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幼馴染は半陰陽  作者: 海老野素揚
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最終話 藍原真(女子)

部屋にはファンの音が響いていた。

テーブルの上にはカッターとヘラ。

そして紙やすり。

紙やすりでこすっては形を見てまた紙やすりでこする。

これを何度も繰り返した。

「こんなものかな」

僕は出来上がったものをテーブルの端に置いた。

僕が作っていたもの。それはフィギュアだった。




僕は真の事を忘れようとした。

でも、忘れられなかった。

忘れるどころか、真への思いは強くなっていった。

ただ、それは男の真に対してではなく女の子の真に対してだった。


真は以前、僕が他の女の子を好きになるかもしれない

と言っていたけど、そんな事にはならなかった。

真への思いが強すぎて他の女子を好きになる事が出来なくなっていた。

真に似ている人がいれば違ったかもしれないけれどそんな人はいなかった。

結局、高校3年間で僕に彼女が出来ることはなかった。


女の子の真がこの世から消えてしまったことは理解している。

でも、会いたい。諦められない。

でも、どうしたらいいのか解らない。

そんな事で悩んでいた頃、テレビで

フィギュア展示会の様子を伝えるニュースを見た。

そのニュースの中で紹介されたのはお店では売っていない

全て自分で作ったフィギュアばかりだった。

僕はその中の1つに釘付けになった。

それは、ゲームに出てきそうな剣と盾、鎧を装備した女戦士だった。

僕は思った。

これで女の子の真を作る事が出来ないか?と。


僕は早速行動に移した。

図書館に通い、フィギュア制作に関係する本を読み漁った。

おおよその作り方を覚えると、必要な材料や工具を買って作り始めた。

制作は難航を極めた。

形がいびつになったり、途中で壊れたりもした。

でも、諦めなかった。

これ以上真の事で失敗する訳にはいかなかった。




「出来た!」

僕は完成したフィギュアを眺めた。

全長30センチ、綺麗に色が塗られた女の子のフィギュア。

もし、真が普通の女の子として生まれていたら。

そんなイメージで作り上げたものだった。

肩まで伸ばした黒髪のロングヘアー。

顔はアニメっぽくデフォルメした出来となった。

胸はやや大きめにした。真は胸が小さい事を気にしていたので

それを考えての事だった。

服は僕が通っていた高校の女子制服を着せた。

制服を正確に再現するために女子に頼んで実物を見せてもらおうとした時は

いろいろあったけど、今となってはいい思い出だ。

肩に学校のバッグを持ち、足を少し開いた立ち方で

腰に手を当ててほほ笑む姿は、明るく元気で

ちょっぴりおてんばな真の姿そのものだった。

「思っていたよりも時間が掛かってしまったなぁ」

気が付けば僕は20歳になっていた。

出来た真のフィギュアをケースに入れて机の上に飾った。




「真、行ってくるね」

僕は真のフィギュアに話しかけると部屋を出た。

部屋から出る僕の後姿を

ケースの中の真は満面の笑みで見つめていた。

幼馴染は半陰陽


~完~

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