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不穏な気配

夕実→春人→リフィア と視点が切り替わります。


○○○ 吹山夕実 視点


城塞都市マルティークに来てから2日目の夜、みんなとの共同訓練はないけど、部屋の中で美香と一緒に基礎訓練(魔力循環と魔力操作)をやっている。もちろん、迷惑を掛けないよう、『サイレント』を使用している。そして、ついに魔力循環と魔力操作のスキルがMAXの10になった。でも、不思議なんだよね?なんとなくだけど表示されないだけで、さらに上があるような気がする。現に、私よりバーンさんやリフィアさんの方が魔力操作が上手い。ステータスに頼らず、もっともっと練習していこう。


「美香、魔力循環と魔力操作のスキルが10になったよ」

「え、凄いじゃん。私はまだ8だよ。でも、どうしたの?あまり喜んでないね?」


「これから先、ステータスのスキルレベルが10になっても、基礎修行はしっかりやった方がいいと思う」


「え、なんで?」


「簡単なこと、バーンさんやリフィアさんの方が魔力操作が上手いから。多分、表示されないだけで、10以上が存在するよ」


「あ、確かに」


はあ〜、訓練のおかげで私の平均基礎能力値はやっと7000くらいだ。攻撃・防御・素早さは5300前後、魔力が12000、魔力だけでみたらSクラスだけど、それ以外はBの中盤だ。やはり、私だけの魔法が欲しい。実はみんなには内緒で、----な敵が現れた場合、------があれば役立てるのではと思い、以前から開発していた2種類の魔法がある。ふふふ、それらがようやく完成したのだ。私だけが使える魔法、良い響きだよね。ただ、ふと思う。そんな敵がいなかったら、宝の持ち腐れとなってしまう。-----いや、大丈夫なはずよ。だってステータスにも、『-----』と『-----』が追加されている。説明通りなら有効活用出来るはずだ。


「夕実、新型魔法は開発出来たの?」


「うん、完成した。消費魔力もそれ程大きくないし、有効活用出来ると思う」

「ちなみに、どんな効果があるの?」


「えーと、------といった相手なら、勇者である春人君でも倒せないでしょ。開発した2つの魔法には、------という効果があるの」


「凄い魔法じゃん!でも、そんな性質を持つ邪族ていたっけ?」

「もしもの話だよ。私達の知らない邪族がいるかもしれないでしょ」


「確かにね。そんな奴がいたら、春人の聖剣で斬れても倒せないね」

「この魔法が役立つ時が来たらいいけどね」


「きっとくるよ。そういう魔法自体が存在するんだから、邪族だっているはずだよ」


美香の言う通りだ。魔法自体があるのだから、私が想定した邪族がいてもおかしくない。


「うん、接近戦だけど、これで少しはみんなの役に立てるかな?」


「もう、夕実は足手まといなんかじゃないよ。みんなを驚かせるためにも、この魔法は秘密にしよう。私達の切り札だ!」


き、切り札!それは少し大袈裟なのではなかろうか?



○○○ 桜木春人 視点



散策中に図書館に立ち寄ったけど、邪心薬の情報は0だった。やはり、ハイエルフに聞くしかない。それが現状最も有効な手段だな。今日から地獄の訓練も再開か。王都までは、まだかなり距離があると聞いていたから、到着までにはもっと強くなれそうだな。


「真也、義輝、そろそろ出発時間だから下に降りよう」


下に降りると、バーンさんとリフィアさんが誰かと話し合っていた。美香と夕実に聞いてみるか。


「美香、何かあったのか?」


「ええ、私もさっき来たばかりで、内容は殆どわからないんだけど、東の村で何かあったみたいね。多分、討伐依頼か原因解明依頼てとこかな?」


お、話が終わったか。2人がこっちに来た。


「急だが、緊急依頼が入った。ここから東に30km程のところに長閑な村がある」

「村が邪族に襲われたんですか?」


「ハルト、話を最後まで聞け。30体のゴブリン討伐依頼だったんだが、どういうわけか村に向かったCランク冒険者5人が1週間経過した今でも戻って来ないらしい。3日前、新たにBランクの冒険者3人にも依頼したが、そいつらも戻っていないそうだ」


「それなら、他のAランクやSランクでも良いのでは?」


「おそらく、ただのゴブリンじゃない。何かあると思い、冒険者ギルドの長が直接俺達に頼みに来たんだ。それにハイエルフと謁見する以上、何か大きな実績を持っておいてた方がいいだろう」


確かに、邪族が絡んでいる以上、少しでも実績があった方がいいよな。


「わかりました。早速、向かうんですか?」

「ああ、まずは村が無事であるかを確認する事だ。みんな行くぞ!」



俺達は城塞都市マルティークを離れ村へ向かった。当然、地獄の訓練付きで!こっちの方が身体が喜んでいるのはなぜだろう?うん、深く考えないようにしよう。



距離が30km程という事もあって、1度休憩を挟み2日ぶりの模擬戦を行い感覚を掴んだ後、村に到着した。そして、俺達は驚くべき光景を目にした。


「ねえ春人、ここゴブリン30体の討伐依頼があった村だよね?」

「ああ、そのはずだ」


「おかしいですね。その村が-----どうしてこんな平和なんですか?子供達も普通に遊んでますよ?」


夕実の指摘も、もっともだ。あまりに平和過ぎる。


「師匠、この村で間違いないんでしょうか?」


「ああ、ここで間違いない。だが妙だな?邪族の気配がまるで感じられん。どういう事だ?」


「バーン、とりあえず村長さんに会って、話を聞いてみましょう」

「ああ、そうだな」


不思議に思いつつ、とりあえず村人に話を聞いてみたら、ゴブリンは最初来た冒険者達によって全て討伐されたらしい。その冒険者達も後から来た冒険者達も普通に王都へと帰って行ったそうだ。冒険者達のおかげで、今は到って平和だそうだ。


おいおい、聞いた話と全然違うぞ!実際、邪族の気配は微塵も感じられない。それなら行方不明の冒険者達はどこに行ったんだ?普通討伐依頼が成功したら冒険者ギルドに報告して、依頼料を貰うはずだ。ゴブリンとはいえ、30体もいたらそれなりの額になる。しかし、王都の冒険者ギルドに戻って来ていない----ということは、ここまでの道中で何かあったという線が妥当だな。


「義輝、俺はこう考えているがどうだ?」


「春人の考えで、まず間違いないだろう。だが、俺達がここに来る途中、邪族とも接触がなかったし、大きな気配も感じられなかった。情報が足りないな」


「そうだな、とりあえずは村長さんに聞いてみる」



さっき尋ねた村人に教えてもらった家に到着し、ドアをノックしたところ、1人の初老の男性が現れた。この人が村長さんか。俺達が訪問した理由を尋ねると


「これはこれは、Sクラスのバーンさんやリフィアさん、テルミア王国の勇者様方、わざわざ王都から来て頂きありがとうございます。ですが、ゴブリン30体は既に討伐されていて、冒険者方々もお帰りになっています。まだ戻っていないとなると、おそらく道中で何かあったのではないでしょうか?」


やはり、そうなるのか?バーンさんはどう判断するのだろうか?


「村長、今日1日だけ、周辺の様子を見て構わないか?」


「ええ、構いませんよ。せっかく来て頂いたんですから、宿と夕食はこちらで用意しておきましょう」


「人数が多いのに良いのか?」


「ええ、構いません。村の見回りをしてくれるんですから、これぐらいはさせて下さい」

「すまんな」


はあ〜優しい村長さんだな。

それにしても、こうやって見渡すと本当に長閑な村だ。ゴブリンは山手の森に現れたと言っていたよな。


「バーンさん、どうしますか?二手に分かれて行動しますか?」


「そうだな。山手にある森に関しては、俺・ハルト・シンヤ・ユミの4人、村内の見回りをリフィア・ヨシキ・ミカの3人で調査していくぞ」


「わかったわ。何かあったら空間魔法で連絡するわ」



○○○ リフィア視点



バーンと別れて、一通り村を散策したけど平和そのものね。


「リフィアさん、やっぱり何もないですね。王都に戻る途中で何かあったんですよ」

「ヨシキはどう思う?」


「正直戸惑っています。ここに来るまで、邪族の気配がまるで感じられなかった。もし、王都への帰り道で何かあったのなら、何らかの痕跡が残るはずです。それが何もないとなると、俺としてはこの村で何か起こったと考えているんですが、-----村自体が平和ですからね」


そうね、戸惑うのもわかるわ。


「これは私の直感だけど、この村に何かあると思うわ」

「「え、この村ですか!」」


「村に到着してすぐに、不愉快な視線を一瞬感じたのよ。今は、全く感じられないけどね」


「え!義輝、感じた?」

「いや、全くわからなかった」


「まだまだね。この視線を感じたのは、バーン以外にもいるわ。それは----ユミよ」


「「ええ、ユミが!」」


「あの子、自分がメンバーの中で最弱だというのを理解しているから、人一倍努力をしているわ。基本スキルである魔力循環や魔力操作、気配察知に関しては10になっているわね」


「俺でも、まだ6なのに」


「ユミは勘付いていると思うけど、スキルレベルはステータス上では10がMAXだけど、それ以上が存在するわ。サーシャの加護をもらってからは、私達もスキルレベルが以前より上がりやすくなってね。訓練を続けていくと、レベル10になっているのにも関わらず、魔力操作の扱いが上手くなっているのが自分でもわかるの。あなた達もレベル10になったとしても、訓練怠らないようにね。あら、話が逸れたわね。それで、一瞬感じた視線は、私達全員を舐めまわすように見て、すぐに消えたわ」


あの視線は一体何者なのかしら?邪族でないのは確かね。気配を感じなかったわ。


「その視線の奴が冒険者を?」


「それは、まだわからないわ。バーンも、その視線の正体を探るために森を巡回しているはず。何か手掛かりがあれば良いんだけどね?」



現状、村に異常は見当たらない。視線の主もわからず---か。


当初感じた異様な視線、行方不明の冒険者達、平和な村、何かが起こっているのはわかるんだけど、それが何なのか手掛かりが欲しいところね。


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