第7話 本音
全ての始まりは中学2年の1学期だった。
部屋で本を読んでいたら、突然下着が濡れた感覚が伝わった。
慌てて下着を脱いだら、下着には変な臭いのする
白い粘液が付いていたのだ。
怖さと恥ずかしさから下着は洗濯物の中に隠したが
母親に見つかり病院へ連れていかれた。
しかし、原因が解らず大きな病院へ行くようにと言われた。
その病院で真は精密検査を受けた。
そこで告げられた事実。
自分が男性だということ。
女性としての機能が1つもない事。
真はショックのあまり気を失った。
どちらの性を選ぶかを聞かれた時、真は迷わず女性を選んだ。
しかし、これが真を苦しめる日々の始まりだった。
原因は薬の副作用。
真が女性で居続けるには一生薬を飲み続ける必要があった。
その薬が真には合わなかったのだ。
飲むとだるくなり何もする気が起きなくなっていた。
さらに吐き気も伴った。
食べたものを吐いてしまうことは頻繁にあったという。
副作用が出ないよう薬の種類や量を変えたものの
それでは効果が低く男性化を完全に止めることは
出来なかった。
真を苦しめたものがもう1つあった。
それは検査だった。
薬の効果を見る為、真は病院で何度も胸を触られていた。
それも男性の医者に。
血液も何度も採られた。
真はその度に注射の痛みに耐えていた。
夏休みを迎えた頃、体に大きな変化が起きていることに気が付いた。
股間から棒状の物体がぶら下がっていたのだ。
それは男性器と呼べるものだった。
真は自分が男性なのか女性なのか解らなくなってしまった。
ある時、真は医者に禁断の質問をした。
「男性を選ぶとどうなるのか?」と。
その答えは真にとって極楽が待っているかのようなものだった。
病院に通う必要もない。薬も要らない。
普通の男性として不自由なく暮らせる。
真の気持ちは揺らぎ始めた。
最後に頼ったのが僕だった。
こんな姿になっても女子として受け入れてくれるなら
頑張ってみよう。そう思っていた。
しかし、返ってきた返事は男。
この瞬間、女の子の藍原真は死んだ。
そして真は、男になる決断をした。
僕は言葉を失った。
こんな大変な事になっていたなんて知らなかった。
「どう?これでもまだ私に女の子になれっていうの?」
何も言えなかった。
「それに、私が女の子のままでいると
恭介君も不幸になっちゃうのよ」
「どういう事?」
「恭介君は、女の子のおっぱいを触ってみたり
エッチな事してみたいって思ったことある?」
「な!?何を言い出すんだよ急に!?」
「男の子なんだからあるよね。でも、
私はその願いをかなえてあげることが出来ないの。
おっぱいはこれ以上大きくならないしエッチが出来る
体じゃない。そんなの我慢できる?」
「それは・・・」
「それにこの先、恭介君が他の女の子を好きになる事が
あるかもしれない。その子と私のどちらかを選ばないといけなくなった時
恭介君が私を選んでくれるっていう自信がないの」
正直に言うと、僕も男だからそういう事を考えたことはある。
もちろん、嫌われると思って言うことは出来なかった。
他の女の子を好きになる可能性・・・ゼロではないのかもしれない。
もしそうなった時、僕はどうするのだろうか?
真を選ぶことが出来るのだろうか?
「私ね、心も男の子になり始めてるみたいなの」
「えっ?」
「信じられないかもしれないけど、私・・・あれを自分でしちゃったの」
「あれ?」
「・・・射精」
「ええーっ!?」
「最初は下着を汚したくないから嫌々だったんだけど
だんだんする事に抵抗を感じなくなってるの」
「そんな・・・」
僕は認めるしかなかった。
体だけでなく心まで男性化している真が
女の子でいるのは不可能だという事を。