アイリス自信喪失?
いよいよ、切り札を話す時がきた。アイリスを見て、お互い頷き、アイリスが話し出した。
「皆さん。これから最も重要な事をお話しします。対邪族戦の切り札についてです。」
ここで、バーンさんから質問がきた。
「ちょっと待ってくれ。これまでの『魔力纏い』や俺の炎の完成形も充分切り札に値すると思うが、それ以上なのか?」
「はい、この魔法は正真正銘の冒険者全員の切り札となります。お姉様曰く、攻めてくる事がわかっている以上、打てる手は全て打つべきだそうです。」
お姉様と聞いた瞬間、全員一斉にこちらを見た。誰かわかっているんですね。
「すまない、説明を続けてくれ。」
「はい、魔法名は『オールアビリティ・セカンド』、現状の基礎能力値全てを2倍にする力を持っています。」
ここで、冒険者全員が騒ぎ出した。アイリスがオロオロとしていて可愛いわね。
「バーンさん、試しにかけて良いですか?」
「待て、開発したのは誰だ?アイリス嬢じゃないだろ、サーシャか!」
「う、はい、お姉様が開発しました。」
迫力に負けて、暴露しちゃったよ。アイリスが泣きそうな顔になっている。
「私が開発しました。ただ、この魔法は制御が難しいので簡単には使えません。現状使えるのは、アイリスと私だけです。」
「全く、大した奴だ。とんでもない隠し玉を用意してやがった。ああ良いぜ、アイリス嬢、その魔法、俺にかけてくれ!」
ここで、リフィアさんが待ったをかけた。
「ちょっと待って。その魔法、私にもやってちょうだい。」
リフィアさん、そんな凄い目でアイリスを見ないで上げて下さい。怖がってます。
「わ、わかりました。ではいきます!------『オールアビリティ・セカンド』」
バーンさんとリフィアさんが赤白い光に覆われた。
「おいおい、マジかよ。この漲り具合、間違いねえ、力が2倍近く上がってやがる。」
「嘘でしょ。こんな魔法を創れるなんて、サーシャは天才ね。でも、理解したわ。アイリス、あなたも凄いわ。この魔法、発動のためには、相手の身体の中にある魔力の流れを完全に理解し、攻撃力・防御力・素早さを把握しないといけない。そして、全能力が2倍あるというイメージ力も完璧でないと発動は不可能のはず。鑑定に頼らず、己の直感で行う事が成功の秘訣かしら。」
アイリスが驚き、私を見た。
当然、私も驚いている。1回見ただけで、この魔法の真髄を見破るなんて凄すぎる。
「ウィル〜〜、ちょっと、こっちに来てくれないかな〜〜。」
突然、リフィアさんが甘い声を出して、ウィルさんを誘惑しだした。ウィルさんは、危険な匂いを感じたんだろう。
「御断りします。」
「あら〜、どうして?じゃあ、私の実験に付き合ってくれたら膝枕して、あ、げ、る。」
「わっかりました〜〜。なんなりと、申しつけて下さい。」
ウィルさんは、猛ダッシュでリフィアさんの所に行った。
アイリスと私は呆然とした。ウィルさん、誘惑に弱すぎる。
この人、本当にAクラスなの?
ロイさんを見ると、「あの馬鹿!後で、ミアにどやされるぞ!」と小声で言っていた。
「この際だし、ロイも来てくれないかな〜〜。付き合ってくれたら、あなたも膝、枕!」
「はい〜〜!なんなりと申しつけて下さい。」
冒険者達は、「俺も俺も俺も〜〜!」と続出したが打ち切られた。男共〜〜!桜木君も、こんな誘惑に弱いのだろうか?-----は、何を考えているんだ、私は!
リフィアさんが笑顔で2人に言った。
「ウィル、ロイ、少しの間、じっとしていてね。うーん、うんうん、成る程ねー、よし、『オールアビリティ・セカンド』」
すると、ウィルさんとロイさんにも赤白い光が宿った。嘘でしょ!さっき見てから、5分位しか経ってないわよ。1回見ただけで修得するて、どんなチートよ。
「ウィル、ロイ、どんな感じ?」
「マジかよ!この魔法凄いな。魔力纏いとは違う感じするけど、明らかに2倍近く上がっている。ロイはどうだ?」
「こっちも同じだ。2倍近く上がってやがる。はは、凄いぞ!」
アイリスを見ると、泣きそうな顔になっていた。
「お姉様〜〜。わたじ、あの魔法習得するまで、4時間近くがかりました〜〜!リフィアさんは見ただけで、すぐに使えましたー。私は才能ないんでじょうかー!」
あ、大泣きして、抱きついてきた。慰めて上げよう。リフィアさんも悪いと思ったのかフォローを入れてくれた。
「あ、ごめんなさい。アイリスは凄いわよ。この魔法の制御はとても難しいわ。私の場合、エルフで何百年も生きてるから、制御能力には自信があるのよ。あなたはまだ11歳なのに、この魔法を使える。これは、とても将来有望な証拠なのよ。」
「うう、ほんどうですが?」
私もフォローを入れておこう。
「アイリス本当よ。あなたは若干11歳で、この制御能力が難しい魔法を使える、本当に素晴らしい事なのよ。」
その後、慰めて部屋で休んでもらった。訓練所に戻って、急いでリフィアさんに注意した。
「リフィアさん、アイリスが苦労して覚えた魔法を目の前ですぐに使われたら、ショックを受けるに決まってるじゃないですか!もう少しで自信を失くす所でしたよ。」
「サーシャ、ごめんね。アイリスが使った魔法が余りに凄くて、つい夢中になっちゃった。」
バーンさんも謝ってくれた。
「マジですまん。リフィアの悪い癖でな。面白い魔法を見つけると、周りが見えなくなるんだ。」
「次からは、本当に気を付けて下さいね。少なくとも、アイリスの前でやらないで下さい。」
「うん、本当にごめん。気をつけるわ。」
あれ?そういえば、ウィルさんとロイさんはどこにいるのかな?あ、いた!2人とも、なぜかガッツポーズをしている。
「あの2人、妙に喜んでるんですけど、まさか本当に膝枕を?」
「当然、報酬だからね。これがミアやヒミカに知られたら、お仕置がくるわね。」
うん、知らせよう。あの2人には罰が必要だ。
アイリスが正常に戻ったところで、騎士団と合流し、私・アイリス・リフィアさんの3人で全員に『オールアビリティ・セカンド』を唱えた。アイリスが唱えた魔法は、問題なく発動した。良かった、ちょっと心配だったけど、これで大丈夫ね。冒険者達全員、力が増したことに凄い喜んでいる。その中にフィンも混じっている。あの子、完全に王女という身分を忘れているわね。
ウィルさんがこっちに来た。
「サーシャ、君はこれを切り札と言ったね。切り札という事は、当然デメリットもあるんだろう。」
ここで、私がこの魔法の全容を言った。
冒険者全員が、この魔法の凄さとデメリットに驚嘆した。
「ははは、そうか、だから制限時間は30分か。『魔力纏い』による基礎能力値の底上げ、そこに他者から2倍の底上げか、確かに、この魔法は切り札となるね。」
「あとは、皆さんが仲間に『魔力纏い』を教えて頂ければ、準備万端です。」
「ポーション類や武器防具の新たな技術開発、これらも君が絡んでいるんだろう?」
「さあ、何のことでしょうか?」
笑顔ではぐらかしてやった。
その後も、色々とウィルさんから質問?ナンパ?されたけど、全員が納得して帰って行った。
ウィルさんは、帰り際「今後とも宜しくね」と謎の一言を言い去って行った。
そんな光景をフィンとアイリスは、笑顔で私を見ていた。
「師匠、ウィルさんと凄く良い感じでしたね?」
「そうですよ、お姉様、お似合いでしたよ?」
え、そんな風に見えたの?うーん、最後のはナンパに近い感じがあったものね。
「私は、まだ誰ともお付き合いしません。」
「「ええー、勿体無い!」」
その後、戻って来たミアさんとヒミカさんに凄いお礼を言われた。どうやら合体魔法が成功したらしい。こちらも、ウィルさんとロイさんの膝枕の件を伝えると、2人の雰囲気が変わった。
「へ〜〜、あの2人は、この状況で何をやっているのかな〜〜。そう思うよね〜〜ヒミカ?」
「本当ね〜。これは、通常の倍のお仕置きをしないとね〜〜。」
その日の夜、とある宿屋で2人の男のおぞましい悲鳴が聞こえたという。
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