あやめのお笑い好きの理由
本編の数年前。
「あやめ!」
庭に黒い影が走ったと思うと、12、3歳くらいの一人の少年が現れた。
灰神黒曜だ。
「なにを観てるの?」
部屋に上がり込んだ黒曜は、テレビを観ているあやめに問いかける。
「これですよ」
あやめが見せたのは、とあるお笑いのDVD。
「お笑い?
ーーそういえば、ご当主と竜胆さんはお笑いが好きなんだっけ」
「はい。
なので、おふたりとも私にはお笑いのDVDを持ってきてくださるのです。
ーーお母様の選ばれるのはホラーなので、さすがに一人で観るのはちょっと……」
正直ホラーはあまり好きではない。
黒曜はあやめの家族の選択に呆れた。
「それじゃ、今度来るときはなにか面白そうなDVD持ってくる?」
「はい! 楽しみにしています!
その時は黒曜も一緒に観ましょう」
「うん。
約束するよ」
あやめと黒曜は微笑みあった。
これは学校に入る数年前の出来事。
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「黒曜、最近あやめにいろいろなDVD持ってってるんだって?」
「はい、あやめも喜んでくれてますよ」
「ーー何てことをしてくれたんだ!
もし、それが原因で、恋愛や外の世界に興味をもったらどうしてくれる!」
「ーーそれって、もしかして、ご家族全員の判断、ですか……?」
「当然だろう」
「(過保護にもほどがあるとは、こういうことをいうのかな?)」
「ーーなにを考えている?」
「いえ、過保護だな、と。
大丈夫ですよ。
あやめは許しがあるまでは、屋敷から出るつもりはありません。
だからこそ、外の世界を垣間見れる、ドキュメントなどのDVDを一番好んでいましたからね」
「む、そうか。
だが、恋愛だけは二度と持ってくるな!」
「(ほんと、過保護だなー)わかりました。
持ってくるのは、小説だけにしておきます」
「それも……」
「あやめがとある作家の小説を気に入っているんですよね」
「む、仕方ない……。
だが、それだけだからな!」
「はい、わかりました(やれやれ)」
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以上、あやめのお笑い好きの理由および、あやめの家族の過保護ぶりをご紹介いたしました!