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フィンとアイリスの成長

ここからサーシャ視点に戻ります。戦争が終結してから、3日後からのスタートとなります。


○○○


戦争が終結してから3日、スフィアートの雰囲気がやっと日常に戻った。朝、窓を開けると、静かで清々しかった。この2日は大変だった。戦争が終結した夜から、違う意味での戦争が始まったのだ。そう、祭りだ。私が考案した料理をここでも教えることとなり、試食時は大変だった。定食屋の人達や屋台の人達に多くの料理を教えた事で、なんとか役目を終えた。スフィアートの子供や大人達が元気すぎる。


そして、現在、今いる場所は宿屋ではなく、大聖堂のアイリスの部屋でフィンと3人で寝泊まりしている。聖女の部屋だけあって、広いし居心地が良い。3人でも問題ない。さて、まず私達が確認しないといけないのは、自分達のステータスだ。


「戦後の宴も終わって、やっと落ち着いたわね。フィン、アイリス、2人は現在のステータスを確認したかしら。」


「あ、忘れていました。師匠、今確認してみます。」

「そうでした。私も忘れていました。確認しますね。」


多分、フィンは邪族と戦って、大幅に数値が上がっているでしょうね。アイリスは、フィン程ではないにしろ、数値は上がっているでしょう。ああ、でも魔力の扱いに関しては、『オールアビリティ・セカンド』の件もあるから、かなり上がっているかもしれない。私の場合、昨日確認してみたら、レベルが6から38になっていて、基礎能力値が5500万前後になっていた。Sクラスを6体討伐したのが原因なのはわかるけど、なんか上がり方おかしくない?システムにエラーが起こったのかな?


「ふぇ〜〜〜〜、師匠、なんか基礎能力値が2500前後になってます。こんな短期間でここまで上がるなんて!」


「あのお姉様、私も凄く上がっているんですが、魔力は4000超えました。」


やっぱりね。ここにきて、加護と聖女の補正が効いてきたか。


「まあ、そうなるでしょうね。まずレベルが上がると全体的に数値が上がる。フィンとアイリスの場合、神獣の加護と聖女の補正が効いてきたんでしょう。」


「師匠、今まで神獣の加護が、あまり機能していなかったということですか?どうして?」


「フィンの場合は単に不器用が原因で、スキルレベルが低すぎたせいでしょう。神獣に、加護があるのに全く修行をしていないと思われたんじゃないかしら?私と出会って以降、効率良くスキルも上がっていったから、加護の補正が最大限に働いたんだと思うわ。」


「はう!不器用なせいですか。あはは。加護を無駄にしていたんですね。」


「そんなガックリしないの。今回の戦争で、今までの分を取り戻したんだから、これから頑張れば、Sクラスまで登り詰めることが出来るわ。」


「そ、そうですよね!これから頑張ります!」


「お姉様、私の場合は、どうして急激に上がったんですか?」


アイリスは、フィンと違うのよね。


「うーん、アイリスは小さい時から修行していたから、ある程度は聖女の補正が効いていたと思う。でも、10歳にも満たない身体で、聖女の補正が最大限働いていたら、アイリス自身の性格が歪む可能性が非常に高い。仮に8歳で魔力の数値が8000もあったら、私が一番強いと錯覚して、人を見下す性格になっていたかもしれない。そういう事も考慮して、恐らく10歳辺りから少しずつ聖女の補正が効いてきたんでしょう。そして、今のあなたなら大丈夫と判断されて、聖女の補正が最大限効いてきたんでしょうね。」


「お姉様、フィン姉の場合は神獣様が見守っているとしたら、私も誰かに見守られているんですか?」


アイリスは、やっぱり賢いわね。


「多分、昔は女神スフィアが見守っていたんでしょう。」

「昔?今は誰ですか?」

「私よ。こう見えても邪神ですからね。もちろん、フィンも見守っているわよ。」


「え〜〜、お姉様!感激です。ありがとうございます!あれ、邪神に見守られているのは良いのかな?」


「ふぇ〜〜!師匠、ありがとうございます。」


私の場合、加護とかはないけどね。邪神の加護なんかあったらダメでしょう。


《コンコン》


ドアのノックが聞こえた。アイリスが返事をし、使用人が入ってきた。


「アイリス様、サーシャ様、フィン様、エレノア様がお呼びです。お部屋まで来るようにと仰っていました。」


「はい、わかりました。今から伺いますね。」


エレノア様からの用事か、なんだろう?これからのことかな。


私達は、急ぎエレノア様の部屋へ向かった。エレノア様の部屋に入ると、マウロ司祭とクリンカ大司教もいた。


「サーシャ、お祭りの時、新作料理を教えてくれたそうですね。私も食べましたよ。特に唐揚げが良いですね。すぐに、スフィアート全体に広まるでしょう。今回、呼んだのは、あなたの名前です。」


名前?


「何か問題でもあるんですか?」


「これから旅を続けていく上で、非常に重要なのです。あなたの氏名を正式に決めないといけません。サーシャだけだと、名前の一部を奪われた犯罪者奴隷と思われる可能性もあるんです。」


嘘!それはまずい。うーん、サーシャ・?と付けないといけないんだ。


「それは困りますね。うーん、急に思い浮かばないんですが。」


「それなら大丈夫ですよ。私が名前を付けてあげます。というか、もう考えています。アイリスもお姉様と呼んでいるのだから、サーシャ・フォーリングはどうですか?正式にアイリスの姉になれば良いんです。」


アイリスを見ると、目を輝かせて私の返答を待っている。


「私は非常に嬉しいんですが、アイリスはいいの?」

「もちろんです、お姉様!これで、本当のお姉様です。ふふ」


「なら決まりですね。あなたは、今からサーシャ・フォーリングと名乗りなさい。」

「はい、わかりました。」

「やった〜!」


あ、それならフィンとアイリスの偽名にも、きちんとした姓をつけないと。


「フィン、アイリス、貴方達の偽装時の偽名にも姓を付けておかないと誤解されるわ。」

「「あ、忘れてました。」」


話し合った結果、


フィンは、フィン・コルダ

アイリスは、イリス・パレット


となった。姓の由来は、【特に意味はない】。ただただ適当だ。



「さて、サーシャよ。スフィアートも、これで落ち着いた。お主はこれからどうするつもりじゃ?」


そう、マウロ司祭の言う通り、今後の行き先が問題ね。実は、もう決めてある。


「フィンをレーデンブルクまで送らないといけませんし、遺跡探索もありますから、次の目的地はカルディア帝国の王都ですね。ただ、その前に遺跡探索をもっと効率良くしたいと思っています。」


「効率良くですか?」


「はい、世界各国にあるダンジョン化している遺跡は、かなり多いです。全てを最下層まで探索するのは効率が悪すぎます。私の理想としては、女神スフィアの痕跡を拾える魔導具を開発し、反応がある遺跡を探索したいと思っています。」


「そんな魔導具、開発可能なんですか?」

「幾ら何でも無理じゃろ。クリンカはどう思う?」

「普通に考えたら不可能だろうな。」



「ふふ、みんな難しく考えすぎです。魔法は確かにイメージが大事ですけど、用途次第では簡単に出来るのもあるんです。そうですね、手始めに、ここで目的の魔導具を作りましょうか?多分、30分程で出来ますよ。」


「え、今からですか?サーシャ、そんな短時間で出来るんですか?」


「はい、必要なのは、丈夫な細長い紐と世界地図ですね。全世界が載っている地図と各国の地図あれば、とりあえず機能するはずです。」


全員、驚いているわね。たったそれだけで、魔導具が出来るのか疑心暗鬼になっている。とりあえず、使用人の人達が用意してくれている間に、地底湖の女神像にあった宝石と同じタイプのものが付いている魔導具をアイテムボックスから取り出した。昨日創った魔導具をエレノア様達に渡しておこう。戦争前に地底湖と同じ宝石を街中で探したけどなかったんだよね。だから、戦争が終わった後、エレノア様にお願いして、この宝石を報酬としてもらった。早速調べて見ると、予想通りのことが起こった。これで、あの魔法を付加させれば、あれが出来る。


「師匠、その宝石と魔導具は何に使うんですか?」

「この宝石はムーンストーンと呼ばれていて、この世界では結構貴重な物らしいわ。」


「サーシャ、今回の戦争の報酬はその宝石だけで良いんですか?確かに貴重な物ですが、あなたが果たしてくれた対価と釣り合わないですよ。」


「エレノア様、今の私にとって、この宝石は凄く大事なものなんです。なぜなら、このムーンストーンに空間魔法『マジックバッグ』と『アイテムボックス』を付与出来ることがわかったからです。」


「「なんだと」」「なんですって」


え、そこまで驚くことかな?


「サーシャ、本当なの?」


「はい、そうだ、これ、エレノア様、マウロ司祭、クリンカ大司教用に創っておいた魔導具の指輪です。空間魔法『アイテムボックス』が付与されています。」


「なんじゃと〜、この指輪に空間魔法『アイテムボックス』が付与されているのか!」

「サーシャ、お前は---」


クリンカ大司教が口をパクパクさせている。面白いな。


「----サーシャ、あなたが開発した魔導具の指輪、これも世界最大難問とされているものよ。」


え、初耳なんですけど!あれ、この展開は、まさか!


「あのお姉様、空間魔法の使い手は回復魔法と同じくらい少ないんです。その使い手の中でも大量のアイテムを保管できる『マジックバッグ』を修得している人は数多くいますが、同じ機能で時間の概念がない『アイテムボックス』を修得している人は殆どいません。また、働いている人達にとっては全員が修得したいと思っているものなんです。各国の研究者も空間魔法の使い手を招集して研究を進めていますが、空間魔法の『マジックバッグ』や『アイテムボックス』を付与した魔導具に関しては、全く進展がありません。」


「嘘!ミスリルやオリハルコンとかに『アイテムボックス』を付与した魔導具があると思っていたわ。私は、ただフィンとアイリス用の魔導具を買うお金を節約したいと思って、ムーンストーンをもらって自分で創ろうと思っただけなんだけど。」


ああ、私は、またとんでもない物を創ってしまったのね。


「---たまに、師匠が天才なのか馬鹿なのか、わからない時があります。」


あ、フィンの言葉に全員が頷いたよ。


「この魔導具の開発者はサーシャにしておきますね。」

「え、エレノア様!」


「1つくらい大きな実績があった方が良いでしょう。Sクラス冒険者なんですからね!」

「---あ、はい、わかりました。」


なんか逆らえる雰囲気じゃなかった。


結局、この日、当初の目的であった魔導具作成は中止になった。お昼、エレノア様がこの大発見を公表し、今回戦争に関与してくれた各パーティーに報酬として、お金を受け取るか、もしくは空間魔法『アイテムボックス』を付与した魔導具(各パーティーに1つのみ)を受け取るか、どちらかを選び紙に書いてギルド受付に提出して欲しいと言ったところ、冒険者全員が魔導具を選んだせいで、私が作る羽目になってしまった。でも、また邪族が大量に現れる可能性もある。その時、私やアイリス、バーンさんやウィルさん達が必ずいるとは限らないし、駆けつけれない可能性もある。その時は、あなた達だけでスフィアートを守らなければならない。来るべき邪族との戦争のために必要と思って作ってあげますか!


桜木君や美香がいたら、「報酬はきちんと貰え」とか「お人好しすぎる」とか「利用されるぞ」とか言って怒るだろうな。


まあ、私自身、利用される気は毛頭ない。もし、今後スフィア教が私利私欲のために私を利用としてきたら、まあどうなるかはエレノア様達も理解しているか。

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