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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第二章 冒険者ギルド
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 さて、おにぎりも無事完売しました。今日は販売開始から三十分で完売です。早いですね。

 列は女性客がレイちゃん、男性客が私と見事に別れていたのが印象的でした。

 しかもおにぎり買うついでに、握手してください、と言われていましたし。


 そのうちレイちゃんコンサートでも開いたほうがいいですかね。


 ま、それは良いとして、そろそろギルドへ行きますか。

 お店の側でシーレイさんが待っていますしね。


「ではレイちゃん、あとは任せました」

「後は我に任せるが良い」


 と言っても、実際は店内でお留守番なのですけどね。

 どうせ薬なんて売れませんし……。しょんぼり。


 いつかレイちゃんがハーブティの淹れ方を覚え、軽食を作れるようになったら彼に全面的にお店をお任せしてもいいですよね。

 そして服装は当然執事服。

 執事服に身を包んだレイちゃんイケメンが『お嬢様方、いらっしゃいませ』と出迎えてくれる喫茶店ですよ。

 でもって店内では楽器(この世界の楽器って何があるのでしょうか)を演奏させたり、観葉植物を飾ったり、レイちゃんとのツーショットを撮る、もしくは絵を描く。

 そして完全予約制で入店料に銅貨五枚(五千円)で、お茶も一杯銅貨一枚、軽食事が銅貨五枚くらい。うわー、ぼったくりです。

 でもそうなれば、私は左団扇でニート生活できそう。



 私のささやかな夢が広がりますね!



 そして余生はのんびりハーブでも育てながら、ゆっくりと過ごしたいですよね。

 十二歳の子供が考えることじゃないですけど。



「行かなくて良いのか?」

「あ、はいっ、行きます行きますっ!」


 つい妄想してしまいました。

 ではギルドへ行きましょ!

 そして私が走り出そうとしたとき。



「ちょっ、ナミルちゃん置いていかないでっ!!」



 あ、シーレイさん忘れてた。



 △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



 シーレイさんの後をついてギルドへと到着しました。

 以前、地図を見せてもらったときは受付嬢のリリーさんに案内してもらいましたが、さすがAランク冒険者、顔パスでギルドマスターの部屋へ直行でしたよ。


「ギルドマスター、つれてきたよ」


 でもって、扉をノックもせずいきなり開けたシーレイさん。

 マナーってもの知っているのでしょうか。


「ノックくらいしろよ、シーレイ」

「いいじゃない」


 中には渋い顔をした大柄の男性、ギルドマスターのべラムさんがシーレイさんを座りながら睨んでいるのが目に入りました。

 なかなかの迫力です。

 シーレイさんはAランク冒険者ですけど、やはり経験の差か年齢の差か、威圧感はギルドマスターの方が遥かに上です。


 そして私はシーレイさんの後ろからひょこっと顔を出して、挨拶をします。


「べラムさん、お久しぶりです。最近おにぎり買ってくれないのですね」

「第一声がそれかよ。この前よったら女の客が増えててな。買い難いんだよ」

「あ……」


 男性は女性客が多いと買い難いものなのでしょうか。

 でも生前、フルーツパーラーやケーキバイキング行くとたまに男性客もいらっしゃいましたが、何故か肩身狭そうにしてました。

 私的には平等にお金は払っているのですから、堂々としていればいいのに、と思うのですけどね。

 でも私も牛丼屋やラーメン屋は入りにくかったですし、お互い様でしょうか。



 そういえばラーメンといえば、たまにおいしいラーメンとか食べたくなりますよね!



 だめです、ラーメン食べたくなってきました。

 でも作るにもスープとかどうやって作ったら良いのか分かりません。いえ、作り方は知っていますけど、さすがにラーメン専門店のクォリティはまず素人では作るの無理でしょうし。


 いつか食べたいな。

 まあそれは置いといて。


「で、今日は何の用事でしょうか?」

「ナミル=イクランに対する、冒険者ギルドリルリ支部の意思決定の伝達と、そして依頼だ」

「依頼……ですか?」

「まあ座れ。それとシーレイは後ろで立ってろ」

「えええっ!?」


 廊下で立っていなさい、的な言い方でした。

 思わずくすりと笑うとシーレイさんが恨めしそうに軽く睨んで、それでもギルドマスターには逆らえないのか素直に立ちました。


 そして私は見せびらかすようにゆっくりと椅子に座ると、ギルドマスターが口を開きました。


「まずは見解からだ」

「はい」

「前提として、ナミル=イクランはその力を帝国内へ周知する事は否とする。それで間違いないな?」

「ええ、ばれて面倒な事になりましたら、即効ここから立ち去ります」

「ふむ、サイズの言ったとおりか。では、リルリ冒険者ギルドのギルドマスター、べラム=ノーレ=ストライザがナミル=イクランに対する見解を伝える」


 そこで一旦区切り、目を塞いだあと重い口調で再び言葉を繋ぎました。


「当ギルドとして、ナミル=イクランをAランク冒険者に認定し、且つリルリ支部直属の冒険者としたい」

「お断りします」

「即断っ?!」


 シーレイさんが驚いています。


 でも面倒そうじゃないですか。

 冒険者に登録するのは、確かにメリットはあります。でも当然デメリットも存在するわけで。

 私はあのお店でゆっくり暮らしていきたいので、まずお店が一番優先度が高いのです。それに回復軟膏をアーヴェン様へ納品する必要もありますしね。

 でも冒険者になると、当然冒険者ギルドの依頼が一番優先度高くなります。暇になったら適当に依頼をこなせばいい、という訳にはいかないでしょう。


 でもべラムさんは、私が断るのは分かっていたのか、特に変わらないまま再び話してきました。


「まあまて、断るのはまだ早い。当ギルド直属冒険者になる代わりに、もちろん月々の手当は出すし、この街の危機が起こらない限り依頼などは出さない。それともちろん他のギルド支部やギルド本部、並びに他の街や中央政府にはナミルの情報は一切出さない」


 譲歩してきましたね。

 まあこの街にお店兼住居を構えているのですから、この街に危機が来たら対応するのはやぶさかではありません。


 ……でも。

 ギルドマスターは、さっき意思決定の伝達と、そして依頼・・と言いました。

 思いっきり最初から依頼する気満々じゃないですか。


「先ほど依頼って言いましたよね。もうリルリに何か危機でも起こっているのですか?」

「いや、リルリではないが、相手がやっかいでな。SSランクの魔物でシーレイたちでは荷が重いんだ。それとこれは領主様にも了解は得ている。というより、領主様がナミルにやって欲しいと言ったのだ」

「アーヴェン様が?」


 意外です。アーヴェン様からの依頼ですか。そういわれると断りづらいです。

 アーヴェン様にはリルリの住民登録と、お店を殆どタダ同然で用意して貰いましたし、色々と借りが多いのです。

 トロールから助けたお礼としては、少し借りが大きいんですよね。

 それにSSランクの魔物ってことは、あの亀さんと同じくらいの強さです。と言う事は、シーレイさんたちじゃ荷が重い、どころか無理です。


 ……あれ?


 アーヴェン様には、私がトロールを倒せるくらい強い、という事は知っていると思いますけど、SSランクを倒せるくらい強い、と言う事は知らないんじゃないのでしょうか。

 もしかして、べラムさんがアーヴェン様に話した?


「……なぜアーヴェン様が、私がSSランクを倒せる強さを持っていると知っているのですか?」

「あのな。領主様は九剣ナインソードの一本であり、帝国最上級騎士だ。一目でナミルの異常さには気がついていたぞ」

「ええっ?!」

「まともに戦えば、万に一つも領主様は勝てない、とおっしゃっていた」


 なんと。

 九剣ナインソード、とかいう仰々しく痛々しい名なのに。ちゃんと見られていたのですか、侮れません。


 さて、アーヴェン様は皇族です。とても偉い人です。

 彼に知られた、と言う事は既に皇族内には知られている可能性があります。

 皇族内とは、すなわち帝国全て、と言い換えてもいいでしょう。



 に、逃げる準備必要?!



「既に私の事はもう帝国全土に知られている、と言う事ですか」

「いや、領主様は中央政府へ報告していない、とおっしゃっていた。そして今後も政権が急変しない限りナミルの事は己の中に留める、ともおっしゃっていた」


 アーヴェン様までも、私をジョーカー扱いしているように聞こえます。

 まあ既にお店も頂いているようなものですし、囲われていると言われればその通りとしか言いようがありませんけど。


 もしかして、私を釣る為にお店を用意したのでしょうか。

 そんなエサに釣られくまーって奴です。

 喜んでほいほいと食い付いた私って馬鹿ですね。



「政権が急変って、帝国は不安定なのですか?」

「現皇帝陛下はもうお年だしそろそろ交代なされると思うが、皇太子が次の皇帝陛下になられる事は決まっているし、不安定ではない。まあ不安定になるのは、その次だな」

「それって何年後の話なのでしょうか」

「さあな。十五年から二十年は先じゃないか?」


 さて、どうしましょうか。


一旦区切ります


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