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ある魔眼持ち薬剤師の日常 ~連載版~  作者: カスミ楓
第一章 白竜さんとカレー
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「あの、すみません」

「はいよ、どうしたのかいお嬢ちゃん」


 私は水を汲んでいた恰幅の良いおば……もといおねーさまに声をかけました。

 割烹着のような格好をしていますが、ファンタジー(?)な世界らしくちゃんと魔力の篭った指輪をしています。魔力の流れを見る限り、多分あれは火の攻撃魔法が籠められている魔法のアイテムですね。色が赤色ですし。

 ちなみに、橋げたのところにかかっていた魔法は、黄色と水色ですので土と水の混合でしょう。


「宿を探しているのですけど、空き室はありますか?」

「おや、一人旅かい? それとも連れか親御さんはいるかい?」

「えっと、一人旅です」

「へぇ。その格好だと冒険者じゃないだろうし、よくここまで一人で来たねぇ」

「リルリから大街道沿いに来ましたので、魔物と遭遇はしませんでしたよ」


 大街道はこの帝国の重要な物流基盤ですし、意外と治安は良いのです。大街道沿いの町や村にある冒険者ギルド、或いは軍や警備隊に属する人たちが、巡回を行っているらしいです。

 ……と、雑貨屋の方に教えて貰いました。

 でもたまに魔物の被害はあるから、油断はしないように、と忠告されましたけど。


「リルリ? そりゃまた遠いところから」


 驚いた様子のおねーさんです。

 でもリルリから普通に歩いてくればここまで三週間、私のように子供と変わらない体格ですと一ヶ月はかかるでしょうし、仕方ありませんね。


「そ、それで空き室はありますか?」

「おっと、今は満室だけど朝食が終わればみんな出て行くからその後なら開くよ」

「一泊おいくらですか?」

「素泊まりで鉄貨八十枚、夜と朝の食事つきで銀貨一枚だよ」

「朝って明日の朝ですよね? それを今日の朝に変えたらお値段は変わりませんか?」

「変わらないが、どういうことだい?」

「今から夜まで寝て、夕食を頂いたあと出発という形です」

「夜に? 真っ暗で見えないのに?」


 ああっ!

 普通は朝に出発ですよねー。しまったなぁ。

 あまり疑われて印象に残させるのも良くない……ですよね。


「じ、実は私、獣人の血が少し混じってまして、夜でも見えるのです!」


 獣人。

 亜人とも呼ばれる種族で、様々な動物と人の血が混じった種族です。

 人族を遥かに越える身体能力を持っていて、更に混じった動物によって様々な特殊能力を持っています。

 それだけ聞くと人族ではなく獣人族がこの大陸を支配していても不思議ではありませんが、やはり強い種族というものは数が少なく、人族の圧倒的な数に押されて今はベッチリート共和国という獣人の国で暮らしているものが殆どです。

 ちなみに代表的なのは、犬、猫、狼、猪、熊と言った所で、人族が治める国には冒険者となった者以外滅多におりません。


「あら、獣人の? でもわざわざ夜に移動なんて危険だよ?」

「私は昼より夜のほうが動きやすいのです」


 夜型の獣人族もいるので、嘘ではありません。私に獣人の血が混じっているのは嘘ですけどね。


「うら若い女の子が一人で夜に出るのは危険だわ」

「と、とにかくっ。あの泊まりたいのですけどっ!」

「あとで冒険者でも紹介しようかしら?」

「い、いえいえ。川を見て帰る予定ですから」

「そういえば、さっきそこで見てたわね。あたしらにとって見れば毎日見てるからなんとも思わないけど、そんなに良いものかしら? まあこれから朝食作るから食堂で待ってなさい」

「はい、お願いします」


 や、やっと宿に案内してくれました。

 親切なのか不親切なのか分かりません。



 △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



 案内された宿は一階が食堂兼酒場兼従業員用の部屋、二階と三階が部屋と典型的な作りになっていました。

 意外と敷地面積は広く宿のそばにはちゃんと厩もあり馬車が何台も止まっていて、それ以外にも珍しい騎乗動物が何匹もいます。


「こっちから入ると食堂だから、適当に座って待ってな。あとでオーナーに言っておくから」

「はい、ありがとうございます」


 おねーさんは宿の入り口を指差したあと、裏手に回っていきました。

 中へ入ると、既に食堂は二十人以上の人で溢れかえっていました。殆どが商人、或いは冒険者ですが、まだ若い男女二人の旅人もいました。

 あれってたぶん夫婦か恋人同士でしょう。


 ちっ、リア充爆(略。


 背中のリュックを下ろし、開いている席に座ります。でも誰も私には目もくれません。借りてきた猫のように大人しくしていましょう。


 ふと気がつくと先ほど案内してくれたおねーさんが手際よく料理を運んでいました。

 うわ、行動早いっ! さっき裏から入ったばかりですよね? プロです。

 厨房からは『あと五食! 急げっ!』『そっち早く運んで!』『並べて並べて、スープが一つ足りないよ!』と声が聞こえてきます。賑やかで忙しそうですね。

 夜もこんな調子なのでしょうか。


 宿泊客も出された朝食を食べつつ『ガイゼンまでは何も無かったってさ』『帝都は鉄不足で武具の値段が上がってるらしい』『とうとうリネット皇女が王位継承権二位になったらしいぞ』『レイジッドで小麦の値段が下がってる』『リクームの途中にゴブリンリーダーがいたそうだ』などなど情報交換をしています。


 商人や冒険者はこうやって互いに情報交換しあっているんですね。勉強になります。



 一時間くらい待っているうちに、周りにいた宿泊客がどんどんチェックアウトしていき、そして誰もいなくなりました。

 従業員の人もひと段落したのか、厨房から何か笑い声が聞こえてきます。



 あのー、私、忘れられた?

 あのおばさんつかえませんっ! おねーさん呼び辞めます!





「久々にベッドの上で寝られますね。堅いけど地面よりはマシです」


 宿のオーナーにおばさんが叱られた後、私は開いた部屋へ案内されました。

 ちなみに朝食代をタダにしてもらいました、賄いですけど。


 私は変なところで凝り性なのか、自宅のベッドはかなりふかふかに仕上げています。

 布を大量に買って糸と針で縫い合わせて、中に自分で狩って来たウーリー(羊っぽい魔物です)の毛を詰め込んだものを使っているのです。

 百パーセントウールなのですよ。

 マットレスは腐葉土とウーリーの毛で作っています。それなりの出来ですが、そのうち職人さんを探してバネを作って欲しいですね。


 このまま夜まで寝て、夕飯を頂いたあとに出発です。ここからヘンリメルト村まで西へ徒歩二日程度の距離ですから、ダッシュすれば夜明けには到着するでしょう。


 予定として、まずヘンリメルト村には一週間ほど滞在予定です。

 村からサルクルの森までダッシュで行けば数時間なので、日帰りできそうです。ただ森の奥まで足を伸ばす場合は厳しいかも知れません。


 初日は村でサルクルの森の情報収集と、あと売っているものの確認です。特に水符術は残り一枚ですから、帰りの分も含めて補充しないといけないですしね。

 食料は半分くらい残っていますので、何とか持つでしょう。


 次の日は森の周辺で実際に現地確認です。情報収集も大切ですけど、やはり最後は自分の目で確認する必要があるでしょう。

 薬草のチェック、魔物の強さ、の二点を重視しましょう。

 もし薬草が大量に採れそうなら、ウェストポーチを追加で買わなきゃいけないですしね。


 三日目から最終日までは収穫祭!

 上手くカレーのスパイスが採れたら、村で作ってみるのも良いですね。でも米はさすがに無いと思いますから、スープカレーかな?


 ううっ、今から妄想でよだれがでそうです。


 今夜、もとい今昼(?)はスープカレーを食べる夢が見られそうです。

 それではおやすみなさい。


旅から戻ってきたら、やけにポイントが増えていてびっくりしました。

連休効果でしょうか?


みなさま、ブックマークありがとうございます!



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