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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第一章 白竜さんとカレー
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短いですが、きりが良かったので・・・


「で、本気で行くつもりか?」

「はい、白竜というのも見たいですけど、それ以上に瘴気に充てられて育った薬草が欲しいのです」

「薬草? なぜ?」

「私、これでも薬剤師ですから」

「あそこ飲食店じゃなかったのか?!」


 べラムさんは余ほど驚いたのか、目を大きく開き身を乗り出してきました。

 唾が飛んでますって! きたないですっ!

 ポケットからハンカチを取り出して顔を拭くと、べラムさんは「お、おぅ、すまん」と言いつつ、元通り椅子に座りました。


 それにしても、それほど驚くことでしょうか? ちゃんとお店の看板にも『ナミル薬店』と大きく書かれているのに。

 どうやら認知度が低い様子です。



 今度からおにぎりと胃腸薬のセットで売りましょうか?



 まあ冗談はさておき、うちのお店もやはり宣伝は必要ですね。

 よく化粧品などは駅前でサンプルを配っていますけど、それを真似でもしてみましょうか。


「うちはれっきとした薬店です。ちゃんとアーヴェン様のところにも回復軟膏を納品しておりますよ」

「ほぅ。領主様のところ、と言う事は軍に回復軟膏とやらの薬を売っているのか」


 一瞬目がきらっと光るのが何となくわかりました。

 もしかして余計な事を言っちゃいました?

 軍に納入している、すなわち軍からの保証を得ている、となりますしね。

 もしかすると、大口顧客げっとちゃんす?


「まあそれは地図とは関係の無い話か。それよりサルクルの森へいくなら、うちに護衛依頼でもするか? サルクルまでの道中なら低ランクでも十分だろうし、それに確かシーレイの奴ら……Aランクパーティが一週間くらい前にサルクルへ向かったから、向こうでの護衛も頼めるぞ? どうせあいつら一ヶ月くらいは居るだろうし」


 護衛ですか。別に必要ないのですけどね。

 でも私を普通の十二歳の子供と思えば、確かにこれだけ心配するのも不思議じゃないです。


「ちなみに、護衛料ってどの程度かかるものなのですか?」

「そうだな、道中まではEランク三人くらいで……向こうで一週間程度滞在とすると……銀貨五百枚くらいか」

「たかっ!」


 日本円で五百万ですよ?

 あーでも、サルクルの森まで片道一ヶ月、それが三人分。あと現地で数人一週間。しかも先ほどAランクと言ってましたし、単価が高いのでしょう。

 それだけの人数を一ヶ月から二ヶ月拘束するのですから、五百万かかっても仕方ないですか。


「まあな。Eランク三人なら護衛料もそこまでかからんだろうが、Aランク五名で一週間護衛となると、やはり高くなってしまうのは仕方ない。しかしサルクルの森に入るなら、護衛料はそれくらいかかるものと思ってもいいぞ」


 やっぱり冒険者って儲かるんですね。

 鉄貨一枚のおにぎりを売るなんて薄利少売・・するより、私も冒険者になろうかしら……。

 命をかけているからこそ、それだけの対価があるのでしょうけど。


「さすがに銀貨五百枚はどう頑張っても出せませんよ」

「そうだろうなぁ。まあさっきも言ったが俺に嬢ちゃんを止める権利はねぇ。が、絶対一人で行くなよ? 領主様と繋がりがあるんならそっち使え。俺も嬢ちゃんの作ったおにぎり、また食いたいしな」


 真剣に訴えるように見つめてくるべラムさん。

 べラムさんにとって私は単なるおにぎりを売っている子供。全くの垢の他人だと言うのに、心配してくれているのが分かります。何だか嬉しい気がします。

 リューザル男爵家で育ったときは、これほど心配してくれる人は居ませんでしたから、人の優しさというものをひしひしと感じてしまいました。


 あー、何だか顔がほころんでしまいます。


「分かりました。アーヴェン様に頼んでみます」


 私はそれを隠しながら椅子から立ち上がり、部屋から退出しました。

 再び水晶玉が点滅するのを尻目に……。



 てへっ。



 △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



 ギルドを出た私は、まず旅の準備をする為に雑貨屋さんへ向かいました。

 常人が徒歩一ヶ月かかる距離なら、私は十日ほどで到達できます。

 往復で二十日、滞在期間を十日とすると全部合わせて一ヶ月は旅に出る計算となります。


 旅をする上で、まず必要になるのが食料です。

 現地調達することも可能ですけど、獲物がいない可能性だってありますから、数日分は必要になります。

 そして水と塩。

 どちらも生きていく上で必須のものですね。

 しかし塩ならともかく、水は非常に重く嵩張ります。

 人が飲む水の量は一日最低二リットルくらいでしょう。それ以外にも料理にだって使いますし、洗い物にも必要ですし、更に言えば万一怪我した時の傷口を洗い流す場合もありえます。

 それを考えると一日五リットルは見ておいたほうがいいですね。

 そして片道十日と考えると五十リットル。五十キロです。私より重いですね。そんなものを馬鹿正直に背負っていくなんて普通に無理です。


 しかしこの世界には魔法という便利なものがあります。

 でも私は簡単な火の魔法しか使えませんし、世の中魔法の使えない人だって居るでしょう。


 そこで符術と呼ばれるものがあります。


 これは魔法がかかっている符で、魔力を注ぐ事により簡単な魔法を行使できる優れものなのです。一回限りで使い捨てなのですけど、旅をする人なら必需品と言っても過言ではありません。

 水を出す符を二十枚くらい買っておけば、持って行く水は不要となります。

 もちろん攻撃に使えるような高度な魔法は符に出来ませんし、可能だとしてもとても高価でしょう。でも単純に水を出す、火をつける、程度の符なら雑貨屋でお安く売っています。だいたい銅貨一枚程度(千円くらい)ですね。


 あとは保存の効く食料と調味料、小さな鍋、そして野宿するのに必要なテント類、雨具と言った所でしょうか。

 これらを入れるリュックも必要ですね。

 うーん、意外と初期コストかかっちゃいますが、これからも薬草を探しにいくでしょうし、あった方が便利です。


 他にはアーヴェン様に一月ほどお店を休むことを伝える必要ありますね。なんと言っても最大の顧客で且つお店のオーナーさんですし。


 今日中に全部終わらせて、明日出発できる様に頑張りましょう。


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