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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第一章 白竜さんとカレー
15/33

十三


 あれから一時間ほど経過しました。シーレイさんの予定通り、きっかりサルクルの森手前近くに到着です。

 そして、ちゃんとお尻を守ったおかげか、すっかり痛くなくなりました。魔力障壁最高です!


「あれがサルクルの森ですか」


 まだ何キロか距離はあるものの、かなり横に大きく広がっています。ファーガイツ川も森の中に続いていて、《魔眼》の《魔力透視》で視ると様々な魔力の流れが確認できました。

 魔力の揺らぎが人と全然違いますから、かなりの魔物かそれに類するものが生息しているようです。


「じゃあここから歩いていくからね」


 シーレイさんがそういうと馬から下りて、手綱を近くの木に結び付けました。

 森のすぐ側でなくある程度距離を置いたところに止めたのは、ここに馬を置いいていくためだそうです。

 馬に乗って森の中へは入れませんしね。


「よしみんな、ここから気を引き締めていくぞ」

「はい」


 サイズさんが声をかけて出発しました。

 先頭は盗賊のサイズさん、次に重戦士デヴィハさん、真ん中に私と左右に神官ピーリさんと魔法使いエレシアさん、最後尾が剣士シーレイさんです。

 護衛対象ですから私が一番真ん中なのはわかりますけど、こう左右に人がいると動きづらいですね。




 三十分ほど歩いて森の入り口に到着です。

 特にここまでは何もありませんでした。まあただっぴろい場所でしたし、視認もしやすかったですしね。


「まず俺が先行するから、ナミルちゃんはデヴィハのいう事を聞いてくれ」

「えー」

「聞・い・て・く・れ」


 そんなに怖い顔しなくてもいいじゃないですか。ちょっとしたお茶目だったのに。


「……はーい」

「全く……緊張感が足りない」


 不満です。

 だってさっき魔力の揺らぎを見ましたが、私が勝てな・・・さそうな・・・・魔物って視えなかったんですよ。

 強い魔物であればあるほど、揺らぎが大きいのです。まあ中には隠蔽するような魔物もいるみたいですけど。


「ナミルよ、入るぞ」

「お願いします」


 サイズさんが森に入ってから一分後、続いてデヴィハさんが先導して中へと入っていきました。

 私とピーリさん、エレシアさんがその後を付いていきます。



 …………?



 と、森へ一歩入ったとき、一瞬何か違和感を感じました。

 誰かにられたような……?

 《魔力透視》で視線を感じた方向を確認すると、ここからかなり奥深くにとても大きな魔力の揺らぎがあるのが分かりました。

 あれ? 外から見た時は、あれほど大きな揺らぎは視えなかったのに。

 もしかすると何らかの結界が張られているのかも知れません。それか魔力を隠蔽できるほどの魔物が居たのでしょうか。


 ま、視ているだけで害が無ければ別に問題ないでしょう。



 △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



「何ここっ! お宝の宝庫じゃないですかっ!!」


 《魔眼》で周りにある薬草を《鑑定》すると、もう目にするもの全てが珍しい薬草ばかりでした。

 フィン草、エネモラ草、ケイワ草、アサム草、レッテイ草などなど、解熱や解毒の薬を作るのに必要な薬草がたくさん生えていました。

 あちこち移動してそれらを採取し腰のポーチへ入れ、そしてデヴィハさんに首根っこを掴まれて隊列の真ん中へ戻される、ということを数回繰り返したほど私は狂喜乱舞していました。


「こりゃ、落ち着かんか」

「だってだって! 垂涎物の薬草ばかりですよ? これが落ち着いていられますか!」

「大声出すんじゃない。魔物に気づかれる」

「ナミルちゃんって何となく大人しい子かと思ってたんだけど意外とアレだよね」

「うん、私も驚いたよ」

「ナミル様、珍しい薬草と出会えたのも神に感謝したからです」


 掴まれながらじたばた暴れつつ、ポーチをもう一つ買っておくべきでした、と内心反省しつつ、それでもどうやってもっとたくさん採取できるか考えていると、不意に視界の端に魔力のゆらぎが視えました。


「あ……」

「どうしたのじゃ?」


 突然動きを止めた私にデヴィハさんが訝しげな表情を浮かべました。


「どうしたの?」

「敵です。魔物が一体こちらへゆっくり向かってきてます」

「え? なぜそんな事が分かるの?」

「先行しているサイズはどうしたのじゃ?」

「サイズさんが行った方向とは少し違います。あっちですよ」


 私が指を指すと同時に一体の狼が姿を現しました。そこまで大きくなく、精々体長一メートルといったサイズです。

 ただし、口にはきんきらと輝く二本の大きな牙が生えていますけどね。


「ダイヤウルフじゃ! 戦闘準備! シーレイ、他に敵がいないか周囲を確認しつつわしのサポートじゃ! エレシアは風で動きを封じる! ピーリは治癒の詠唱だけしておけ!」


 デヴィハさんの指示が飛んだ瞬間、ピーリさんとエレシアさんが私を挟むように立ち

、シーレイさんがデヴィハさんの後ろへと移動しました。

 そしてデヴィハさんは戦槌と盾を構えて、ゆっくりダイヤウルフへと近寄っていきます。


 おお、連携取れていますね。さすが手馴れた感じです。アーヴェン様たちの戦いとは比べ物にならない連携です。

 あれは新人の騎士ばかりでしたから、比べちゃいけないのでしょうけど。


 初めて見る冒険者の戦いです。

 さて、Aランクの冒険者がどの程度強いのか見学しましょう。


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