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邪王討伐-3 (史上最低最短の戦い)

邪族は、全て討伐した。邪王戦が始まる前に、みんなの戦った爪痕を認識してもらおう。


「みんな、周辺を見てくれないかな?」


私に言われて、全員が周りを見渡した。


「なんだ、この有様!ジャングルだった島が完全に丸裸になって、海が見えてるぞ!」


「なんですか、これは!?まさか、-----これを行なったのは私達?」

「えええーーーー、これを私達がやったの?」


春人君、夕実、美香が順に声を上げて以降、サリアやイリス達も、自分達が行った所業に驚いているようね。


「春人君達は、地球に戻った後、気をつけてね。地球で、これをやったら生態系を破壊した悪魔と罵られて、死刑になるかもしれないわよ。逆に春人君・美香・夕実の3人なら、魔法の使い方次第で生態系を復活させた天使と絶賛されるかもしれないわ」


「茜、地球でも魔法を使えるのか?」


「一応使えるわ。ただし精霊達がいない分、消費した魔力は、自分の身体だけで回復させなければならない。スフィアタリアと違って、回復速度が異常に遅いから注意してね」


春人君達も、自分達の力の異常さに気付いたようね。


「ちなみに、アイリス達がこういう自然破壊をやった場合、問答無用でお仕置きするからね。その時は、刺激臭ver.3を喰らってもらうわ」


「お姉様、ver.3ってなんですか!初耳ですよ」


「ver.3の中身を知っているのはラギウスのみ。多分、獣人のフィン達が喰らったら------臭いだけで死ぬわね」


「サーシャ様、ちょっと待って下さい。それじゃあ俺やリッカが喰らったら-----」


「多分、死ぬかもしれない。だから、ver.3を使わせるような行動は絶対に控えてね」

「「ひいいいぃぃぃーーーーー」」


ジンとリッカが一斉に頷きまくったわ。





大穴の奥底から、邪力が漂ってきた!

いよいよ邪王の登場ね。


「茜、邪王が出て来るぞ!」

「そのようね。春人君の【精神一到】は、なんて言ってる?」


「それが----、神剣に魔力を200万込めた後、ここから剣を反対側まで伸ばせと教えてくれた。いくらなんでも、それで討伐出来ないだろ?」


「物は試しよ。やってみたら?」


精神一到発動時は、管理システムと繋がっているから、もしかしたら本当に討伐されるかもね。


《ゴゴゴゴゴ》



封印が破られるわね。震度6強ぐらいの強い地震が発生した。


「え!なによこれ!」

「美香、落ち着いて。どうやら邪王が出て来るようね」


「凄い邪力ですね。でも----そんなに強くない?」


「夕実の言う通りね。前回より多少は強くなっているようだけど、大体80万くらいか?」


うーん、もう少し高いと踏んだんだけど、80万しかないのか。


「とりあえず、用意出来たぞ〜〜。多分、討伐出来ないだろうから、すぐに戦いの準備をしておいてくれよ」


うん、神剣の扱いも問題ないわね。あの神剣は刃に魔力を通す事で、伸ばす事が可能だ。伸ばせる距離は、春人君の魔力に依存する。200万きちんと込めているから、大穴の端から端までなら余裕で伸ばせる。


【貴様ら〜〜、よくも---よくも----我が手下達を皆殺しにしてくれたな〜〜】

《バアアアァァーーーーーン》

《ゴオオオォォォーーーーーーー》


封印が破られたか。


大穴の地の底から、お腹に響く程の底重音と共に、低く憎しみの篭った声が聞こえて来た。そして-----何かが地上に登ってくるような気配を感じる。


「春人君!」

「ああ、大丈夫だ!」


【手下達からの報告が途絶えた所為で、貴様らが何をしていたのかイマイチ状況を掴めんが、この数百年、我は力を蓄積した。今、この場で勇者を喰ってくれる!】


邪王が地上に出てくる!


【さあ、勇者〜〜、貴様を血祭りにしてーーーーーーーーー】


うわあ!邪王が地上に出て来た瞬間、神剣の刃に触れて見事に縦に切断されていっている。今回の邪王の姿は細長い竜か。全長30〜40mかな?神剣の刃は、魔力を完全に遮断しているから魔力を感じないし、神剣の刃先は数ミリ、邪王の目で見てもそこに何かがあるとは思わなかったようね。


《ズウウウウゥゥゥゥーーーーーーン》


ああ、邪王の身体が縦に一刀両断されて絶命したわ。


「-------え、-----おい、冗談だろ!邪王、お前の言う通り勝負してやるよ!だから回復して、俺と戦え!」


シーーーーーーーーン


春人君、どう見ても死んでます。


「おいおい、俺は神剣を伸ばしただけなんだぞ。それだけで死ぬって、ありえないだろ?お前は邪族の王なんだから、早く復活して俺と戦ってくれよ。最終決戦が、こんなアホな終わり方にしないでくれ。頼むから復活してくれ!」


春人君が、邪王の死体に延々と語りかけている。全員が春人君を哀れむような目で見ているわ。


「ねえ夕実、春人が哀れなんだけど」


「美香の気持ちわかりますよ。邪王が自ら、伸びた神剣に突っ込んで行き絶命しましたからね。あんなお馬鹿なボスは、見た事ありませんね。地上に出現してからの討伐時間は1秒ですね」


うん、本当にそう思う。

神剣が優秀過ぎて、全く存在に気付かなかったんだね


あ、義輝君が春人君を慰めにいった。


《ポン》

「春人、諦めろ。邪王は、もう---------死んでいる」


「嘘だあああぁぁぁぁぁーーーー!こんな終わり方ってあるかよ!俺がやったのは、神剣に魔力を200万込めて伸ばしただけだぞ!これなら誰でも出来るぞ!」


「いや、まあ、200万以上持っているのは春人だけだし、それに春人の精神一到があってこその早期決着だ」


「早期過ぎるよ。邪王が地上に出てきて1秒しか経ってないぞ!俺、邪王に名乗ってすらいないんだぞ。なんて-----なんて情けない決着なんだ」


あ、邪王の身体が光り輝いた。これは、自爆の兆候だ。


「-----おお、邪王、やる気になったのか!」


「春人君、邪王の『自爆システム』が発動するのよ。邪王が自ら死を選ぶか、もしくは勇者によって殺された時、勇者諸共、周囲を焦土と化す程の大爆発が起こるの。封印時に開発した新たなスキルよ。みんな!私の周囲に来て。島の端、島を覆っている私のディストーションフィールドの外側に避難するわよ!全員に『ディストーションフィールド』をかけているとはいえ、もしもの可能性があるからね」


「---ああ、わかった。邪王の奴、本当に死んだんだな。-----これまでで、最も最低な戦いだった。テルミア王国にいるみんなに言えん」


言いづらいわね。『剣を伸ばしただけで、最終ボスを倒したぜ!』と言っても、誰も信じないでしょうね。さあ、転移しましょう。




-----島の端に転移した。邪王のいる場所を見ると、光がどんどん強くなっているのがわかる。邪王が光り始めた後、死んでいる邪族達も皆光り出した。連鎖爆発するんだろうね。でも、ごめんね。管理システムで見ていたから、邪王の切り札も初めから知っていたんだ。邪王の事でわからなかったのが、どんな姿で現れるのか、どの程度の強さになるのか、これら2つだけが正確性に欠けていた。今回の自爆に関しては、全て想定内だ。


さあ、あなた達の最後の散り際を特等席で見学するわ。


「サーシャ、邪王の上空付近だけ、魔法のバリアがないわよ?」


「ああ、それは大爆発のエネルギーを空に放出させるために、ワザと空けているのよ。大爆発で発生する光の柱で、邪王を討伐しましたというサインね」


「呆れた。『勇者諸共、道連れにしてやる』という邪王の執念自体も利用する気なのね?」


「当然。これは使えると判断したわ。光の柱が発生しても、見えない国もあるだろうから、後で佐江さん達に通達してもらう予定よ」


さあ、大爆発が始まるわ。


邪王の身体が限界まで光り輝いた後で、盛大な轟音が響いた。


《ドゴオオオォォォーーーーーーーーーーーン》


想定通り、爆発のエネルギーをある程度吸収してから全てを上空に向けることで、光の柱を発生させた。




------光が収まり島を見ると、そこには爆発前の光景と何ら変化は起きていなかった。よし、想定通りだ!


「おいおい、大爆発の割には被害が全くないぞ!」

「茜、何かやったわね!」


「ええ、こんな事もあろうかと、邪王や邪族の周囲にも『ディストーションフィールド』をセットし、大爆発で生じるエネルギーや衝撃波を半分程吸収して、残りを上空に向けたのよ。全ては、想定の範囲内に収まったわ」


「邪王、哀れですね。全ては、茜の手の平の上で転がされていた」


「夕実の言う通りよ。まあ神剣を伸ばし、そこに邪王が突っ込んで、そのまま一刀両断されるとは思わなかったけどね。さあ、これで全ては終わったわ!みんな、お疲れ様!」


周囲を見ると、全員が複雑な顔を浮かべていた。


「茜、まるでギャグ漫画を見ているかのような展開だ。俺の勇者としての役割って------達成感を全く感じないんだが」


「春人様、深く考えてはダメです。サーシャ様が関与している時点で、全ての価値観が崩れるんです。佐江さんや努さんだって、『サーシャだから』の一言で済ませて正常を保とうとしているんです」


「テイルの言う通り、本当にそう思えてきた。茜の強さが異常なんだよな。普通なら邪王と戦い、死闘の先に勝利を勝ち取るもんだよな。それが----あれだよ-----あの結果だよ。俺が勇者としてやったのは、穴を跨ぐように剣を伸ばしただけ」


みんなが苦笑いとなっている。この展開についていけてないのか。


「全てが終わったんだから、それで良いんじゃない?ここは、最終ボスを倒して、感動する場面のはずでは?」


「茜、この戦いの結末に、感動する場面があると思う?春人以外は、大穴まで競争しただけで終了よ。肝心の邪王は、あのザマで終了」


----美香の言う通り、この展開で感動しろという方が無理ね。

達成感も皆無だしね。


「終わり方に凄く問題がある気がするけど、これで全て解決したんだから良いんじゃない?ほら邪族達を片付けて、佐江と努のいる王都に戻るわよ!サーシャは、島全体にリジェネレーションをするんでしょ?さっさとやって帰りましょう」


サリアにまとめられてしまった。


「ええ、もちろんよ。急に回復させるより、少しずつ回復させた方が木々の負担にならないからね」




--------私達は、念願の邪王を討伐した。


討伐までの道程、春人君達はテルミア王都を出発後、大森林で邪族と戦い勝利した。その後、シルフィーユ王国の村で、何も知らずにトイフェルベリーを食べまくり悪魔達を討伐した。シルフィーユ王都到着後、ドーピングしまくって邪王率いる邪族達を殺しまくり、殺戮の限りを尽くした。邪王も地上に出た瞬間、討伐された。島に乗り込み邪王を討伐するまで約25分、これまでの歴史の中で史上最速の時間で討伐することに成功した。


ふと思ったけど、邪王と戦っている時間より、ドーピングしている時間の方が多いよね。これは言わないでおこう。


邪王の討伐方法に問題があると指摘されたけど、まさかあれで死ぬなんて思わなかったのよね。邪族達の死体をアイテムボックスに入れ、島全体に回復魔法をかけた後、私達はシルフィーユのハイエルフ王宮へと転移した。


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