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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第一章 白竜さんとカレー
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 村の中央通りらしき道をまっすぐ案内されました。中央通りと言っても区画整理は一切されていませんので、少しうねうねっとしていますけど。

 まあ人口なんて百人も居れば良いほうでしょうし、建物の数も二十棟あるかどうかですね。

 点在する木造の家、作りもそれなりに年数が経過していて古い建物が多いです。どこからか鉄を打つ音が聞こえてきますが、鍛冶屋があるのでしょうか。


 そして各建物にはファーガイツ川から引かれた水路が繋がっています。これは素晴らしいですね。

 リルリは共用の井戸があるだけですから水汲みは大変なのです。建物の数が少ないから出来ることなのでしょう。


 ただし道は当然整備されてなく、あちこちに家畜のものと思われる糞尿が散らばっていて正直臭いです。

 せっかく水路が各家庭に引かれているのですから、それを利用すればいいのに。

 もし転んで怪我でもしたら傷口からその手の菌が入ってしまうかも知れませんし、最悪感染するような病気が発生する可能性もあります。

 ぱっと見た感じ病院はなさそうなので、どうやって病気や怪我を治療しているのでしょうかね。

 もしかすると知恵袋的なおばあさんがどこかの家にいて、彼女が治しているのかも知れませんね。


 多分このような村はこの世界にはあちこちあるのでしょう。

 十五年前に帝国と王国の戦争が終るきっかけとなった感染病も、もしかするとこのような村から発生したかも知れないですね。



 さて、村の中でまず一番目に付くのが中央通りの一番奥の建物、一際大きな家です。

 あれは村長の家でしょうね。

 おそらく国の税務官や他の町村からきたお偉いさんたちを泊める為に大きめに建てられているのでしょうけど、それでも他の家の倍くらいですからそこまでの大きさという訳ではありません。



 次に店舗です。ぱっと見て二軒しかありません。

 と言うのも村長っぽい家を除くと、他の家に比べて大きな建物がこの二軒だけなのです。


 手前にあるのが雑貨屋のようです。店の前に農耕で使うような鍬や鋤、あるいは鎌が並べられています。

 また通りすがりに店の中を見た感じ、鍋などの調理器具、また衣類や日用品もありました。

 ここなら水符術も売ってそうですね。先ほどから鉄を打つ音が聞こえていますが、あれは鍬や鋤を作っているのでしょう。

 また、剣や盾といったものも少数ですが見えました。

 でも見る限り時代を感じる雰囲気で、もう何年、下手をすると何十年も昔から飾られているのではないでしょうか。万が一冒険者の剣や盾が破損した場合の緊急用、といったところですね。


 そしてその雑貨屋の奥にあるのが宿屋でしょう。実際、先導する母親の足はそちらへ向かっています。

 そしてファーガイツ川の側にあった宿とは比べものにならないほど小さな建物ですね。一応二階建てですけど、部屋数もせいぜい四~五部屋といったところです。

 あと玄関の雰囲気から宿を経営している、というより夜だけ開く酒場といった雰囲気です。そして宿の裏手には厩があるのか、馬の鳴き声がたまに聞こえてきます。

 休み前の夜に世のお父さんが愚痴をこぼしながら酒を飲んでいる姿が浮かんできます。



「こちらです」

「ありがとうございました」

「では私はこの辺で」


 そして宿の玄関前まで案内されたと同時に母親はさっさと戻っていきました。

 あっさりしてますね。彼女の仕事は終わったという事でしょう。

 となると、多分宿のオーナーがこの村の監視役を一手に担っている感じですね。外部の人ならほぼ必ず宿に泊まるでしょうし。

 ま、こんなところでうだうだしていても仕方ありませんし、中に入りましょう。



「…………」


 扉を開けると、カラン、と鈴の鳴る音がしました。そして受付の奥に座っていた人が、私の方へと顔を向け、目を細めて睨んできました。

 雰囲気は村人、ではなく冒険者といった感じです。四十代中頃くらいの厳ついいかつい顔をした、座っていても分かるほど巨体の男性でした。

 髭は生やし放題で髪もぼさぼさ、でもかなりがっしりした体格で今でも鍛えている感じです。

 引退した冒険者でしょうか?

 おそらくこの村の護衛も兼ねている気がします。確かにこの人なら監視役にもぴったりですね。彼のすぐ側には綺麗に磨かれた大きな両手剣が立てかけられていて、いつでもそれを手にとって行動できるのでしょう。


 というか、顔が超怖いです。私が普通の子供だったら泣いて逃げちゃいますよ。


「あの……一週間ほど泊まりたいのですが、部屋は開いていますか?」

「……一泊銀貨二枚だ」

「たかっ?! 食事はついていますか?」

「材料ならある、酒も一本までなら無料だ」

「それはつまり自分で勝手に作れと言う事ですか?」

「………………」


 無言は肯定ということでしょう。

 しかしこの人、寡黙すぎます。

 しかも宿泊費がめちゃくちゃ高いです。ファーガイツ川の側にあった宿が食事付きで銀貨一枚だったのに、その倍です。

 それに私、自分で勝手に食事を作れという宿、初めてみました。

 この世界では常識? そんな事はないと思いたい。


 まあこの人が料理するなんてイメージは持ちにくいし、自分で作ったほうが却って良いかも知れませんけどね。

 それに食材はこの村の人たちから買った物でしょうし、つまり新鮮な野菜類が豊富にある、と言う事です。


 逆に考えて見れば、スパイスを集めればここでカレーも作れることになります。しかもオーナーに許可を貰っているのですから大手を振って作れます。


「わかりました。六泊ですから銀貨十二枚ですね」

「………………」


 大きな手を出してきました。お金を渡せという事でしょう。

 はぁ、予想外の出費です。これで薬草が何も生えていなかったら大損ですね。

 懐からお金の入ったポーチを取り出し、きっちり払いました。するとオーナーが反対の手に持った鍵を渡してきて、通路奥にある階段を指差しました。

 付いている札を見ると、『二』と書かれています。二号室と言う事でしょう。


 奥の階段を登ると二階には四部屋ありました。そのうち二部屋は埋まっている模様です。

 厩から馬の鳴き声も聞こえましたし、誰か泊まっているのでしょう。

 そういえばギルドマスターが、Aランク冒険者がサルクルの森に行っている、と言っていましたね。

 おそらくその一団でしょう。


 二号室、と書かれたプレートの扉を開けると、そこは八畳くらいの広さでベッドが二つ並んでいました。二人部屋なんですね。

 というか、この部屋数だと一人部屋なんてないですよねー。

 一泊銀貨二枚、というのは二人部屋だから、と言う事ですか。まあ、それなら納得できなくもないです。


 ベッドは木で組み立てられ、布団は何ヶ月も干されていないようなかび臭い匂いがします。

 予想はしてましたけど、これは酷い。

 幸い窓はありますし、片方の布団をそこに干しておきましょう。

 今回はかび臭い布団で我慢して、明日からローテーションで布団を干していきましょう。


 さて、一晩走ってきましたし、とりあえず今日は夕方くらいまで寝ていましょう。それから起きて雑貨屋を覗いて売っているものの確認です。



 それではおやすみなさいませ。


明日は更新できない可能性が高いです。

すみません。


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