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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第一章 白竜さんとカレー
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 日も暮れ夕飯を宿で食べたあと、私は一路ヘンリメルト村目指して歩き始めました。さすがに宿の近くは人も多いのでダッシュすると目立ちそうですしね。

 川に沿って西へ歩いていきます。

 一人を除いて誰もこの方向へ行かないですね、と思ってましたが良く考えるとすでに夜ですし、こんな時間から出発する人なんてそうそう居ないでしょう。


 また、それなりに南へ下ってきましたが、さすがにこの時間はそこそこ冷えます。

 走っている時は自分の周りに魔力障壁を張り巡らしているのであまり寒さは感じません。逆に障壁を張らないと寒くて死にます。だって時速六十キロくらいは楽に出ますからね。

 今は歩いているので障壁なんていらないでしょっ、と思っていましたが甘かったですね。すぐ側に川があるのも気温の低い原因の一つでしょう。


 障壁を張りますか。


 軽く目を細め《魔力制御》と《魔力収束》の《魔眼》を使い、周囲に漂う魔力を圧縮しながら肌の上に貼り付ける、いえクリームを塗る感覚で張り巡らせます。

 実家近くの山に住むボス、カンガルー魔物のカンさんにこの技は一瞬で使えるように訓練しろ、と言われましたっけ。

 そのおかげか、昔はかなり時間がかかっていましたが、今ではもう慣れた作業で一秒程度で貼る事ができます。

 更に身体の中、特にあまりない筋肉と骨にも魔力を浸透させていきます。身体能力の向上です。でもやりすぎると明日筋肉痛になるので控えめに。


 やはり筋肉痛をどうにかするには素の身体能力を鍛える必要がありますが、私はあまりマッスルにはなりたくないですしね。

 かといって魔法を覚えるのは何となく大変そうです。勉強なんて前世で大学受験の時に嫌と言うほどやりましたし、ここに転生した後も貴族の作法などで頭使いましたし、これ以上勉強する気はさらさらないです。

 それに別に覚えなくても攻撃するだけなら《魔力制御》で魔力の塊をぶつければ良いだけですしね。


 さて、あとは宿を出たときからずっと私のあとをついて来ている人をどうしましょうか?


 あの人、私が夕飯を食べていたとき、じっとこちらを見てきていたのですよね。

 最初は、ふふん私の美貌に見蕩れているな、なーんて思ったりもしていたのですけど、風体は冒険者崩れっぽい感じでしたし、もしかして人攫いか何かかな、と思い直しました。

 私のような子供が一人で夕飯を食べているのですから、相手ひとさらいにとってみればカモがネギ背負ってやってきたように見えますよね。

 しかも夜に一人で宿を出ていくのですから、おいしい獲物なのでしょう。


 でも……逆にいえば、こんな時間に一人で出かけられるほど余裕がある、と思わないのでしょうか?

 正直、倒すのは簡単でしょう。どう考えてもアーヴェン様より遥かに弱そうですし。


 問題はただ一つ。

 私が人相手に殺し合いをした事が無い、と言う事です。

 別に殺める必要はないのですけど、うまく手加減ができるかどうか自信がありません。普段は魔物相手ですから手加減なんて必要ありませんでしたしね。


 と言う事で、逃げちゃいましょう。


 相手は一人ですし馬に乗っているわけでもありませんから、私がダッシュすれば楽勝で逃げ切れます。


 では、サイナラー!



 △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



 宿を出てから半日程度、つまり朝です。少し時間はかかってしまいましたが、やっとヘンリメリト村に到着しました。リルリを出発してから十一日、いえ十二日目です。この村に一週間滞在するとして、帰りもこのペースで行けば概ね一ヶ月で帰れますね。


 ふー、何とか予定通りのペースですね。


 ヘンリメルトは本当に農村、という感じで門も無ければ見張りが立っている訳でもありません。既にお日様は昇りきっていて、村の人々は汗水垂らして仕事していました。

 村のあちこちにある畑に、小さな子供たちが頑張って種を植えている姿が見えます。この季節は種まきのシーズンなのでしょうかね。大人たちが畑を耕し、その後に子供が種を植えていく、と仕事の分担が決まっているのでしょう。


 村の中に入っていくと、奇妙な目で見られました。

 ここはサルクルという高ランクの魔物が犇く森から一番近くにある村です。つまり外から来る人はそれ目当ての冒険者、あるいは軍などの討伐隊、もしくは何らかの調査隊くらいしか訪れないのでしょう。

 私の格好は旅人で、しかも見た目は普通の十二歳の女の子。どう見ても冒険者や軍関係者には見えません。

 それは奇妙に見られますよね。


 うーん、あまり目立ちたくないのですけどね。


 やはり私くらいの年代の子供が一人で居ること自体が不自然ですよね。

 ダミーで誰か雇えば良かったのでしょうけどそんなお金の余裕もありませんし、そもそも私の速度についてくるなら身体能力を夜通し使えるほど魔力の充実した人か、もしくは馬が必要です。

 そんなレベルの人を雇うなんて、それこそお金がいくらあっても足りないでしょう。


 サルクルの森に珍しい薬草が生えていれば今後ここに何度も訪れるでしょうし、ある程度は名前を売っておいたほうがいいかな?

 となると、ここはやはり薬剤師として回復軟膏の宣伝をしましょう。これをダシにして村人たちと交流を図る計画です。

 自分で使うために三個持って来ておいてよかった。


 でもどこで回復軟膏の宣伝をすればいいのかな?


 そんな事を考えていると、私の目の前に小さな子供が二人寄ってきました。まだ五歳~六歳くらいの女の子ですね。後ろに同じくらいの男の子もいます。

 兄妹でしょうか。でもこの小さな村なら同じ年代なら家族同然なのかも。

 着ている服は汚れているものの、そこそこなレベルのものです。やはり外部から人が来るので、外貨が村に落ちている証拠でしょう。

 つまり冒険者用の雑貨類や必需品が売っている、と言う事になります。


「おねーしゃん、だれ?」


 舌足らずな声で女の子が話しかけてきました。男の子のほうは女の子の後ろに隠れながら私をちらちらと見ています。


 ……男なんだから女の子の背中に隠れてないで前に出ようよ。


「私は、お薬を売っている人なんだよ」


 うーん、と少し考えて、首を傾げながら「……おいしゃさん?」と女の子。

 あー、可愛いですねっ。


「ちょっと違うかなー」

「むつかしー」

「すみません、この子たちがお邪魔して」


 とそこへ、この子たちの母親と思われる人がやってきました。でも顔には警戒までは行かないものの、僅かですが不信感がにじみ出ています。

 まだ私も十二歳の子供ですから警戒される対象に含まれないのかな?

 これが大人の男性だったらものすごく警戒されるでしょうね。


「いえ、私はリルリから来た薬剤師のナミルと申します。すみませんが、宿はどちらにありますか?」

「リルリからきた薬剤師ですか、それはまた遠いところから。それにあなた一人で?」

「はい、一人です。今日は薬を売りに、ではなくどのような村なのか確認しにきました。またついでに、この周辺に薬の材料となるような薬草が生えているかも見に来ました」

「……なるほど」


 納得していただけた様子です。

 「ほら、あんたたちは種まき手伝ってきな」と母親が子供たちを行かせようとします。子供たちは「えー、もっとおはなししたい」と異議申し立てするも、却下されました。

 ふふっ、なんだか微笑ましいですね。


「では宿まで案内しますね」

「ありがとうございます」


 私は母親のあとをついて、村の中心部へと歩いていきました。

 でもわざわざ案内してくれるのは、変なところへ行かないように見張りも兼ねているのでしょうか。

 人の裏側をつい考えてしまう自分が少し嫌になってしまいます。


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