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訓練と模擬戦

訓練が始まって、2週間が過ぎた。みんな、自分の能力値・スキル・魔法が世界に馴染み始めたのか、どんどん扱い慣れている。そんな横で、私は未だに魔法の基礎訓練、初歩中の初歩、魔力循環と魔力操作に勤しんでいる。そう、なぜか出来るのだ。しかし、スキルは未だに何も覚えていない。おかしい、実際出来ているのに、なぜステータスに表示されないの?


その魔法関係は、当然何も覚えていない。基本属性として、火、水、地、風、光、闇、空間、と計7属性ある。さらに、その上には上位属性というものがあり、これまでにわかっているのは、炎、氷、震、雷、嵐、聖の6属性だ。そして、スキルと魔法にはそれぞれレベルが存在し、MAXは10だ。個人差はあるが、このレベルがある一定値を超えると上位スキルと上位属性を覚える。



みんなは、今、基本属性に集中して、魔法の扱い方を勉強しているところだ。ちなみに、私は王様に許可をもらい、現状わかっている魔法の全てが載っている文献を読んで、知識を付けさせてもらった。


武術関係は、剣や短剣に絞って修行しているものの、魔力循環や魔力操作同様、こちらもスキルは覚えていない。剣や短剣も初心者を脱したと騎士団長マーカスさんが言ってくれたのに---だ。なぜスキルを覚えないのか、皆、首を傾げている。


そして、この2週間の間に、異世界スフィアタリアについても学んだ。種族は大きく分けて人間・獣人・ドワーフ・エルフ・魔族と5つある。私達の世界では、魔族は人間の姿に似た悪人だけど、こちらの異世界では、姿は人間に似ており、体力が低い代わりに魔力と知力が非常に高く、穏やかな人達らしい。


そして、魔族が神聖視されてる理由は主に2つある。



1つ目


当初、邪王は定期的(およそ50年周期)に現れ、その都度討伐されていたらしい。この邪王が定期的にどうして発生するのかを調べ、その原因を解明した。戦争で生じる怨念が集まり、そこから邪族(私達の世界で言う魔物)が生まれ、あらゆる種族を殺していき、得られた怨念を同じ場所に集める。ある一定量を超えると、邪王が発生することを突き止めた。ただし、邪族や邪王は、毎回同じ場所で生まれるとは限らないそうだ。


2つ目


今から500年前、邪王がまたも現れた。ただし、前回に比べ、遥かに強くなっていた。原因は、前回討伐されてから200年という歳月をかけて、力を蓄積していたためだ。生まれてくる邪族も強くなっており、邪法というものを身に付けていた。各種族も、このままでは滅亡すると思い、一致団結して戦いに望んだが、それでも状況は厳しかった。


そこで、魔族は邪族の邪法を研究し、邪族には使えない新たな技術、魔法を開発した。今迄、スキル一辺倒だった種族達は、これには喜んだ。魔族から魔法を学び、全員が強くなっていった。神からのお告げもあって、異世界からの召喚者と聖剣を携えて、邪王の初封印に成功した。



こう聞くと、魔族が神聖視されているのがわかる。魔族が創ったから魔法ということか。あの時、王を含めた全員が怒っていた。その怒りは尋常じゃなかった。この歴史を聞いて、クラス全員が納得した。その時、授業の担当だったガロットさんに、私達の世界での魔族、魔王や魔法について教えてあげた。ついでだから、この3 つの漢字も教えたら、


「どうして、同じ字を使うんだ?」


「これでは、邪悪な魔王が魔法を創りだしたように見える。神が創りだしたのなら、別の字を使うべきだ、何故だ?」


その疑問を私を含め、誰も答えることが出来なかった。昔からそう決められてたから、誰も疑問に思わなかった。神、この場合、ゲームクリエイターだけど、なんでこう名付けたんだろう?



また授業中、私も疑問に思った事があったので質問した。


「ガロットさん、邪王が聖剣と4大精霊の力で封印されているのはわかりましたが、邪族はこの世界全体に未だ蔓延っているんですよね。だったら邪族によって殺された人達の怨念はどうなるんですか。邪王に取り込まれるんですか?」


「茜、いい質問だ。聖剣と4大精霊の封印は二重にされている。内側が邪王の封印、外側が怨念を浄化する聖属性のグラッジピュリファインが組み込まれている。怨念が邪王に取り込まれないよう、きちんと考えられている。ただし、それでも封印は完全ではない。術式は完璧だが、100年おきに弱まっている。なぜなら、戦争が起こるからだ。国家間や種族間の戦争は怨念が発生しやすい。怨念が頻発するせいで浄化システムに不具合が発生してしまう。その期間がおよそ100年なのだ」


「せっかく、封印しても忘れた頃に戦争をしてしまうんですね」


「ああ、その通りだ。頭が痛いよ。ただ、ここ100年、大きな戦争は起こっていない。前回召喚された勇者様方の取り計らいで、国家間で平和条約が締結された」


「え、それじゃあなんで?」


「今回、君達にお願いするのは再封印とその原因だ。勿論、私達も全力でサポートする。今、世界各国で調べているのだが、皆目見当つかないのが現状だ」


とまあ、この2週間で、自分達が何を為すべきなのかが大まかにわかった。ただ、私に関して言えば、戦闘面では論外だ。全く役に立てないため、知識面で何とかみんなをサポートしようと思っている。クラスメートの大半はそれで納得してくれたけど、中には私を役立たずと蔑み、どういう訳か追い出そうとする連中もいる。ここ最近、金子組の連中が悪い意味で絡んでくるようになった。ほら言ったそばから、こっちに来てるし、仕方ない、相手しておこう。


「役立たず、捗ってるかな?未だに魔力循環や魔法操作やってるんでしょ。あきらめな、スキルで無能がある以上、覚えるのは不可能だからさ」


金子さんの取り巻き4人組も笑い出した。露骨に役立たずと言うかね。この5人、性格悪すぎ。というか、金子さん以外の4人の名前も忘れた、覚えたくもない。


「そりゃ、みんなと比べると全然だけど、少しずつ出来てるみたい。剣や短剣は、初心者から1歩脱出したと言ってたわ」


それを聞いて、ますます笑い出した。


「笑わせないでよ、お腹痛い。じゃあ、なんでスキルに何も付いてないのよ。そう思い込んでるだけだって、いい加減あきらめて、城から出て行った方がいいわ。桜木君達の邪魔になるから。ちょうど、今日は初めてのダンジョンに行ってるみたいだしね」


それにしても、いちいちスキル「人物鑑定」を使わないで欲しい。鑑定には「人物鑑定」と「物品鑑定」の2種類があるらしく、金子さんは人物鑑定を持っている。


私達は自分を除き24人いるから3グループに分けて、今日からダンジョンに行っている。桜木君と美香は、今日の第1グループに入っている。


「城には当分いるわ。王様や姫様から許可を貰ってるしね。それに今出て行ったら、ダンジョンに行っている皆んなが余計気にするわよ」


うわ、こいつら、これ見よがしに口で「チッ」て言ったわ。そこまでして、私を嫌うか。


「ぶっちゃけさー、あんた本当にお荷物なのよ。わかってるの?これから邪族と戦うにしても、ここで戦闘が起きでもしたら、桜木君の邪魔になるわ。あんたが人質に取られたら、桜木君は誰にでも優しいから手を緩めて殺される可能性もあるのよ。早い話、ここにいた方が危ないのよ」


人が気にしている事をはっきり言ってくれるわね。


「そうならないためにも、今、訓練しているのよ」


「は、訓練!じゃあ、私が見てあげるわ。どのぐらい強くなっているかをね」


やっぱり、こうなるのか。多分、そろそろ仕掛けてくる頃合だと思ってたわ。確実に負けるだろうけど、試したい事もあるし利用させてもらおう。


「わかったわ。2週間で、どこまで強くなれてるか見てもらおうじゃない。ただ、これで私が負けて、ここを出て行くというのはなしだからね」


「は、何言ってるのよ。あんたが出て行くに決まってるでしょ」


「あのね、冷静に考えて。私はあなた達のように女神様から全く補正を受けてないの。この世界の一般人となんら変わらないのよ。2週間やそこらで、あなた達に勝てるわけないでしょう」


「ち、まあいいわ。訓練場に行くわよ」


だから、この5人と話すのは嫌なのよ。



----そして、今私は金子さんと向かい合っている。話を聞きつけて、王様・姫様・ガロットさん・マーカスさんなど、多くの兵士さんが見に来てる。気にしないようにしよう。


さて、どうやって戦おうか。


金子さんのクラスは、ハンター、軽い魔法も使える戦士てところか。素早さもあるし、まともにやりあっても勝ち目はない。早速、試してみよう。魔力を限界まで研ぎ澄まし循環させ、一部を目に集中する。相手の魔力の波動、姿勢、筋肉の動きがわかるようになるまで集中だ。よし!次は、魔力で身体全体を覆い、身体全体に行き渡るように研ぎ澄ませる。手・足ともに全て動く。木剣にも魔力を込めて、攻撃力を底上げする。


試合の審判を務めるのは、騎士団長のマーカスさんだ。


「試合、始め!」


「どうせ、碌なスピードもないでしょうから一瞬で終わらせてあげるわ。行くわよ!」


速い、突進してきた、わかりやすい攻撃だ。なら、私は怯んでいると見せかけて、ぶつかる直前、剣を避け、金子さんの腹の位置に魔力を全集中させた木剣で思いっきり突いた。


「が、え、う、嘘でしょ。どこに、こんな力が、スキルはないはず。なんで?」


やはり、金子さんは馬鹿だ。自分がどうして攻撃を食らったのか理解していない。たとえスキルがなくとも、攻撃は出来る。追撃出来るかな?


「く、当たらないわよ、そんな遅い攻撃!」


やっぱり無理か。出来れば、あの一撃で終わって欲しかったな。この2週間で、いくらか魔力は上がったけど、所詮は付け焼き刃。補正を受けてる金子さんには遠く及ぼない。でも思った通り、魔力を手や目に集中させる事で、全能力を一時的に上げられたけど、それでも気絶は無理か。限界が近い。始まって1分も経ってないのに。


げ、魔法を使う気だ。この波動は土魔法のストームパレットか。そこまでするか!本当に容赦ないわね。こっちは魔法使えないのに。


「む、いかん!望、今すぐ、その魔法を解除しなさい」


マーカスさんが魔法を唱えようとしてるけど、初動が遅い。おそらく、金子さんが私相手に魔法を使うとは思わなかったんだろう。


「あんたみたいな役立たずが、調子に乗るんじゃないわよ。これを喰らって死ね、ストームパレット」


私めがけて、容赦なく石の弾丸が発射され私に直撃した。


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