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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第一章 白竜さんとカレー
13/33

十一


 村の中央通りらしき道をまっすぐ案内されました。中央通りと言っても区画整理は一切されていませんので、少しうねうねっとしていますけど。

 まあ人口なんて百人も居れば良いほうでしょうし、建物の数も二十棟あるかどうかです

 ……ん?

 何やら一階から声が聞こえてきますね。騒々しいです。

 かび臭い布団でしたが、眠気に負けて熟睡してた模様ですね。

 今、何時でしょうか?


 寝ぼけ眼で窓の外を見ると、もう真っ暗でした。


 ……。

 …………。

 ………………。


 寝すぎたっ!?


 しまったぁぁぁぁ、夕方に雑貨屋を覗きに行こうと思ってたのに!

 それだけ疲れていたのでしょうか。自覚が無いのは少し危険ですね。


 ああもう、急いで起きて夕飯の支度しなきゃ!


 ……何で私は宿に泊まって夕飯の支度を考えなきゃいけないのか疑問に思います。

 まず干していた布団を仕舞い、次に部屋に備え付けの水で寝癖だけ手で軽く直して、寝る前に脱いだ上着を羽織り、部屋の外へ出ました。

 すると何やら笑い声が響いてきました。

 あー、うるさいです。

 多分出かけていた冒険者たちが帰ってきたのでしょうね。一杯飲んでいるのかもしれません。




 一階へ降りると案の定、五人の冒険者がお酒を飲みつつ、おつまみを食べていました。男性が三人、女性が二人ですね。

 五人のうち三人は人族ですが、残りは……ドワーフとエルフ……でしょうか?

 初めて見ました。話には聞いていましたけど、本当に居るのですね。これこそファンタジーです。

 魔物がいる時点でファンタジーな世界ですけどね。


 ドワーフはイメージ通り髭が豊かで背丈は私と殆ど変わらないものの、異様に筋肉が発達しているように見えます。

 腕なんて私の五倍はあるのではないでしょうか?

 その太い腕の先には大きなジョッキを握り締め、まるで水のようにお酒を飲んでいます。それでも顔は殆ど赤くなっていません。

 酒豪というのは本当だったのですね。


 そしてエルフの方は女性です。十代中ごろに見えますけど、多分見た目通りの年齢じゃないのでしょうね。森の妖精と呼ばれるのも納得できるほど整った容姿です。切れの長い細い眉にきめ細かい白い肌、長い緑色の綺麗な髪、もはや芸術品です。

 あれだけ綺麗ですと、嫉妬を通り越して羨ましい、の一点です。

 でも意外とふっくらとした体つきで耳も思ったほど長くありません。もしかするとハーフエルフかも知れないですね。


 まあ、どちらにせよ私には関係の無いことです。とりあえず夕飯作らなきゃ。

 食材は何があるのでしょうか?

 ……と、宿のオーナーの姿をぐるっと探すと、彼はまだ受付の奥に座っていました。騒いでいる冒険者たちを見ながら、まだまだ若けぇな、的な表情をしています。

 そして私が降りてきたことに気がついたのか、指で受付の隣の扉を指しました。

 そっちに厨房があるのでしょう。

 素直に話せば良いのに、なぜ指だけで示そうとするのかわかりません。コミュ症なのでしょうかね。

 騒ぐ冒険者一行を横目にオーナーが指した扉を開け、中へと入っていきました。


 思ったとおり、中は厨房になっていました。

 そして予想通りというべきか寝室の惨状と同様、厨房も掃除されてなく、しかも食器や調理器具が使われたまま山積みになっています。

 また、川から引かれた水路はこの厨房、勝手口の近くに設置されていました。

 でも洗い物ならまだ良いとして、川の水をそのまま飲み水にするのは危険ですよね。なるべく上の部分だけを掬って、それから沸騰させましょう。


 それにしてもあのオーナー、宿を経営する気あるのでしょうか。セルフサービスさせすぎでしょう、これは。顧客サービスというものを全く分かっていません。


 私は、はぁ、と深いため息をついて洗い物から始めました。




 一時間半後、肉の焼ける香ばしい匂いと、カブやにんじんっぽい食材を適当に切って炊いた煮物、更に珍しく米もあったのでそれを炊きあげて、残りはトマトっぽい野菜類を切って盛り付けた夕飯が完成しました。

 かなりの量です、十人分くらいはあります。ちょっと作りすぎたかな。

 それにしても、意外と食材が揃っていたのには驚きました。特に米です。この村が米も生産しているとは思いませんでした。また肉類はさすがに少なめでしたが野菜や穀物類は豊富にあり、これだけの量をどうやって消費するのか不思議に思います。


 木のトレイがありましたのでそれに乗せて食堂に持っていくと、まだ冒険者一行は飲んでいました。私が持ってきた料理の匂いに釣られたのか、五人の顔が一斉に私のほうへ向いています。


「おおっ、可愛い子はっけーん」

「やめなさいサイズ」

「うまそうな匂いじゃな」


 思ったとおりさっそく声をかけられました。

 一番最初に声をかけたのが盗賊でしょうか。それを嗜めたのが神官ですね。またドワーフは空になったジョッキをいくばくか寂しそうに見ながら声だけ反応しています。

 この三人が男性で、残り二名の女性は静かに微笑んでいます。


「たくさん作ってしまいましたのでみなさん食べますか?」

「うわっ、ありがとうお嬢ちゃん」「おお、悪いのぉ」「神に感謝を」


 そこの神官、神様に感謝するのではなく私に感謝してください。

 作った料理を彼らの座っているテーブルに持って次々と並べていきました。



 △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



 さて、上手く冒険者たちと話すきっかけを作れました。

 今日は情報収集する予定だったのですけど寝過ごしましたからね。彼らに色々と聞いてみましょう。


「それでみなさんはサルクルの森からの帰りですか?」

「ああ、そうだぜ」


 食事をしながら私が話しかけると、一番最初に答えたのが盗賊でした。

 二十代中ごろでそれなりに整った顔立ちをしていますが、馴れ馴れしすぎてちゃらい雰囲気です。多分このパーティの折衝役も兼ねているのでしょう。

 そしてお酒を飲んでいるにも関わらず、呂律は回っていません。自分で限度が分かっているのでしょう。

 酔いすぎると折衝役としては失格ですしね。


「おっと、その前に俺の名はサイズだ。リルリで冒険者やってて今回はクエストでサルクルの森へ来たんだ。で、お嬢ちゃんの名は?」

「私もリルリから来たナミルと申します」

「あっ、どこかで見た事があると思ったら、ナミルちゃんってもしかしておにぎり売ってる子じゃない?」


 突然剣士風の女性が割って入ってきました。

 ハーフエルフ(?)の女性がいるからそこまで目立っていませんが、この人も結構綺麗ですね。それにまだ若いです。二十歳くらいでしょうか?


「シーレイがたまに買ってくるおにぎりって、ナミルちゃんが作ってたのか。あれ美味いよな」

「うんうん、ボリュームもそこそこあるし、それに何より安いのがいいわよね」

「なるほどの、あれの作り手がナミルだったか。この飯も美味いわけじゃな」

「ほんと、おいしいね」

「この出会い、神に感謝を」


 ハーフエルフ(?)の方は生野菜ばかり食べています。それって単に切っただけなんですけどね。

 そしてこの神官はさっきから神様に感謝ばかりしてます。


「あはは、ありがとうございます」

「で、ナミルちゃんは何の用事でこんな辺鄙な村にきたんだ?」

「私は薬剤師でして、薬の材料を探しにきました」

「へぇ……なるほどな。ま、確かにこの辺はリルリより温暖だからな」

「それでサルクルの森ってどんな場所なのですか? 薬草とか生えていますか?」

「んー、薬草には詳しくないから分からんが、まあリルリ近辺には無いものは生えていたな」


 リルリ近辺に無いような薬草ですか。それなら少なくとも初めて手にするものですね。これは期待してもいいでしょうか?


「それとサルクルの森は第一種危険区域に指定されているものの、森の浅いところならBランク程度しか出てこないから、比較的狩りやすい。が、奥はSランクやSSランクがうようよいるから俺らだって入れねぇ」

「Bランクですか」

「まさかナミルちゃん、サルクルの森へ入る気?」

「はい。そのためにリルリから来ましたし」

「だっ、だめよっ!!」


 突然シーレイと呼ばれた剣士の女性が立ち上がって叫びました。サイズさんは、何やら失敗した、という顔を一瞬浮かべました。

 残りの面々はそ知らぬ顔で黙々と料理をつついています。


「何故ですか?」

「危険だからに決まってるじゃない! ナミルちゃんのような可愛い子が一人でサルクルの森に入るなんて自殺行為よ! 触手に襲われたら危……でもそれは見てみ……じゃなくて絶対ダメ!」


 あの……なんで触手?

 しかも見てみたい、と言いかけましたよねこの人。


「サルクルの森って変なところで、森なのに水生の魔物が結構いるんだよ。蛸とかイカとか」


 と、サイズさんが説明してくれました。

 森、と言いつつどこか海と繋がっているのでしょうか。でも地図で見た限り、海まではまだ距離があった気がします。

 それとも例えばファーガイツ川の地下にもう一つ川があって、そちらが海水になっているとか。


 ……そんな事はありえないですね。


「はぁ……。森に蛸ですか」

「多分サルクルの森のボス、白竜の影響だと思う。あれは水や氷の力を持っているからな」


 なるほど、白竜は触手が好きと。ナミル、覚えた。


「大丈夫ですよ。私、こう見えてもそこそこ強いですから」

「だめだめ! こうなったらみんな、ナミルちゃんを護衛するわよっ!」

「なんでこうなったら、何ですか?」


 もはや論点が分からなくなっていますよ、このシーレイさん。

 でも他の面々の反応は、やはりこうなったか、と言った感じです。


「あの、私お金持っていませんけど」

「大丈夫! 今日のご飯のお礼でいいわよ!」

「そういう訳にはいきませんよ。それに他の方もいらっしゃいますよね」


 と、困ったようにサイズさん達を見ますが、彼らはもはや諦めた表情をしていました。


「私はいいよ、薬剤師がどんな風に森で薬草を集めるのか知りたいし」

「わしも構わん。今日でクエストは達成したが、ついでに他の魔物の素材も集めたいしの」

「神に感謝を」


 だからこの神官は何を神に感謝しているのですか。

 最後の頼みの綱でサイズさんを見ます。


「あー、なんだ。シーレイがああ言ったらこれはうちのパーティの決定事項なんだよ。もう手が付けられない」


 彼ら的にも護衛をするなら、それに見合った費用は貰いたいはずなのですけどね。

 正直邪魔なんですけど、こうなったら仕方ありません。私も冒険者がどのように戦うのか興味ありますし。


「わかりました。それでは明日宜しくお願いします」

「大船に乗った気で触手に襲われてもいいわよ!」

「……それ大船から引きずり出されますよね」


何とか更新できました。

でも急いだので少し話しの構成が甘い感じですので、また後日改稿します。。。ごめんなさい


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ”お酒を飲んでいるにも関わらず、呂律は回っていません”という記載がありますが 呂律が回らないというのはちゃんと喋れていないという意味で文章に合っていないと思いました。
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