地底湖
丁度いいわ、休憩しましょう。おやつタイムよ。
「2人とも疲れたでしょう。一旦休憩しましょう。このフロアには、邪族がいないわ」
2人も邪族がいない事を確認したら、崩れ落ちた。
「師匠、さすがに疲れました」
「私も、初めてのダンジョンという事もあって疲れました。お姉様は、2回目なんですよね。全く疲れてる気配を感じません」
「2人は、仕方ないわ。まあ、私の場合は、ここがDランクダンジョンだからよ。実際、殆ど魔力を使ってないからね。さあ、おやつタイムよ。朝、サンドイッチを作っておいたのよ。食べましょう」
これに大きく反応したのがフィンだ。
「やった〜〜!!イリス、師匠のサンドイッチは絶品なんだよ」
「え、そうなんですか」
早速、2人はサンドイッチを食べ出した。すると。フィンはいつも通りの凄いスピードなんだけど、イリスも一切れ食べ終わった途端スピードが増した。貴方達、本当に疲れてるの?
「2人とも、もっとゆっくり食べなさい。喉に詰まるわよ」
「お姉様、そんな事言われても、止まれないです。美味しすぎます」
「今日は、新作を用意してあるのよ。これよ、オークカツサンド」
2人の目がオークカツサンドにロックオンされた。
「落ち着きなさい。1人3切れまでよ」
----20分後、フィンもイリスも恍惚な表情をしていた。
「師匠、満足です、もう動けません」
「同じく、私も」
そりゃ、あれだけ食べたら動けないわよ。2人にはゆっくりしてもらい、地底湖の探検には、私1人で行く事になった。
○○○
これまでのフロアと違って、通路がない分、広いわね。こうして見渡しても、なにも見当たらない。----という事は、地底湖の中に何かあるのかもしれない。ただ、この湖、もの凄く清浄なのよ。邪力を完全に断っているとはいえ邪族の私が入れるかしら?ちょっと、手を付けてみよう。---全く問題ないわ。どうも、邪力に反応するのかもね。一旦、戻りましょう。
「2人とも、このフロアを見てみたけど、周辺には何もないわ。あと、怪しいのは地底湖の中よ。今から潜ってみるわ。2人は、様子を見ていてちょうだい」
「「わかりました。気を付けて下さいね」」
下着姿となって、改めて地底湖を見ると透明度が凄く高いのがわかる。うーん、深そうだ。ふと視線を感じたので振り向くと、2人がじっと私の身体を見ていた。なんで、そんなに見るの?
「ちょっと、2人ともどうしたの?」
「師匠、お風呂の時も思ったんですが、スタイル良すぎです。羨ましいです。私は、胸ほんの少ししかないですから」
「私も、お姉様のようになれるのでしょうか?」
「2人は、これからが成長期なんだから、私のようになれるわよ。じゃあ、行ってくるわね」
そこまで、じっと見つめられると恥ずかしいので、地底湖に潜った。
うーん、本当に綺麗な水ね。周りは岩壁だけで何もないわね。ただ遺跡同様、壁自体がほんのりと光って全体が見通せるから楽ね。底まで行ってみよう。----何かしら?岩壁に何か掘られているわ。
【清浄な心を持つ者のみ、扉は開かれる】
これ、私、大丈夫なのだろうか?とりあえず、やってみよう。扉に触れ、魔力を出してみた。すると、扉が光り始めた。眩しかったので、目を閉じて再び開けると、別の場所に移動していた。しかも、水がない。転移したんだ。
「ここ、どこ?」
そんな大きな空間ではない。
目の前には、聖魔法で包まれた大きな女神スフィア像が1体と一振りの剣がある。
すると、女神スフィア像から女性の声が聞こえた。
「力を持つ者よ、来てくれて感謝致します。私は女神スフィアです」
「嘘、女神スフィア!」
「まず、申し上げるのは、この声は前もって女神像の宝石に入れたものなので、貴方と会話が出来ません。そして、貴方が何者なのかも当然わかりません。ですが、ここを開けれるのは、清浄な心を持った種族のみとなっていますから、貴方は良い方なのでしょう。今から私は、貴方にメッセージを残します。心して聞いて下さい」
ちょっと待ってよ。こっちの都合はお構いなく、話を続けているよ。ともかく、スフィアは、なんらかのメッセージを伝えるために、宝石に声を録音したのか。
「この異世界スフィアタリアは重大な危機に陥っています。邪王の封印が何者かにより、弱体化されました。外側の第1封印である『グラッジピュリファイン』の効果が消失したのです。今後、怨念は邪王にどんどん取り込まれていくでしょう。そして、いつかは、さらに力をつけた邪王自らが第2封印を解くでしょう。今言えるのは、一刻も早く再封印して欲しいのです。今の邪王が蘇れば、最悪、私が封印した邪神も復活するかもしれません。ここに私が創った一振りの剣があります。これは、以前異世界に召喚された勇者に渡した物と同じ聖剣です。これを持って、邪王を再封印もしくは討伐して下さい。邪王は、私が創ったものとは全く異なるイレギュラーな存在です。討伐しても、いつか蘇ってくるでしょうが、2つの聖剣があれば、討伐可能なはずです。最後に、私の声は世界各国の私自身に大きく関連する遺跡の最下層の奥に封印してあります。聖女が最奥にある女神像に触れる事で、今より詳細なメッセージが起動する設定にしてあります。どうか多くのメッセージを見つけて、私からの情報を受け取って下さい。こうでもしないと、あいつに存在を気取られるんです。聖女、そして異世界の召喚者達よ、お願いします」
唐突に切れたよ。まさか、女神スフィアに会えるとはね。ごめんね、一応、その邪神が私なんだよね。スフィアも邪神がこの扉を開けるとは思わなかっただろう。ただ、メッセージと1つ違う事がある。女神像の前には、確かに剣があるよ。でも、聖剣じゃない。鑑定してわかったけど、属性が込められていない。ただのオリハルコンの剣だ。
----属性を込めるか。
----いい事思いついた。そもそも、スフィアが創った聖剣は弱い。500年前の邪王で、なんとか封印したんでしょう。あと1つ増えたところで、より力を増した邪王を討伐出来るとは思えない。良くて再封印だろう。なら、この剣をもっと強くすればいい。そう、私がゲームに出てきた神剣を創ればいいのよ。今の私なら邪神だし、創れる気がする。この剣はオリハルコンだから、私の魔力をかなり取り込める。ふふふ、改造してあげる。改造方法は、あとで考えよう。
次、この女神スフィアの言った事をどうやって世界に伝えるかが問題ね。同じメッセージは、もう流れないみたいだし、となるとイリスにお願いするしかないか。スフィア教の聖女が言ったなら、女神スフィアからの神託という事で全世界に言えるだろう。アイリスの発見だけでなく、女神スフィアの神託も入ってくるとなると、もう、教皇に言った方がいいわね。貴族連中が何か言ってきても、無理矢理黙らせるしかないわ。
次、こんな面倒な事をしないと、あいつに気取られると言っていたけど、あいつて誰?女神サリア?それとも、全く別な存在?肝心なところを言ってないから考えようがないわね。ともかく、女神スフィアは何者かに殺されたのか、それとも絶賛逃走中なのか、どちらかね。
さて、フィンやイリスのところへ戻りましょう。
○○○
フィンとイリスに、地底湖の奥底にあった扉から別の場所へ転移し、女神スフィアから神託を受けた事を包み隠さず全てを伝えた。神託の途方も無い内容に2人とも、呆然としていた。
「ふぇ〜、何者かによって第1封印が壊されて、封印が弱体化!力を増した邪王が復活したら、スフィア様自身が封印した邪神も復活するかもしれない!本当にいたんだ、邪神。そんな、これからどうなるんでしょう?」
「邪王、邪神の復活-----お姉様、スフィア様は現在の居場所を教えてくれましたか?」
「いいえ、メッセージを残した場所も世界中のスフィアに大きく関連する遺跡としか言ってなかったわ。それだけ敵に追い詰めらていたんでしょう。その敵も、誰であるか不明よ」
「---スフィア様。お姉様、もう一振りの聖剣を見せてくれませんか?」
「それがこれなのよ。オリハルコンで出来ているけど、属性が込められていない唯の剣よ」
「そんな!どうして?」
「それだけ敵に追い詰められているという事でしょうね。イリス、マウロ司祭に伝えるわよ。全世界に知らせて、全員に危機感を持たせないといけないわ」
「はい!」
私が戻って来るまでは穏やかな雰囲気だったんだろうけど、戻ってきて衝撃の内容を伝えたからか、2人とも妙に暗くなってしまった。さて、今後どう行動するかね。
フィン、イリス、マウロ司祭には、私自身の事も言っておいた方がいいかもしれない。今の邪神は私なんだから。そして邪王、出来れば桜木君に再封印してもらいたい。もし復活しても、最悪、私が討伐するしかない。ただ、その後の展開が予想出来ないから、これは最終手段ね。
問題は、スフィアの敵が誰なのか。これを明確にさせないといけない。やはりイリスを連れて世界各国の遺跡を巡らないといけないか。ただ、そのイリス自体が現在行方不明中という事になっているから、まずはスフィアートの件を解決しましょう。
全てはそれからね。
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