Dクラス遺跡の探検
イリスの武器防具を買い揃え、私達は早速スフィアート郊外にあるDクラス遺跡へとやって来た。
「さあ、いよいよ遺跡へ入るわよ。今回は、遺跡内にいる邪族の討伐がメインだから積極的に倒していくわ。さあ、出発!」
「「はい!!」」
遺跡に入ると、早速5体のゴブリン達が現れた。フィンが2体を瞬殺、イリスが『ファイヤーパレット』で2体を同じく瞬殺した。残り1体は、私が剣で一刀両断した。うーん、ゴブリンじゃ大した経験値にもならないわね。
「イリス、『パレット系』の魔法を使う時は、全てのパレットを尖った形にして回転を付けなさい。こんな感じよ、『アイスパレット』」
アイスパレットを唱え、形を細長く回転を掛けながら、その場で玉を留めた。
「お姉様、凄いです。途中で止めるのもそうなんですが、形も鋭く全てに回転が掛かってます。」
丁度いい所に、ウィンドウルフ2体が出てきた。
「丁度いいわね。まず、これが通常版。」
パレット全弾が、ウィンドウルフに当たり死んだ。
「これが回転版」
当たった瞬間、ウィンドウルフの身体のあちこちに大きな風穴が空き絶命した。
「どちらも死んだけど、威力がまるで違うのがわかるわね。回転版は「『アイスライフル』と名付けましょうか。今の貴方のスキルレベルなら問題なく出来るはずよ。」
イリスは目を輝かせながら、こくこくと頷いていた。
「お姉様、凄いです。全然、思い付かなかったです。早速、やってみます。」
「フィンも体術を使う時、相手を殴る時は拳を軽く回転させなさい。そうすれば、威力が上がるわ。これは、上級者が必ずやっている筈よ。」
「はい!」
ゴブリン(Fクラス)、ゴブリンロード(Dクラス)、オーク(Dクラス)などの邪族を討伐しながらアドバイスをし、罠の回避方法などを教えながら、どんどん下に進んでいった。こんな事もあろうかと、城にいた時、スキルや魔法、罠などあらゆる文献を読んでおいて良かった。精神世界での修行もあって、楽々と進めている。まあ、ここはDクラスだからね。女神スフィアの情報もあるか細かく見てるけど、全くもって何もない。仮にあっても、知っている情報ばかりだった。結局、休憩を繰り返しながら6時間程であっという間に最下層の地下10階までやって来た。部屋に入った瞬間、通路への道が遮断され、逃げる事が出来なくなった。そして現れたのが、
ゴブリンロード2体(Dクラス)、オーク2体(Dクラス)、オークロード1体(ボスCクラス)
だった。
「ボス部屋か。フィン、オークロードは貴方が倒しなさい。この前のゴブリンナイトより少し強いわ。でも、貴方なら大丈夫よ。」
「はい!」
「イリス、ゴブリンロード2体よ。今のあなたなら、問題ないでしょう。」
「はい、お姉様、任せて下さい!」
私達は臨戦体制に入った。
○○○ イリス視点
Dクラスのゴブリンロード、本来なら怖い相手です。でも、お姉様に『魔力纏い』を教えてもらった事で、自分1人でも充分戦えるのがわかります。でも、油断は禁物です。魔力以外の数値は、私の方がまだまだ低いですからね。ここは、先手必勝です。
お姉様が「現存する魔法に頼るな」と言っていました。「どの魔法にも欠点があるから、試行錯誤して自分で改良していきなさい」とも言っていました。そうです、私が今まで求めていたものです。これまで、魔法において、幾つかの疑問をマウロ爺や教皇様に相談した事があったけど、2人とも答えは同じ「そういう魔法だから」でした。お姉様は、私が言う前から教えてくれた。パレット系の使い方は私も考えていたけど、なかなか上手くいかなかった。お姉様は一発で解決してくれた。お姉様の期待に応えてみせる。
「まずは、『ストーンパレット』」
杖に魔力を集中し、いくつものパレットを細長く尖った形にして回転を加え、そして----放つ。
「いきなさい!『ストーンライフル』」
ゴブリンロードが、こちらに走ってきたところで魔法を放った。すると、今までのパレットよりも数段早く着弾し、2体のゴブリンロードの身体のあちこちに風穴を空けた。-----ウソ、通常なら、3回唱えないと倒せないと聞いていたけど一撃で倒せた。
お姉様を見ると、オークをいつの間にか倒しこちらを見ていた。
「イリス、よくやったわ。早速、使いこなせたようね。」
「はい!」
やったわ、お姉様に褒められた。そうだ、フィン姉はどうなったんだろう。
私が見た瞬間、フィン姉はオークロードの全身全霊の槍による突きをまともに喰らい、吹っ飛ばされてしまった。
○○○ フィン視点
はあ、はあ、オークロード強いです。特にあの槍が厄介です。なかなか懐に潜り込ませてくれません。
「ぐああああーーー」
あ、オークロードが槍を連続で突いてきました。く、速いです。なんとかガードして懐へ。その時。足が地面の出っ張りに躓いてしまい、身体がふらついてしまった。オークロードがそれを見逃すはずがない。----まずい!私は、咄嗟に鉄の爪の小手部分でガードし、魔力を腕に集中させた。すると、すごい衝撃が来て吹っ飛ばされた。
なんとか立ち上がれたけど、どうやって倒せるの?どうやって?その時、お姉様の大きな声が聞こえた。
「フィン、どんな生物にも弱点はあるわ。そこを突けば、確実に体勢を崩す。諦めず、オークロードの動きを良く見なさい。今の貴方なら見極められるはずよ。」
どんな生物にも弱点がある?そこを突けば、体勢を崩せる?落ち着け、私。師匠が言ってるんだ、諦めず探すんだ。------まずは動きを観察しよう。すると、オークロードが突進し、槍で薙ぎはらってきた。これだけ大きな身体をしているに結構素早いです。槍を避けたところで、オークロードの左腕に隙が出来ました。
「そこ!」
直撃は回避されたけど、少し傷を付けれた。今は、これでいいです。
少しの間、お互い膠着状態となりました。
「はあ、はあ、はあ」
「ぐるる〜」
はっきり言って、私が不利です。このままだと、体力が持ちません。オークロードも、それがわかったんでしょう。また、槍を連続で突いてきました。でも、おかしいです。先程よりキレがありません。どうしたんでしょうか?よく観察すると、左腕の肘から出血がありました。あそこは、私が斬りつけた場所です。でも、あの程度なら問題にならないはず、どうして?
-----まさか、関節!そうか、オークロードも私達と同様、関節がある。そこを傷付ければ、絶対に動きが鈍る。まずは、腕の関節を徹底的に痛め付けよう。私は、そこから事あるごとに腕の関節を攻撃し続けた。すると、先程まで鋭かった攻撃が急激に鈍くなっていった。そして、オークロードが遂に槍を落とした。今だ!私は、右の鉄の爪に魔力を集中させ突っ込んだ。オークロードは、体術に切り替えて私に鋭い突きを放ってきたけど、これを避けて腕の上に乗った。そして-----
「これで終わりです。はああ〜〜、『サンダーファング』」
オークロードの顔面にサンダーファングを叩き込んでやった。見事に頭を斬り裂き、オークロードは絶命した。やった、なんとか倒せた。師匠のアドバイスがなければ死んでたかもしれない。
「師匠〜〜、やりました〜〜!アドバイス、ありがとうございます。」
「良いのよ、私が言わなくても、多分気が付いたと思うしね。」
「そんな事ないです。懐に入る事ばかり考えていました。」
「正攻法も良いけど、時には戦法を変えるのも大事よ。もっと柔軟な考え方を身に付けなさい。」
「はい!」
○○○ 主人公視点
イリスは快勝、フィンは辛勝か。うん、良い感じに成長してる。フィンに『ハイ・ヒール』を唱え、15分程休憩後、先に見えている通路に進んだ。
通路を通り抜けると、大きな部屋があり、中央の祭壇に女神スフィアの像があった。
「お姉様、5年前まで、この像にお祈りすると体力や魔力が回復したそうです。今は、その効果は無くなっていて、お祈りをすると、地上の入口に戻されるだけになっています。」
なんか、ゲームに似たようなものがあった気がする。立派な像だけど、この像からは、特に何も感じないな。気になるのは、体力・魔力回復機能が消失したことぐらいか。
「あれ、師匠、女神像の台座に宝石があります。」
「この宝石は、何か意味があるのかしら?」
「これについては、現在でも、なんの意味があるのかわかっていません。」
イリスも来て、宝石を触った瞬間、宝石が輝き始めた。
「え、触っただけなのに、なんで!お姉様、どうしましょう!」
私とフィンが触った時は変化がなかった。---という事は、聖女だけに反応したのか!やってくれるわね。
そして、光が収まった時、目の前に階段があった。これは、降りるしかないわね。
「聖女が触ると仕掛けが作動するようね。行くわよ、2人とも。」
「こんな仕掛けがあったなんて、あ、待って下さい。お姉様、フィン姉」
階段を降りた先には、なんと大きな地底湖があった。しかも、凄く綺麗で正常なものだ。邪族もいない。なんで遺跡ダンジョンにこんなものがあるの?周りには、何もなさそうね。時間は15時か。
丁度いいわ、休憩しましょう。おやつタイムよ。
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