表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/147

フィンの修行

「師匠〜〜、もう駄目です。一歩も動けません。」

「あら、もう限界?うーん、あまり身体を酷使しても駄目だから、今日はここまでね。」


フィンは、地面に仰向けとなり、汗だくで息切れしている。王都を脱出し、現在スフィアートに向けて走っている。そう、走っているのだ。フィンの魔力循環と魔力操作のスキルレベルは揃って1だ。このまま、新しく契約した従魔(グリフォン)で飛んで行けば、6時間程でスフィアートに到着可能だが、それでは面白くない。


そこで、フィンには修行として、魔力循環しながら走ってもらっている。身体に魔力をまとわせ走らせる事で、若干スピードが向上するし、魔力循環スキルのレベルが向上し身体強化のスキルも覚えやすくなる------はずだ。


「フィン、やってみた感想はどうだった?」


「予想以上にきついです。魔力循環しながら、ただ走るだけの修行がここまできついとは思いませんでした。」


「地味だけど、こういう一見簡単そうな修行が、スキルレベルも上がりやすいのよ。魔力循環のスキルレベルはどうなった?」


「はい、確認してみます。えー、1日しかやってないのにもうレベル2になってる〜。」


予想通りね!マンガ読んでおいてよかった。


「よし、休憩したら、魔力操作に移るわよ。」

「もう、くたくたですよ〜。」


「次の指令を1発クリアしたら、夕食はゴードンカウのステーキにしてあげる。」


ゴードンカウ、日本でいうと上質な牛みたいな邪族だ。王都で3頭分買っておいたのだ。


「頑張ります!」


この子は食べ物に目がないわね。今後も利用させてもらおう。


○○○


休憩後、魔力操作訓練に入った。


「さて、これから魔力操作をやってもらうわけだけど、やる事は簡単よ。ここにあるものを浮かばせているわ。それは何かな?。」


フィンの頭と同じ位置の高さに、魔力で出来た丸い玉を創った。属性を何も入れてないので無色だ。そもそも魔力自体、普通は見えない。見えるようにするには、自分の魔力に属性を加えるか、目に魔力を集中すればいい。


「えー、魔力操作だけでやるんですか。」


「そうよ。魔力操作の扱い方が問われるわね。自分の常識を捨てなければ、この課題クリア出来ないわよ。制限時間は30分ね。始め!ステーキが待ってるわよ。」


「えーー、やってみます。」



----30分後、ギリギリクリアした。


「やりました〜!これでステーキが食べれます!」


そこまでしてステーキが欲しいの?でも、よく思いついたわね。


「よくやったわ。夕食はステーキよ。よく丸い玉だとわかったわね?」


「はい、魔力循環は身体全体に魔力を行き渡らせるスキルだから、魔力操作はどんなスキルかをずっと考えていました。今までは魔法の操作ばかりに拘っていて、全然進歩なかったんですが、師匠に常識を捨てろと言われたので、ふと思ったんです。魔力を身体全体に行き渡らせるなら、身体の一部分に留める事もできるんじゃないかと思ったんです。」


おー、自分で気付いたか。


「正解よ。スキルレベルを見てみなさい。」

「はい、あー、こっちもレベル2になってます。こんな簡単に上がるなんて。」


「要領よくやれば良いのよ。魔法ばかり練習しても進歩しないものがあるわ。」

「はい、---そうですよね。今まで、単に要領が悪かったんですね。」


学園では、スキルレベルが上がらなかったと言ってたけど、よく考えたら、あの呪いは能力値が固定されてたけど、スキルは正常だったのよね。つまり、フィン自身が不器用なだけだ。


「フィン、魔力を目に集める操作は慣れておきなさい。まだ魔力の集め方が雑で、今回の丸い玉も辛うじてわかった程度だけど、この操作が洗練すればする程、相手の動きや魔法の挙動をいち早く察知し、戦闘を有利に進められるわ。それに気配察知と併用する事で、遠くにいる相手の挙動もある程度わかるようになるわ。」


「この課題は、そこまで考えての事だったのですか!わかりました、毎日修行をしておきます。」


とりあえず、これで魔力循環と魔力操作の仕方はわかったようね。あとは、繰り返し練習あるのみよ。



○○○



王都を出発して、3日が経過した。フィンも魔力循環と魔力操作に大分慣れてきたわね。始めの頃より随分身体に馴染んで、魔力がスムーズに動いているのがわかる。そろそろね。


「フィン、ステータスを確認して。そろそろ新しいスキルがあるはずよ。」


「はい、あー!身体強化スキルがありましたー!念願のスキルがやっと手に入りましたー。」


ふふふ、着々と成長してるわね。


「フィン、身体強化スキルも、ただ身体を鍛えればスキルレベルが上がるというわけではないわ。使い方次第では、効率良くレベルも上がるし、魔力と併用すれば自分より基本能力値の高い強者を倒す事も可能よ。」


「ええ、本当ですか!」


まあ、これはフィン自身がやって実感させた方が良いわね。


「フィン、今から言うことを実行しなさい。」


1)魔力循環を行う

2)循環している魔力を身体の外に出す。イメージとしては、身体全体を纏うようにする


「わかりました、やってみます。-----こんな感じですか?」


「荒いけど、まあ良いでしょう。その感覚を覚えておいてね。じゃあ、一旦魔力を解いて、普通に地面を殴ってみて。」


「はい。」


地面を殴ったら、拳程度の穴が出来た。


「じゃあ次、さっき言った事をもう1回やって、今度はその状態で地面を殴りなさい。」


言われた通り、フィンは地面に拳を殴りつけた。その結果、さっきと異なり、殴りつけた場所を中心とする半径20cmくらいの小さなクレーターが出来た。


「えー、なんで、どうして!魔力がある時とない時で威力が違うの?」


「身体に魔力を纏うことで、『身体強化』スキルと連動して、全ての能力が向上するのよ。この身体への纏い方が無駄なく綺麗に出来れば、能力はもっと向上するわ。今の時点では、纏い方が荒いからギリギリ合格てところね。フィン、ステータスを確認しなさい。」


「はい、あー、『魔力纏い レベル1』という新しいスキルが表示されてます。


成る程、『魔力纏い』という名称になったのか。自分でやっても、頭の中には出てるけど、ステータスに表示されないから不安だったのよね。


「それで驚いてたら駄目よ。次が本番。外に出した魔力を拳に集中して、地面を殴りなさい。」


すると、今度は半径40cm程度のクレーターが出来た。

フィンは驚きのあまり、放心状態だ。


「どう理解出来た?使い方次第で倒せるというのは、こういう理由よ。始めにした攻撃が身体強化スキルのみ、2番目は身体強化と魔力纏い全体型の連動、3番目が身体強化と魔力纏い局所型の連動よ。このように身体強化スキルと魔力纏いを連動することで、基本能力値を基に大幅に強化出来るの。魔力を拳に集中させた場合、今の時点で基本攻撃力の最大5倍ぐらい強化出来るんじゃないかな。スキルレベルが高くなればなる程、威力も増大するわね。」


「知りませんでした。魔力は魔法に使うだけだと思ってました。こんな使い方があるなんて、夢にも思いませんでした。」


「ただし、拳に魔力を集中させた場合、その分それ以外のところは基本能力値に近い値となるの。注意しておきなさい。」


「はい、この扱い方を練習しておきます。」


フィンの目がキラキラしている。余程感動したのかな?

これで、フィンの修行も必要最低限は出来たかな。あとは、実戦を積んで経験値を増やしていけばいいでしよ。


私の場合、邪神喰べたせいか、実戦とかいう以前に、人のレベルを超えてるせいで、イマイチ経験を積んでいるのかわからない。でも、ステータス上のレベルは現在7、基礎能力値の値も結構上昇している。どうやら、ユニークスキル『存在隠蔽』のおかげで、レベル毎のステータス上昇も基に戻ったようだ。邪神。貴方を喰べて良かったわ。とりあえず邪族を狩りまくって、レベルをもっと上げていこう。


この後、魔力纏いの修行を1日中繰り返したことで、フィンの『魔力纏い』はレベル3になった。


そして、翌朝-----


「これで、フィンの修行も必要最低限終わったわ。今から従魔に乗ってスフィアートに行くわよ。」


「え、従魔てリッチですか?」

「いいえ、あなたが寝ている間に契約しておいたグリフォンよ。」


「ふぇ〜〜、グリフォン!Aランクなんですけど、相変わらず凄いですね。」


早速、グリフォンを召喚した。改めて見ると、結構大きいわね。体長5mくらいかな。さっき、作っておいたグリフォン用のオークの骨つき肉をあげよう。


「グリフォン、私達をスフィアートの手前まで送ってちょうだい。お腹が空くかもしれないから、先にこれをあげるわ。」


グリフォンは、喜んで骨ごと食い尽くした。余程嬉しかったのか、顔をスリスリしてきた。おー、犬みたいです可愛く見える。


「フィン、グリフォンも結構可愛いでしょ。そんな遠くにいないで、こっちに来なさい。」


「む、無理ですよ。怖すぎます。私には凶暴に見えます。」


「あら、そんな事言っていいのかしら。この子、喋れはしないけど、言葉は理解出来るのよ。あまり怒らせる事は言わない方がいいわ。」


そう言うと、ダッシュでこっちに来て、グリフォンに土下座した。あなた王女でしょ、プライドはないのか。


「グリフォンさん、すいません、許して下さい。見るのが初めてだったので、少し怖かっただけなんです。乗ってもいいでしょうか?」


すると、フィンを気に入ったのか、嘴で服の裾を摘まんで上に放り投げ、背中に乗せた。フィンはというと、泣いていた。


「怖かったです。食べられるかと思いました〜。」

「慣れておきなさい。今後、こういう従魔は増えていくからね。」


グリフォンの背中に乗り、私達はスフィアートに向かった。

ブックマーク、評価をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ