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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第一章 白竜さんとカレー
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 翌日の夜明け前。私は町を出て一路サルクルの森を目指していました。


 服装は長袖長ズボンです。換えの服も二着ほど持って着ていますが、これが一番面積を食いました。でも乙女として同じ服ばかり着るのもだめですしね。

 そして食料を一週間分。こちらは大き目のハムを二本です。野菜も欲しいところですけど嵩張るので諦めました。現地調達しましょう。

 あとは小さめのお鍋、水符術十枚、水筒、スプーンにお玉、あとは自家製のお箸(単に枝を切って作ったもの)、テント、塩コショウなどの調味料、そして回復軟膏が三個です。

 これらが全部リュックサックに収まっています。あ、テントは丸めてリュックの外につけていますし、水筒とお鍋は脇に紐で結んでいますが。

 またウェストポーチも購入しておきました。こちらは空の小さな木の瓶が十本ほど入っていますが、薬草を入れるためです。

 念のため小さめのナイフも腰に差しておきます。武器というより、採取する時に使うものですね。


 準備万端です!


 《魔眼》で身体能力を底上げし、地面を蹴って高くジャンプしながらの移動です。正直他の人に見られると面倒そうな事になりかねないので、このような時間に出発しました。夜なら、しかもジャンプして跳んでいますのでそうそう目に付かないと思います。

 基本は夜中移動、昼はどこかで寝る感じですね。

 ちなみに《暗視》という能力もありますから、暗い日でも安心。


 道順は意外と簡単で、帝国内は大街道と呼ばれる商人の荷馬車が使う整備された道路が各主要都市を繋いでいます。

 港町ガイゼンや前線都市となるリルリも主要都市の一つで、互いに大街道で結ばれています。途中東に折れていくと帝都フィスティスへと向かうそうですけど、今回は特に用事はありません。

 でも帝都フィスティスはこの世界で最大規模の大都市らしいので、そのうち観光に行ってみたいですね。


 肝心のサルクルの森ですが、フィスティスへ別れる分岐点から三日ほどの距離にファーガイツ川と呼ばれる大きな川がありますが、その川に沿って西へ二日ほど行った先にあるそうです。

 その途中にヘンリメリトと呼ばれる小さな村があるらしいので、そこを拠点としましょう。

 多分サルクルの森の近くなので冒険者が訪れると思いますし、宿もあるでしょう。

 サルクルは難易度高の場所っぽいですし、ギルドマスターも高レベル冒険者しか許可していない、と言っていました。

 となると、そのヘンリメリト村は意外と便利な商品も売ってそうですよね。

 まあ高レベル冒険者相手の商売になりますから、お値段的には高そうですけど。



 薄っすら地平線に明かりが見えてきました。

 そろそろ夜が明けますね。

 まだ走り始めて三十分程度ですけど、既に三十キロくらいは走っているでしょうか。元の世界に行けばマラソンで金メダルが楽に取れます。


 さて、では野営準備にしましょう。

 どこか良い場所ないでしょうか。木の上があればそこでも良いのですけど、寝てるとき落ちたら痛いですし。

 かといって木の上に足場を作るのも面倒です。


 ……地面を掘れば無問題?


 そこそこの広さにして中にテントを張って、あとは穴を塞げばばっちりかも。

 中の空気が心配ですけど、小さな穴を開けておけばいいかな?

 穴があると蛇なんか入って来るかもしれないし、あとは地面に潜っているタイプの魔物も居るかもしれませんが、その辺は壁を堅くしておけばいいでしょう。

 生き埋めになったら困りますから、壁はしっかり強化しておかないと。



 そうして私は街道から外れた先の草原に足を踏み入れました。周りを見るも人影もなく、不自然な魔力の流れもありません。

 ではここにしましょう。

 お店の裏側に地下室を作った要領で、魔力の塊を作り上げ、それを地面へ上から押し付けるようにゆっくりと圧力をかけていきます。

 魔力の塊が徐々に地面へ埋まっていき、ある程度の深さまで到達したら、小規模になるよう爆発させました。

 ずずん、と下から振動が伝わり、どこか遠くで小さな鳥たちが慌てたように鳴きながら飛んでいくのが聞こえます。

 安眠妨害しちゃいましたね。


 さて、穴に下りてみましょう。

 飛び降りてみると、程よくテントを張るくらいの大きさはありました。さ、早いところ壁を補強しないと崩れてくる可能性があります。

 今度は周辺の魔力を使って壁となる土にぺたぺたと貼り付けるようにしていきます。感覚的には糊で固めている感じ。

 十五分程度で壁一面の補強は完了しました。


 さて、あとは食料の調達です。手持ちはありますけど、なるべく消費しないよう現地調達できるところは調達したいです。

 ではちょっとお外行ってきましょう。




 キノコがたくさん生えていましたので、今日はそれを主食にしたいと思います。あと特に珍しい薬草はありませんでした。しょんぼり。

 一応回復軟膏の素になるフィン草はあったのですけど、わざわざここで採らなくてもリルリの近辺でも採れますしね。


 毒キノコはこの世界にもたくさんあるのですが、《鑑定》で簡単に選別できます。調子にのってシメジっぽいものやシイタケっぽいものを十本くらい採ってしまいました。

 あと太いY字の枝を二本と単なる枝、そして小枝、枯葉を何本か拾ってきました。

 穴の上まで戻ってきて、鍋を取り出します。

 今日は水筒に入れてきた水で足りるので、水符術は使いません。

 Y字の枝を地面に突き刺し、太目の枝を上にのせて、鍋を引っ掛けます。その下に小枝を置いて、《発火》の魔法。

 《発火》は手先から二十センチくらい先の空間に火花を散らす魔法で、攻撃魔法というよりも火種用の魔法です。燃えやすいものに対して連続でかけると火が付くのですが、先に油をかけておくと効果的です。

 頑張って相手の目を狙えば攻撃魔法代わりにできますけど、手先から二十センチくらいまでですし、そのまま殴ったり指で目を潰した方が手っ取り早いですね。


 火を熾して鍋に水を入れ、そのままキノコをぶち込みます。

 茹で上がったら塩を振りかけて、オレオマエマルカジリ。


 あちちっ。

 でもほくほくでおいしいです。水炊き鍋を思い出しますね。

 これでポン酢か醤油があれば最高なんですけどね。


 採ってきたキノコの半分を平らげたあと、鍋に残った水に少しだけ切ったハムと塩を入れて再び煮込みます。

 二十分くらい煮込んだあと、それをスープにして飲み干しました。

 あまり汗をかいていないし、ちょっと塩分取りすぎかな?

 明日は控えめにしておきましょう。


 朝食を食べたあとは付近の散策です。さっきは食料採取を主体に探していたけど、今度は薬草を主体として探します。

 ざっと周辺を見てどんどん《鑑定》していきます。

 うーん、特にめぼしいものは見つかりませんね。もう少し遠くまで行ってみようかな?


 ……あ。


 街道側のほうにケイワ草を発見しました!

 ケイワ草はいわゆるニンニクっぽいもので、球根部分が疲労回復の素になります。

 ただしニンニクと違って焼くと効果が失われます。生で食べるか、みじん切り、或いはすり潰して別の物に混ぜて食します。

 これは後々使えそうですし、採っておきましょう。


 十本ほどケイワ草を採ったあとも周囲を探しましたが、残念ながら良さそうなものは発見できませんでした。



 鍋にケイワ草の球根を入れて、木の棒で押しつぶします。

 良い具合に潰れたところで《祝福》。それを《鑑定》すると体力増強薬になりました。

 すり潰した状態のままだと飲み難いでしょうし、ぎゅっと圧縮をかけましょう。適量を手にとって魔力を使い圧縮かけると丸薬になりました。

 良いですね、これは便利です。

 五個ほどになったので、それを木の瓶に入れて完成です。


 どの程度回復するかは不明ですけど、これはそのうち誰か疲労困憊の人に飲ませて見ればいいでしょう。


 よし、今日の所はこれでおしまいにして寝ちゃいましょう。



 私は穴の中に入り込んで、テントを張って眠りに付きました。

 おやすみなさい。


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