間章-第1章- 手紙の対応
ここから勇者側の話を全7話の予定で投稿します。
スフィアートの戦争から時は少し遡り、サーシャがDランクダンジョンを脱出した直後からの召喚者達のお話です。
○○○ 茜の親友 島崎美香 視点
桜木と私2人だけマーカスさんに呼び出された。なんらかの成果があったのか、それとも発見には至らずか、なんか緊張してきたな。桜木がドアをノックし、部屋に入った。
マーカスさんは難しい顔をしていた。机に置いてある手紙を私達に渡した。
手紙を読んだ時、始めは茜が生きているとわかって、本当に嬉しかった。でも、桜木君が読み進めていくと、だんだんと彼の手が震えてきた。どうしたのかと思い、私も続きを読んで愕然とした。嘘でしょ、外見は変化していないけど、種族が人間から邪族に変化して、もう王都にいない!
「そんな、もう王都にいない!外見が同じなら、なんで会いに来てくれないのよ!」
「美香、それは無理だ。茜が邪族になったと聞いた時、王と姫の説得により周りの連中をなんとか静かにさせたが、王宮の中には家族を邪族に殺された者もいる。もし、邪族となった茜がここに来ていたら、遠からず暗殺されていただろう。」
それを聞いて愕然とした。
「そんな、マーカスさん、いくらなんでも暗殺はないでしょう!外見は同じで、種族が人間から邪族に変わっただけなんですよ。それだけで暗殺なんて----」
「邪族に変化した以上、疑心暗鬼になる者もいるはずだ。今は大丈夫でも、もし凶暴になったら取り返しのつかない事になりかねない。結果、暗殺という方法がとられる。茜は最良な方法を選んだのだ。」
もう、茜に会えないのかな?そんなの嫌だよ。
「桜木からも何か言ってやってよ。なんで、さっきから黙ってるの?」
私とマーカスさんが話している時、桜木は微動だにしなかった。あなた、茜の事、好きなんでしょう!なんか言いなさいよ!
「島崎、マーカスさんが言っていることは正しい。もし清水さんが俺達に会いに来ていたら、クラスメイトの大半は喜ぶだろうが、王宮の人達から見れば複雑な思いにかられるだろう。暗殺は妥当な線だ。俺は、内心ホッとしているよ。多分、今頃、どこかの村にでも目指しているんじゃないかな?」
桜木、なんで----、ふと拳を見るときつく握りしめていた。そうか、勇者だから----か。
「春人の言う通りだ。この周辺の街だと、鑑定持ちの冒険者もいるから、恐らく村を目指しているだろう。捜索中に発見したこの手紙についてだが、騎士団員たちには上手く誤魔化しておいたから安心してくれていい。王とガロットにはもう報告済だ。茜について、クラスメイト達や他の王宮の者達にどう説明するかは、君達の判断に任せるそうだ。」
私達が決めていいの?信じてくれているのかな?それとも試されているのかな?
「簡単ですよ。俺が清水さんを討伐した事にすれば良い。」
「ちょっと、桜木、何言ってるのよ!」
こいつ、なんてこと言い出すのよ。
でも、王宮のみんなを納得させるには、それしかない-----か。
「明日にでも、俺とマーカスさん、島崎の3人でダンジョンに行けばいい。そこで隠し部屋にいた清水を追い詰めて、討伐という形にすれば、王宮の人達もクラスメイト達も全員納得するはずだ。もちろん、俺達3人、演技しないといけないけどね。」
「その方法しかない------か。わかった、桜木、協力するよ!」
「私も協力しよう。だが、気を付けないといけないのは、実際に茜と遭遇した時だ。彼女が人間としての自我を保ち、邪族の敵として私達と協力してくれれば良いが、もし自我を失くし、人間に牙を向くようであれば------」
「その時は、俺がこの手で討伐します!」
「わかった、その時は任せよう。では、王とガロットに、お前達の判断を報告してくる。君達も、訓練に戻りなさい。」
「「わかりました。」」
明日、私達にとって悲しい報告をしないといけないか。みんなを騙すことになるから、ちょっと憂鬱な気分になるな。
「島崎、付き合わせちまって悪いな。」
「良いよ。これが現時点で最良の選択だしね。」
「明日、多分、竜崎は俺をぶん殴るだろうな。」
「そうだね。あいつ、ああ見えて結構な仲間思いな奴だからね。」
「俺は、これから邪心薬について、1人で調べていく。多分、王宮には資料がなかったから精霊に聞くつもりだ。どうせ邪王封印のため、近いうちに会いに行く予定だしな。あとはスフィアートのエレノア様が何か知っているかもしれない。」
「そうするしかないか。参加メンバーは少数精鋭で行くと言っていたよね。桜木と私は決定だとして、あとは誰になるかだね。」
「選ばれなかったメンバーは、基本自由行動らしいな。みんな、冒険者登録をして邪族達を討伐していく予定らしい。」
茜と遭遇しないことを祈っておこう。
○○○
翌日、私と桜木は、Dランクダンジョンで茜を発見し、討伐いえ殺したことをクラスメイト達に報告した。そして、目の前で桜木が竜崎に殴られた。
「おい、桜木、なんで清水を殺した。人間に戻すんじゃなかったのか。」
桜木君は答えない。
「黙ってないで、なんとか言え!」
「-----俺だって、殺したくなかった。だが、見ていられなかった。わかるか、目の前で清水の姿が、俺の好きな奴が少しずつ怪物へと変わっていくんだよ。しかも、あいつは少し自我が残っていた。」
ここで告白したよ。凄い説得力だ。
ここで私もフォローしておこう。
「女の子ならわかるでしょ。自我があって、少しずつ自分自身が醜くなっていくんだよ。私なら耐えられないよ。桜木は、殆ど怪物になってしまった茜を斬ろうと決めていたけど、最後の最後でためらった。でも茜は、自分から聖剣に刺さりに行ったの。」
クラスメイト全員が息を飲んでいる。その時の状況を想像しているんだろう。
「清水が俺に言ったんだよ。せめて、完全な怪物になる前に俺の手で殺してくれとな。俺は、その瞬間、クラスメイトを自分の好きな女の子をこの手で殺す覚悟を決めた。そして、------殺した。人殺しと言ってくれても構わん。俺は、この手で殺したんだからな。聖剣で斬られた清水は、最後にありがとうと言って消えたよ。」
クラスメイト全員が泣いている。竜崎君も、事情を知って泣いていた。
「桜木、すまん。」
「竜崎、俺は強くなる。もうこんな悲しい犠牲は沢山だ。強くなって、邪王を必ず再封印して、女神に会いに行く。清水を犠牲にする必要があったのか問いただしてやる。返答次第では、殺す!」
この時になって初めて、クラスが一つにまとまった気がする。
クラスメイトへの報告が終わった後、桜木は自分の部屋に戻っていった。心なしか身体が震えていた気がする。私も今は自分の部屋にいる。それにしても、桜木の演技は凄かった。本当に茜を殺したんだと、私も錯覚したくらいだ。迫真の演技だった。みんな、桜木が茜を殺したと完全に信じていたわ。告白したのが大きかったわね。やる時はやるんだね。あの後、誰も文句を言わなくなり、強くなろうという思いが一つになった。桜木の部屋に行ってみよう。ちょっと、気になる。
《コンコン》
「桜木、島崎だけど入っていい?」
「ああ、入っていいよ。」
桜木は、ベッドの上で暴れていた。
「---------一応聞くけど、何やってるの?」
「はは、クラスメイト全員の前で告白しちまった。最悪だー。成り行きとはいえ、あんな恥ずかしい告白をするとは〜〜〜。」
あー、あれね。
「見事だったよ。皆んな、あの告白で騙されたと思うよ。まるで、どこかの映画かアニメを思い出すわ。」
「やめてくれ〜!自分でもわかってるから!」
「前もって、サイレントの魔道具を借りてきてよかったわね。なかったら、今の叫びでばれてたわよ。」
演技だとはいえ、あんな真剣な表情で告白だもんね〜。私だって、そうなるかもしれない。桜木がベッドから起き上がって話し出した。
「ああ、魔導具があって助かった。とりあえず、これでみんなは信じただろう。ただ、最後の方は、演技じゃない。女神にもう一度と会いに行ってやる。」
そう、問題はその女神だ。
「ねえ、問題はその女神よ。私達が会った女神は、スフィアと言っていた。顔も物腰も本当に女神という感じだった。茜が会った女神はサリアと言っていたわ。竜崎も言っていたけど、ダンジョンで聞いた声は完全に別人だと断言していた。女神が1人じゃないのは確かよ。」
「ああ、そうだな。俺達の知らない所で、何かが動いているのは間違いない。まずは、精霊に会うことが先決だ。今、焦っても仕方がないからな。」
おー、なんか大人の考え方だ。
「そうだね、火・水・土・風の精霊達に会いに行かないとね。」
「そのことなんだが、精霊はそれ以外にも光と闇がいたはずだ。どういう訳か邪王封印に協力していない。資料にも載っていないから、理由も精霊達に聞いておかないとな。」
「あ、そうだったね。私達は、この異世界のことをもっと深く知っていかないといけないね。」
桜木は、右拳を握りしめ言った。
「そうだな。邪王を討伐出来るくらいもっと強く、そしてもっと深く異世界のことを知っていかないとな。」
確かに、これから私達はAクラスやSクラスの邪族達と渡り合えるくらい、もっともっと強くならなくちゃいけない。クラスメイトとも思いが1つになった事だし、頑張っていきましょう。
茜、待っててね。必ず、人間に戻してあげるからね。
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