてくれてるから大丈夫だけど。次に訪問する国では、自分から目立った行動はとらない方がいい。」
ウィルさん、良いツッコミをありがとうございます。
「はい、気を付けます。」
こうして、私達の今後の方針が決まった。
バーンさん、リフィアさん → 勇者達と合流し、シルフィーユ王国王都へ
ウィルさん、ロイさん、ミアさん、ヒミカさん → 魔国レグナント王国へ
私、フィン、アイリス → 女神スフィアのメッセージ探し
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