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邪族の狙い

「サーシャ、自己紹介が遅れたな。儂は、マウロ・カープという。まさか、『マックス・ヒール』で回復してくれるとは思わなかったよ。おかげで、全回復した。力が漲るよ」


この部屋の周囲には、誰もいないわね。ここからは、『サイレント』をかけておこう。



「回復魔法を唱えてわかったのですが、マウロ司祭の夢の原因がわかりました。マウロ司祭は邪族に操られていたんです。夢の内容も、アイリス様に関連する事ではないでしょうか?」


「なんじゃと邪族に!うむむむ、確かに夢は、どこかの祭壇に魔法陣があって、私を含め何人かが詠唱しているものを、このところ毎日見ておったな」


それ夢じゃないから、現実だよ。しかも、結構鮮明に覚えているのね。一般人より抵抗力があるから、なまじ中途半端に覚えているんだ。


「私があなたを見た時、頭の上に妙な線が繋がっていました。邪族はなんらかの方法で、あなたの精神と繋ぎ合せて、邪法『ブレインウォッシュ』をかけ続けていたんです」


多分、これで納得してくれると思うけど。


「なに、『ブレインウォッシュ』じゃと!ちょっと待て。まさかとは思うが、今発言した内容は----」


「ええ、夢ではなく、現実に起こった事です。恐らく、寝ている時に操って、何かしていたんでしょう。辛いと思いますが、教えてくれませんか?」


マウロ司祭が落ち着いてから、夢だと思っていた内容とアイリスが行方不明になった当時の状況の事を話してくれた。


1)夜中、礼拝堂の祭壇に6人(うち1人マウロ司祭)で集まって、何かを詠唱していたらしい。この6人全員がフードを被っているため、何者かはわからない。この夢をここ3週間近くずっと見ていた


2)アイリスが礼拝堂の祭壇から消えたと聞いた時、なぜかほくそ笑んでしまった。自分でも理由がわからなかった


これで、少なくともあと5人操られている奴がいるのは確定した。


「状況から考えて、アイリス様に使用された魔法は『転移』ですね。それなら礼拝堂で消えた事も説明がつきます」


「『転移』じゃと、そんなあれは我々人間にとって、伝説の魔法で誰にも使用出来ないはず」


「それは人間だけで、使える邪族はいるはずです。発動方法も、魔力か邪力どちらでも使用可能なので、今回は6人の人間の魔力を使ったんでしょう」


マウロ司祭を見ると、憔悴していた。まあ、操られていたとはいえ、アイリスを転移させたのが自分なんだから当然か。この人なら信頼出来そうだ。アイリスが無事である事、今後の事を話しておこう。



「マウロ司祭、ここからが重要です。貴方にとって、安心出来る情報です」


「なんじゃ、安心出来る情報?」


「ええ、アイリス様は生きています。現在、私が保護しています」

「なんじゃと〜〜!本当か、それは!」

「はい、詳細な事を話しますので、落ち着いて下さい」


私はマウロ司祭に、アイリスと出会ってからこれまでの経緯を話した。

一通り聞いた後、マウロ司祭は呆然としていた。


「なんと!あの大森林に転移。B, Cクラスの邪族に追われていて、それをサーシャ達が偶然発見し討伐。アイリス様の怪我を治療し、今は偽装の魔導具を使って宿屋に休息中。なんとも、普通なら信じられん話をしよるな。じゃが、あの『マックス・ヒール』を見たら信じざるおえん」


良かった、信じてくれた。


「それで、アイリス様は元気なのか?」


「ええ、元気ですよ。ただ、今は、旅の疲れで眠っています。明日、ここに連れて来ても大丈夫ですか?」


「それは構わんが大丈夫なのか?偽装がばれる可能性はないのか?」


「暴露る可能性は、まずありません。宿屋に到着するまで、みんな普通に素通りしてました。あと、偽装している時は、イリスと名乗っています。マウロ司祭、くれぐれも誰にも言わないで下さいね。現状、残り5人が誰かわからないんですから。人と接する時も注意して下さい」


ここでアイリスが生きているとわかれば、事態がややこしくなる。


「ふふ、わかっておるよ。演技は得意なんでな。じゃが、事が解決したら、お前さんが何者か教えて欲しい。お前さんの力はCクラスではない、それ以上の力を感じるぞ」


「ふふ、私は、ただの冒険者ですよ。確実に言えるのは、私はアイリス様の味方です。今日は、一旦これで失礼しますね。明日の朝9時に、こちらにお伺いします」


私はサイレントを解除し、マウロ司祭と別れ宿屋に戻った。


「あら、2人とも起きてたのね。気分はどう?」

「お姉様、バッチリです。大分良くなりました」

「師匠、ずいぶん寝たおかげで、私も楽になりました」


フィンもイリスも大分回復したみたいね。



「それじゃあ、先に夕食を頂きましょうか」

「「はい!」」



夕食後、部屋に戻りマウロ司祭と会ったことを話した。


「それでは6人が邪族に操られて、私をあの大森林に転移させたんですか。そのうちの1人がマウロ司祭」


「ええ、彼については、もう大丈夫。邪族との繋がりを完全に断ち切ったし、邪族の事も話してあるから、もう操られることはないでしょう」


「良かった、安心しました」


「明日の朝9時に礼拝堂の司祭の部屋に行きましょう。今後のことを相談しないといけないわ」


「「はい!」」



○○○ ある邪族の視点



ここは、スフィアートから数km程離れたとある洞窟の中。



どうなっている!いきなりだ、本当にいきなり、ドリオンが死んだ。あいつは俺達邪竜族の中でも、かなり頑強な奴だ。物理、魔法ともに強い耐性を持っている野郎が、どこから来たのかわからない白い雷の魔法で完全に焼失した。こんな事があってたまるか。一体、誰が殺りやがった?この周辺には人間の気配は感じられん。遠距離で、ここまで正確に捉える人間はそうはいないはずだ。クソったれが!


「おいおい、荒れてるなあ、ジェイク。まあ、お前とドリオンは仲が良かったからな。だが、ドリオンがヘマをやっちまったんだ。仕方ねーだろ。幸い、アジトは暴露てないし、良しとしよーぜ」


こいつはドリオンが殺られたのに、なんでこんなに軽いんだ?


「おい、カーザック、お前は仲間が殺されて、なんでそんな平気な顔をしていられる?」


「そりゃ、戦争だからだよ。邪族とそれ以外の種族とのな。戦争で、いちいち仲間の死を思っていたら、精神が持たないぞ。俺達の使命は、邪族以外の種族を皆殺しにし、その魂を邪王様に届けることだ。俺達は、聖女アイリスを殺したんだぞ。あのガキ、加護こそないが、聖魔法で囲まれているスフィアートから1歩も出てきやしねえ。そのせいで、殺す計画を立てたのは良いものの、洗脳した人間共は思った以上に抵抗して暗殺は出来ねえ、結局、大森林への転移を実行した結果、殺すのに3ヶ月もかかっちまった。まあ、人間共に恨まれるに決まってんだろ。今回の攻撃は予想外だったがな」


ち、正論をほざきやがる。だが、最もな意見だ。これは1000年前から続いている戦争だ。いちいち死んだ仲間の事を思ってても仕方がねえ。


「カーザック、聖魔法魔導具の設置場所はわかったのか?」


「大まかな場所はな。だが、完全に絞り込むには、もう少し時間が必要だ。あの教皇を洗脳出来れば一発なんだが、教皇だけあって精神耐性が高すぎる。まあ、あと6日程あれば、居場所もわかって破壊出来るだろう。そうしたら、四方を囲んで猛攻撃だ。人間共をやりたい放題出来るぞ」


「ち、あと6日の辛抱か」



まあいい。あと6日で念願のスフィアートを陥落できるなら、そこで仇を討ってやる。すでに聖女アイリスは殺した。女神スフィアが降り立ったとされる聖地、ここを落とせば人間、獣人、エルフ、ドワーフ共は絶望に陥る。まずはスフィアートにいる人間共を殺しまくって、邪王様に送り届ける。人間共は知るまい。あの方のおかげで、もう殆ど封印は意味を成していないことを。今更、勇者を異世界から召喚しても手遅れなんだよ。


くくく、もう少しで、俺達邪族の時代が始まる。



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