二十一
あれ? なんだかコメディっぽいですね
それにしても自分で書いておきながらナミルさん鬼畜・・・
「…………」
「…………」
「…………」
いきなり沈黙で始まってしまい、申し訳ありません。
カレパの次の日の朝、シーレイさんたちとリルリへ帰る段階なのですが、シーレイさんたちが乗っている馬が、レイちゃんを見てびびっているのです。
何とか頑張って宥めているものの、どうにも収まりそうもありません。
動物の本能なのでしょうか。
サイズさんもレイちゃんを『そうとうヤバイ奴』と言ってましたから、分かる人にはわかるのでしょうか。
あ、別にサイズさんの本能が動物とは言っておりません。
「ナミル殿、これでは馬に乗れないし、我はこのままここへ残っ……」
「却下です」
「くっ」
今更何を嬉々として言いますかこの白竜は。毒食わば皿まで。
それにあなたなら別に馬に乗らなくとも、空飛んでいけばいいだけですよね。むしろレイちゃんのほうが先に到着します。
まあでも、さすがに竜の姿で飛んでいけばきっと途中の町はパニックになりますし、それ以前にシーレイさんたちには、あまりばれたくありませんしね。
と言う事で。
「ではレイちゃんは私と一緒に走って帰りましょう」
「は? この姿のままでか?」
手を広げて更に足も広げるレイちゃん。もちろん人の姿のまま走るに決まっています。白竜が走ったら……いえ、そもそも走る必要はないのですが、仮に走ったら地響きが鳴り捲りでご近所迷惑でしょう。
「この姿? あー、その着物は走りにくそうだしね」
シーレイさんが自己解決してます。まあ普通は着物の方を見ますね。
「あなたは森の中で一日中食っちゃ寝してたのですし、ここらで一つ運動不足解消です。別に私はシーレイさんたちの馬に乗せてもらう事もできますけど、優しい私はレイちゃんと一緒に走ってあげます」
「そんな優しさはいらぬ」
「まてまて。さすがにここからリルリまで走るのは無茶じゃないのか?」
サイズさんが突っ込みを入れてきました。でもですね、無茶じゃないのですよ。
私は元よりレイちゃんだって白竜です。竜の体力なら十分リルリまで走れるでしょう。
「私はここへ来るとき走ってきましたから、大丈夫ですよ。人間為せば成ります。何なら競争しますか?」
「なあレイヴェン、お前も大変な主に仕えたものだな」
「全くだ。飛んでいけば良いものを、わざわざ地面を走るなどと」
「飛んで??」
「いえいえ、レイちゃんは魔法の達人なのです。空を飛ぶ魔法を使えるのですよ」
「飛翔魔法!? それって遺失魔法だよっ?!」
食いついてきたのがエレシアさん。そうか、空を飛ぶ魔法って失われているのですか。しまったなぁ……。
魔法だから何でもありと思って安易に答えたのはまずかったですね。
「いや、我はわざわざ魔法を使わなくとも普通に……」
「だまらっしゃい!」
「…………」
これ以上場を混乱させてはいけません。
ここは無理やり走らせましょう。うん、それが一番です。
「さあレイちゃん、明日に向かって走りますよ!」
「さすがの我でも時空魔法は扱えぬが」
「時空魔法っ?! それも遺失魔法だよっ?!」
「そういう意味じゃないですっ! つべこべ言わず、とっとと走れ!」
「ぐほっ?!」
私の回し蹴りで遠くに飛んでいくレイちゃん。百メートルほど先に墜落し、村人たちがびっくり慌てふためいているのが見えました。
それを唖然と見ていたシーレイさんたち。
「あれが空を飛ぶ魔法です」
そんな彼らに向かって、ドヤ顔でご説明いたしました。
「……人がああも簡単に飛ぶものとは思わなかった」
「ナミルは怖いのじゃ……」
「魔法というか単に物理だよね」
「新しい物理魔法の成功を神に感謝です」
「ナミルちゃんってやっぱりサドだったんだね。イケメンと美少女のくんずほずれつが……ぐふ、ぐふふふ」
それぞれ突っ込みを入れたいところですが、一番はシーレイさんです。
この人、もしかして腐っているんじゃないですかね。サイズさんとの関係もはぐらかされましたし。
「シーレイさんも飛んでみますか?」
そう問いかけると、シーレイさんは首を思いっきり横に振りまくりました。
そのまま飛んでいきそうな勢いですよ。
「あ、あたしは見るのが好きなだけで、実演はいらないよっ!」
「遠慮しなくても、これなら魔力も使わず飛べますよ?」
「遠慮するわよっ! さ、みんな出発するよ!」
「「「おーー!」」」
慌てて馬に飛び乗って号令をかけるシーレイさん。それに呼応するように他の人も馬に乗りました。
ああ、仲間って感じですね。
何だか楽しいです。
そんなこんなでようやくリルリ目指して出発した私たち。
今回の旅で得るものは多かったです。特に新しい薬草がたくさん手に入ったので、色々薬を作るのが捗りますね。
それにカレーのスパイスである、クミンとウコンもちゃんと根から掘り出して、木のコップに移しました。
これは家の裏庭で栽培する予定です。
リルリはここに比べ気温が低いので、ビニールハウスみたいなものを作る必要もありますね。
増産に成功すれば、カレーもお店で売ることにしましょう。
楽しみです!
でもまずは……皆がリルリに無事着きますように。
……あと、地面に激突したレイちゃんは私が回収し、背負っていきました。
全く手間のかかる下僕ですね。
これで第一章が終わりになります。
第二章については、これからプロット考えますので二週間ほどお待ちください
その間、第一章の改稿と、閑話を3話ほど追加いたします




