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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第二章 冒険者ギルド
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 お店に戻ってきました。

 いつもは女性客でにぎわっているのですが、今日は臨時休業の札がドアにかけられていました。

 さすがレイちゃん、しっかりお仕事やっていました。今からランチはさすがに遅くて作れませんしね。



「レイちゃん、ちょっと聞きたい事があるのですけど良いですか?」



 そう言いながら札のかかっているドアを開けて店内へ入ると、お店の椅子に座ってまどろんでいるレイちゃんがいました。

 窓から差込んだ光りがレイちゃんを照らしていて、ものすごく絵になります。白い髪が光を浴びてまるで天使(笑)ですよ。カメラがあれば撮りたいところですね。


 そして私が来たことに気がついたのか、うっすら目を開けました。少し視線がさ迷ったあと、私の手に持っているお肉に気がついた瞬間、カッと目が開きました。


 やはり肉食なんですね。



「ギルドとやらに呼ばれた件は?」



 何気なく答えているものの、意識はお肉へと向かっていますよ、この白竜。やっぱりペットっぽいですよね。

 ちゃんとご主人様の許可が下りるまで、待て、を実行しています。



「それは後で話します。まず、サルクルの森なんですけど、ボスのレイちゃんが居なくなった場合、どういう風になるか分かりますか?」



 まずは一番気になっている点です。

 おそらく別の魔物がボスになると思うのですけど、一体どんな魔物がいるのでしょうか。

 暫く考え込んでいたレイちゃんでしたが、私の質問の意図を読んだのか、端的に答えてくれました。



「おそらくポイズンクラブが出張ってくるな」

「ポイズンクラブ? それって魔物なんですか?」

「我がサルクルに来る前に居たボスだ。両手に巨大な鋏を持っていて、甲羅を持つ八本足で横にしか動けん奴だ」



 ……カニですよね、それ。

 レイちゃんが来る前はカニのボスだった、と言う事は水の精霊力が強い白竜の影響で、サルクルの森に水の魔物が増えたのではなく、元から海や水の魔物が居たって事ですか。不思議ですね。



「やけに硬く、猛毒を撒き散らすやっかいな奴だ」

「倒さなかったんですか?」

「……倒し切れなかった。もう十回以上は戦っているが、いつも倒しきれずに逃げられている」

「つまりレイちゃんのライバルですか」

「はっ、次会ったときこそ、奴の甲羅ごと凍らせて粉砕してくれるわ」



 やはりライバルでしたか。

 でもレイちゃんはこれでもSSSランクの白竜です。それに負けないくらいの魔物がいるのですね。


 ……最近カニ食べていませんし、ちょっと興味あります。



「ナミル殿、何よだれを垂らしているのだ?」

「あ、いえいえ。な、何でもありません。そ、それよりそのカニは、森から出て人を襲うとかしますか?」

「いや、せぬな。あ奴も強い者と戦うことを生きがいとしておる。脆弱な人をわざわざ襲いには行かぬ」



 なんだ。人を襲うような魔物でしたら、さくっと行ってカニ鍋の具材にしてあげようと思いましたのに。



「なにやら残念そうだな。しかしそれがどうしたのだ? ギルドとやらに呼ばれたのと関係があるのか?」

「はい、飛竜レックリャという魔物をどうにかしてほしいらしいです」

「飛竜か。相手にとって不足はない」

「レイちゃんからすれば下位の竜種じゃないですか、不足だらけですよ。あ、今回レイちゃんはお留守番です」



 私の言葉にとても驚いたのか、椅子からずり落ちるレイちゃん。そんなコントのような事をやらなくてもいいのに。

 そして立ち上がると、私の前につかつかと駆け寄ってきました。



「な、なぜだ? 我が行けばレックリャごとき一瞬で終わらせるぞ?」

「今回は討伐ではないのですよ」

「どういう意味だ?」

「えっとですね。その前に一つ聞きたいのですけど、竜種って食べ物は食べないのですか?」



 そう言いながら、手に持ったお肉をレイちゃんへあげました。

 待ってました、とばかりにかぶりつくレイちゃん。お行儀悪いです。

 私もゆっくり食べ始めました。



「下位の竜種なら食物を摂取する必要はあるが、上位の竜種は食べなくとも魔力を取り込めば生きていける」



 あっという間に一本食べたレイちゃん。

 いや、竜種もしっかり食べてるじゃん。



「ここにいる上位の竜種は食べてますね」

「ご、ごほん。食べなくても生きていけるだけで、食べられなくはないのだ」



 人族の作る食べ物がこんなに美味いとは思わなかったのだ、なんてぼそぼそ言っています。

 最後の一本をレイちゃんへと渡しました。



「レックリャも上位種ですよね」

「もぐもぐ、うむ」

「もぐもぐ。なぜかここ数ヶ月、そのレックリャが近隣の村々の家畜を襲っているらしいのです。何か心当たりありますか?」



 またもやあっという間に食べきったレイちゃん。

 早いよ。



「魔力を取り込めないようになったからであろう」

「どういう原因があると思いますか?」

「高齢による魔力を取り込む器官に障害、或いは何らかの病、ぐらいだな。そのレックリャはどの程度年齢を重ねているのだ?」

「冒険者ギルドにあった記録だと、百年ほど前から居るそうです」

「飛竜は五百年程度の寿命で、一度縄張りを決めると死ぬまでそこに住む。百年前に記録が残っているということは、まだそれほど年は重ねておらぬな」

「ずっと昔から住んでいたかもですよ? 或いは年を取ってからそこに住み始めたとか」


 そう言うと、首を横に振って否定されました。

 むー、違うのかな?



「いや、飛竜は成体になってすぐ縄張りを求めてさ迷う。年を重ねるまで縄張りが見つからないという可能性は低い。それに縄張りに入ってきた異端なものは基本的に襲う性質を持っているのだ。その場所は人の住む場所から近いのだろう? ならば人が襲われる、目撃されずに何百年も見つからないという事はなかろう」

「へぇ、さすが同種族です。詳しいですね」

「これは我ら白竜の、太古より延々と伝えられる知識である」



 うわ、めちゃくちゃ偉そうにドヤ顔されました。



「今度からレイちゃんの事は、ググる先生と呼んであげます」

「……なんだそれは」

「私の故郷で、ものすごく物知りな人に対する敬称です。それはさておいて、では何らかの原因で魔力を吸収できなくなった、と言う事ですね。病気でしょうか」



 目を塞ぎ、何か考えるレイちゃん。

 きっと頭の中では約三十件、二秒など表示されていますよ、きっと。

 そして優に一分くらい考えたあと、目を開きました。



「魔力欠乏症という病があるらしい」

「魔力……欠乏症……ですか」

「体内に魔力が吸い込まれる穴が出来て、自分の魔力をどんどん吸収していく病気だそうだ」



 なにそれ怖い。

 ブラックホールみたいなもの?



「どれくらい魔力が吸収されるのですか?」

「その穴は別次元へと繋がっていて、底なしらしいのだが詳細は不明だ。まあ病というより、呪いの一種だな」

「呪い……」

「呪いのやり方は不明だが、何らかの呪をかけた丸薬を飲ませるらしい」

「知らないんですね」

「元々、遥か古代の人族が編み出したものだ。白竜である我らが詳細を知らぬのも仕方あるまい。人族如きがかけた呪など、我らには効果ないしな」

「そりゃー魔法に強い白竜なら効果ないでしょうけど、飛竜はどうなんですか?」

「竜種と一口に言っても、魔に対する抵抗が高いのは純粋な竜のみだ。それ以外の亜種なら人族程度でも抵抗を破れるくらいの呪はかけられるだろう」



 つまり、飛竜レックリャなら魔法に強い人なら呪えるのですか。もしかすると、誰かが討伐しようと呪をかけた可能性もありますね。



 ……これは少し調べたほうが良さそうです。



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